企業が中長期的な顧客との関係を育んでいくためには、自社のCRMに積極的に取り組むことが効果的です。CRMの強化により、顧客ロイヤルティが向上し、LTVの最大化を実現することができます。本コラムでは、CRMの強化や、顧客理解を深めることに役立つマーケティング分析のフレームワークや手法を紹介していきます。
目次 マーケティング分析とは マーケティング分析を行うメリット マーケティング分析の代表的な手法 3C分析 STP分析 4P分析 バリューチェーン分析 ファネル分析 顧客分析、売上・商品分析の手法 顧客分析 デシル分析 RFM分析 セグメンテーション分析 行動トレンド分析 コホート分析 売上・商品分析 因数分解 ABC分析 クロス集計 購買間隔分析 マーケティング分析は継続実施が大切 |
マーケティング分析とは
マーケティング分析は、企業が顧客の要望を満たし、市場のニーズに対応するために、データを活用して戦略的な意思決定を行うための取り組みです。マーケティング分析を通じて、企業は顧客の購買行動を理解し、製品やサービスを顧客の期待に合わせて最適化することが可能となります。また、顧客のライフサイクルの傾向を把握し、よりひとりひとりの顧客へのアプローチを探ることにつながります。
マーケティング分析を行うメリット
マーケティング分析を行うメリットは多岐にわたります。
主なメリットは以下です。
- マーケティング戦略の最適化:データに基づく分析により、リソースの最適化と成果の最大化を可能にする
- 顧客ロイヤルティの向上:顧客行動の理解を通じ、ロイヤルティを高める
- ROIの向上:マーケティング施策の効果を測定し、投資対効果(ROI)を向上させる
- リスクの低減:市場や顧客に関するデータ分析に基づいた意思決定により、ビジネス上のリスクを低減できる
- 競争力の向上:競合の動向を分析し、競合他社との差別化が可能になり、競争力が向上する
- 効果的な広告とキャンペーンの実施:ターゲット市場を正確に特定し、パーソナライズされた広告やキャンペーンを実施できる
マーケティング分析の代表的な手法
3C分析
3C分析は、企業が市場における競争優位を築くために考慮すべき3つの要素―企業自身(Company)、顧客(Customers)、競合(Competitors)―を総合的に評価するフレームワークです。企業は、自社の強みと弱みを明確にし、顧客のニーズを理解し、さらに競合他社の戦略や特徴を把握することで、差別化した価値提供及び市場での独自のポジショニングを図ります。この三つのCのバランスを正しく把握できれば、企業は市場での成功を実現するための戦略的な意思決定を行うことができます。
STP分析
STP分析は、市場を細分化(Segmentation)、ターゲットを選定(Targeting)、そして製品やサービスの市場における位置付け(Positioning)を行うフレームワークです。セグメンテーションでは、消費者の行動や特性を基に市場を類似のニーズや特性を持つ小さなグループに分割します。ターゲティングでは、分割したグループの中から企業のビジネス目標とリソースに沿って、最も価値を提供できるターゲット市場を選び出します。そしてポジショニングにより、そのターゲット市場内で製品やサービスが競合と比較してどのように認識され、どのような独自の価値を提供できるかを定義します。この3段階のステップは企業にとって、効果的なマーケティング戦略を構築するための基礎となるプロセスです。
4P分析
4P分析は、マーケティングの古典的かつ基本的なフレームワークで、マーケティング戦略を形成する際に中心となる下記の4つの要素からなります。
【製品(Product)】
・顧客が求める機能や品質を備えた製品やサービスはなにか
【価格(Price)】
・コスト、需要、供給、競合の価格といった要因を考慮した適切な価格はいくらか
【流通(Place)】
・製品やサービスをどのように顧客に届けるか
【プロモーション(Promotion)】
・広告、セールスプロモーションなどを通じて、どのように認知度を高めるか
これらの要素を適切に組み合わせることで、企業は市場での存在感を高め、売上を拡大させることが可能になります。
フュージョン株式会社では、3C分析、STP分析、4P分析用のテンプレートを公開しています。下記からダウンロードできますので、ご活用ください。
一目置かれる、データに基づく分析資料に必要なこと
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析は、企業が提供する製品やサービスにおいて、原材料の調達から顧客への提供に至るまでの全段階にわたる活動を、体系的に見ることを可能にするフレームワークです。企業がどのように価値を創造し、その価値を顧客に提供しているかを理解するために、プライマリー活動(製品の設計、生産、販売、配送、サービス)とサポート活動(企業のインフラ、人材管理、技術開発、調達)に焦点を当てます。各活動がどのように連携しているかを把握し、コスト構造や生産効率性、最終的に顧客への価値提供に与える影響を分析します。バリューチェーン分析を通じて、コストリーダーシップ戦略(コストの優位性を利益に反映し、利幅を拡大すること)や差別化戦略など、自社の競争戦略を明確にしていきます。
ファネル分析
ファネル分析は、顧客が製品やサービスを認知してから購入に至るまでのプロセスを段階別に追跡し、各段階でのコンバージョンを分析する手法です。インターネットの発展により、顧客の振る舞いに関するデータが大量に収集可能になったため、ファネル分析は再び脚光を浴びています。オンラインの接点増加により、企業は顧客の興味を引き、エンゲージメントを深め、購入に至らせるための精緻な戦略を立てることができるようになりました。マーケティング施策のパーソナライズ化、ターゲティングの精度向上、カスタマージャーニーの最適化が求められる昨今のビジネス環境において、ファネル分析の重要性は高まっています。
