化粧品は顧客のニーズが多様であるため、マーケティング施策もニーズに合わせて多岐にわたり、複雑化しやすい特徴があります。そのような状況で戦略的に各施策を実施するためには、CRMに基づいた戦略設計が欠かせません。
本記事では、化粧品業界におけるCRMの重要性とDMの役割を整理したうえで、成功事例をもとに効果的なDMのポイントについて詳しく解説します。
化粧品業界におけるCRMとDMの役割
化粧品は他の商材に比べて年齢や性別、肌質などざまざまな要素によってニーズが大きく異なるため、マーケティングにおけるCRM戦略が重要視されやすい商材です。セグメントの切り口にバリエーションがある分、マッチすれば自分ゴト化しやすく、ベースメークやポイントメークのように商品ごとのクロスセルやアップセル設計が可能です。
実店舗とECの両方を運営する化粧品メーカーでは、顧客との接触ポイント(チャネル)が、実店舗での接客やECでの商品閲覧をはじめとして、店舗で配る試供品・カタログ・メールマガジン・アプリでのプッシュ通知など多岐にわたります。これらのチャネルを通して顧客と親密な関係を築き、顧客ロイヤルティを高めるには、それぞれの施策での役割とCRM戦略に則ったコミュニケーション設計が求められます。
化粧品業界におけるDMの役割は、新規購入顧客へのお礼や購入サイクルに応じたリマインド(リピート促進)など、主に顧客との関係を継続する目的で活用できます。DMを活用する利点は、実店舗への来店やECサイトへの訪問など、能動的な行動を取っていない顧客の手元に情報を届け、コミュニケーションが取れる点です。
DMで期待できる効果
先述した通り、化粧品業界におけるDMは顧客との関係性構築・継続を目的として利用されることが多いです。ここでは、DMを活用することで得られる効果を見ていきましょう。
F2・F3引き上げ
新規購入者を対象としたDMの場合、再購入・継続購入(F2・F3)への引き上げ効果が期待されます。
化粧品は消耗品のため、一定期間で新しい商品を購入する特性がありますが、この際に自社商品をリピートしてもらうためにDM施策は効果的です。
実店舗・EC問わず、顧客が商品を購入した時期から該当商品を使い切るタイミングを逆算し、再購入を促すDMを送付することで他社商品に乗り換えるリスクを軽減できます。ポイント施策を実施しているならば、再購入で利用できるポイント残高をお知らせするなどの工夫を行うとより効果は高まるでしょう。
なお化粧品業界に関わらず、新規顧客の獲得コストは既存顧客の維持・育成コストに比べ5倍とも言われており、費用対効果を高める目的でもF2・F3引き上げは重要です。
顧客単価向上
DMはクリエイティブの自由度が高いため、商品の特徴や強みをしっかりと伝えられる点も特徴です。これにより、同ブランドのクロスセルや、高単価商品へのアップセルを狙える効果が見込めます。
わかりやすい例としては、基礎化粧品のうち初回に購入されやすい化粧水を利用している顧客に対して、ライン使いによるスキンケア効果を丁寧にDMで伝えるといった手法が挙げられます。接客では1人の顧客に多くの時間を割けなかったり、ECでは顧客主導でコンテンツを選べるためクロスセルを訴求しにくかったりという課題が発生しがちです。
その点DMは顧客の手元に紙面として届くため、伝えたい情報を漏れなく掲載でき、顧客が閲覧できるタイミングまで保管してもらえる可能性も高まります。
顧客ロイヤルティ向上
DMの活用方法によっては、顧客ロイヤルティの向上にも効果を期待できます。
特にECでは実店舗のような接客がなく、ロイヤルティを向上させるきっかけが作りづらいという課題があります。DMは、ECでの購入顧客に対して接客を補完し顧客満足度を高めるためにも活用できます。
具体的には購入した商品の正しい使い方や、よくあるお悩み・疑問を解消するコンテンツをDMに掲載することです。EC購入者が詳しい利用方法を知るためには、購入者自身が検索をしたり、再度ECサイトへ訪問してコンテンツを探す必要があります。一方でDMはこれらの手間をかけず情報を届けられることで、顧客が抱える小さな不満を解消でき、ロイヤルティの向上につながります。
成功事例の成果とともに解説!化粧品DMのポイント
ここからは、フュージョン株式会社が手がけた実際の事例をもとに、化粧品の場合のDM施策成功ポイントについて解説します。
直感刺激DMでF2転換率200%伸長・クロスセル併売率300%を達成した事例
株式会社ポーラ様が販売しているシワ改善薬用化粧品「リンクルショット」は、初回購入後、一定期間を過ぎるとリピート購入が伸び悩む課題がありました。
本施策はこれらの課題を踏まえ、従来の圧着DMを見直すことでF2転換率を向上させるとともに、「リンクルショット」の正しい使い方の理解と、クロスセルの改善を目標として実施しました。
(DMに同封した商品紹介リーフレット)
DMでは、リピート購入を訴求する「リンクルショット」とクロスセル訴求商品である「ホワイトショット」を並べて紹介するリーフレットを同封しました。
また、DMとデジタルの役割を整理し、それぞれの使用方法はWeb上の動画へQRコード経由で誘導しています。QRコードからアクセスできるWebページでは長時間使用し続ける大切さや日々のコツの紹介、研究員のコメントなどを記載し、内容を充実させることで顧客ロイヤルティの向上を狙いました。