顧客分析、売上・商品分析の手法
ここまで紹介してきた「マーケティング分析」は、市場全体を理解するための広範なデータ分析です。ここからはさらにひとりひとりの顧客理解に焦点を当てた「顧客分析」と、製品やサービスの市場パフォーマンス(市場でどの程度受け入れられ、販売・利用されているか)や売上の成果に焦点を当てた「売上・商品分析」を紹介します。いずれもCRMに取り組むうえでは欠かせない分析になります。
顧客分析
デシル分析
デシル分析は、顧客を貢献度の高いグループから低いグループまで10分割する手法です。上位グループに属する顧客は、売上や利益の大部分を生み出しており、マーケティング施策の焦点をこれらの顧客に合わせることで、効率的な戦略を立てることが可能です。デシル分析により、顧客セグメントに対する費用対効果を明らかにでき、リソースの最適な配分を行うことの手助けになります。
RFM分析
RFM分析は、顧客の購買行動における下記の3つの指標を用いて顧客をセグメントする分析手法です。
【最近性(Recency)】
・最終購入日からの経過期間
【頻度(Frequency)】
・一定期間内の来店頻度・購入頻度
【金額(Monetary)】
・一定期間内の累計購入金額
これらの指標を分析することで、「売上上位顧客」「継続顧客」「休眠顧客」「新規顧客」のように顧客をセグメントし、顧客ごとにカスタマイズしたマーケティング戦略やコミュニケーションを展開することができます。RFM分析は、「売上上位顧客」を特定できることから、特にリピーターを優遇するマーケティング活動や、顧客ロイヤルティプログラムの設計において有用であると言えます。
デシル分析とRFM分析はCRM戦略立案・施策検討の前提としてもよく使うマーケティング分析手法です。具体的な手順は下記のコラムで詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
セグメンテーション分析
セグメンテーション分析は、顧客群をより細かいグループに分けることで、各顧客の特性やニーズを深く理解するプロセスで、STP分析の一部でもあります。年齢、性別、収入、購買行動、生活様式などの変数を用いて行われ、マーケティングの効果を高めるために、ターゲットとなる特定の顧客セグメントに合わせた戦略を策定するための基礎となります。セグメンテーション分析を行うことで、顧客に合わせた製品開発やサービス提供、そしてより個人化された顧客体験の実現を目指すことができます。
行動トレンド分析
行動トレンド分析は、消費者の過去の購入パターンやオンラインでのコンバージョンを追跡し、未来の購買行動を予測するためのアプローチです。顧客が興味を示した製品や、どのタイミングで購入を決断するかの傾向を掴むことができます。その結果を基に販促活動を最適化し、顧客エンゲージメントを高め、売上を促進するための戦略的な意思決定を行うことが可能になります。
コホート分析
コホート分析は、特定の時期に共通の経験や特性をもつ顧客グループ(コホート)の行動を追いかけ分析する手法です。例えば、あるキャンペーンに反応して商品を購入した顧客を同一グループに設定し、その後の購買頻度や継続性を分析します。これにより、企業は時間経過に伴う顧客の行動の変化や、特定のマーケティング活動が顧客維持に与える影響を明らかにすることができ、より効果的に顧客エンゲージメントを高める戦略につなげることができます。
売上・商品分析
因数分解
因数分解は、売上を構成する要素(例:価格、数量、顧客セグメント、販売チャネル)を個々に分析することで、各要素が売上にどのように貢献しているかを明らかにします。この分析を通じて、売上の増減の背後にある要因を特定し、製品の価格設定やプロモーション戦略、流通戦略を調整することで、より効果的な売上向上策を立てることが可能になります。
商品を通して顧客を知る~すぐにできる売上分析
ABC分析
ABC分析は、商品の売上高や利益貢献度などの指標を基にランク付けし、「A(貢献度:高)」「B(貢献度:中)」「C(貢献度:低)」の3つに分類する手法です。3つのカテゴリに分け、在庫管理や売上戦略の優先順位を決定します。企業はこの分析を利用して、製品ラインナップの最適化や在庫コストの削減に繋がる戦略を立てることができます。
クロス集計
クロス集計は、商品カテゴリと顧客属性などの異なる変数間で売上データを比較し、相関関係を把握するための分析手法です。例えば、ある商品の売上が、地域の違いや顧客の年代によってどのように変わるかを示すことができるため、アプローチすべき対象を絞りたいときにも有用な分析手法です。抱えている課題から何をどのような切り口で集計するかは、分析テーマによってさまざま考えられます。
購買間隔分析
購買間隔分析は、顧客が再購入を行うまでの期間を分析することで、顧客の購買行動の周期性を理解し、予測する手法です。この分析を通じて、企業は顧客が再購入を決定するタイミングを把握し、顧客コミュニケーションや在庫補充のスケジュールを最適化できます。また、購買間隔の変動を分析することで、顧客のロイヤルティや満足度の変化を推測し、それに応じた顧客維持施策を立案するのに役立ちます。
マーケティング分析は継続実施が大切
マーケティング分析は、継続的なプロセスとして取り組むことが大切です。市場は常に変化し、消費者の行動や好みも時間とともに変容します。そのため、一時的なデータの分析に基づいて戦略を立てるのではなく、定期的な分析を通じてこれらの変化を追っていくことが重要になります。継続的なマーケティング分析により、企業は新たなトレンドの発見、顧客ニーズの変化の早期発見、競合との相対的な位置づけの把握を可能にし、それに応じてマーケティング施策を柔軟に見直し、改善していくことができます。このような定点観測は、企業が市場での競争力を維持し、顧客ロイヤルティを最大化するために不可欠です。
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