DMを改善した前後を比較したところ、F2転換率が約2倍に増加する結果となりました。また併売率も約3倍に伸長し、クロスセルの改善についても良い結果が得られた事例です。
F2転換率の改善に成功!直感刺激DM
ブランド横断のクロスセルとF3転換率187%を実現したDM事例
こちらも同じく株式会社ポーラ様の事例です。上記「リンクルショット」でのF2転換率が改善したことで、F3ターゲットへの引き上げ施策に目を向けました。
F3引き上げ施策での課題は、最高峰ブランドとなるB.Aブランドへのクロスセル率の向上です。本DMでは、F2顧客のロイヤルティを向上させるDMを送付し、F3への転換およびB.Aブランドへのクロスセルを目的に実施しました。
発送タイミングは商品を使い切る3ヶ月後のタイミングではなく、購入後1ヶ月に設定しました。これは、現在使用しているリンクルショットの効果を実感し始めたタイミングに送ることで、「併用することでより良いスキンケアを追求できる」ことを印象付ける狙いがあります。
DMでは、着荷時のインパクトを重視し漆黒の封筒と「美しさの98%は眠っている。」というコピーで開封意欲を促進しました。また、開封後に目に入る封筒内側には、B.Aブランドの世界観を存分に活かしたアートワークを施し、リッチな顧客体験を得られるよう工夫しています。
また、F2転換施策で得られたノウハウを活かし、顧客のレビューや使用方法の情報もDMに掲載することで、利用イメージを醸成し購入を促しました。
結果として施策を行っていなかった前年同月と比べ、F3転換率は187%と大きく伸長した結果となり、狙いであるB.Aブランドへのクロスセル率も2.5倍の成功を収めています。
成功施策のノウハウを生かしブランド横断のクロスセルを実現
「心に残る体験」でロイヤルティとF2購入率を向上させたDM事例
花王株式会社様が手がけるコスメブランド「SENSAI」では、顧客ロイヤルティ向上を目的として、一定金額以上の初回購入者にDM施策を実施しました。
本施策の目的は顧客とブランドの関係性を構築していくことに重点を置き、長期的なLTV向上につながるようコミュニケーションを図ることです。
このDMは初回購入商品が到着した後に届くようタイミングを調整し、ブランドの最高峰アイテムの商品サンプルを送付しました。
購入した商品のお届け時にサンプルを同梱するのではなく、あえてタイミングをずらして届けることで、予期せぬ嬉しいサプライズを演出しました。また、より「心に残る体験」として印象付けるために、パーソナライズされた手紙も同封しています。
商品情報はQRコードからWebサイトへ誘導するようにデジタルとアナログでの役割を整理し、DMではあくまでも顧客ロイヤルティを向上させるための「贈り物」という立ち位置を崩さないよう全体のクリエイティブを工夫しています。
DMを受け取った顧客の中にはSNSで喜びの声を投稿いただくなど、エンゲージメントを高められた結果となりました。さらに、F2転換率もDMの実施前に比べて4.6%向上し、DMオファーとして案内していたワンランク上となる商品アイテムのアップセルにも成功しています。
「心に残る体験」DMでロイヤルティ・F2購入率UP
ロイヤル顧客を定義してロイヤルティ向上と来店意欲喚起を実現したDM事例
オルヴェオン グローバル ジャパン株式会社様(旧:ベアエッセンシャル株式会社様)では、ブランドリニューアルを機に顧客定義を明確化し、初めてとなるロイヤル顧客DM施策を実施しました。主な目的はブランドコンセプトの周知と、顧客ロイヤルティの向上です。
DMのクリエイティブには普段利用しない封書型を採用し、挨拶状で日頃の感謝を伝える文面を記載しました。また、ブランドリニューアル後のコンセプトである 「THE POWER OF GOOD」をいち早くロイヤル顧客にお知らせするとともに、来店を促進するプレミアム会員カードを同封しました。
プレミアム会員カードには、年間を通して利用できる特典と期間限定特典の2種類を用意し、顧客の来店意欲を向上させました。また来店頻度が上がることは、該当顧客を担当する店舗スタッフのモチベーション向上にも役立てる狙いも含まれています。
結果として施策開始から4ヶ月で62%の顧客が店舗で商品を購入しました。プレミアムメンバーズカードの送付により、あなたを大切に想っているという企業のメッセージがお客様に伝わったことが、この結果につながったと考えられます。
ベアミネラル初のロイヤル顧客向け年間特別プログラム
CRM戦略を踏まえた化粧品DM施策はフュージョン株式会社にご相談ください
化粧品のマーケティング戦略ではCRMの観点を踏まえて戦略設計することが重要です。その中でもDMは顧客の継続購入やロイヤルティ向上などに活用でき、ECサイト経由での購入者に対しては接客を補完する役割としても有効です。
購入サイクルが明確だからこそ、タイミングや訴求内容を工夫することで結果が大きく左右される化粧品のマーケティングは、他のチャネルとDMの役割を整理し、それぞれの効果を最大限に活かせるようなコミュニケーション設計が求められます。
フュージョン株式会社では、CRM戦略をもとにしたDM施策をご提案いたします。自社ブランドの顧客ロイヤルティが向上しない、F2引き上げに課題があるなどのお悩みがある際には、お気軽にお問い合わせください。
多くの成功実績をもとに、貴社にとって最適な戦略をご提案いたします。
なお、フュージョン株式会社がこれまで手がけたDM事例集は以下よりダウンロードいただけます。ぜひご活用ください。