近年、消費者の購買行動は複雑化しています。SNSで商品の口コミを確認した後に店舗で実物を見て購入する、あるいは店舗で実物を確認した後にネットで詳細を調べてからECサイトで購入するなど、オフラインとオンラインの境界はますます曖昧になっています。
このような消費者の行動変化の中では、企業と顧客の接点は多岐にわたり、それぞれの接点で顧客の行動や属性に関するデータが収集できます。これらのデータがチャネルごとに異なるシステムで管理されていると、顧客データがサイロ化(システムやデータが分散し、連携されていない状態)してしまい、顧客理解が進まず、良質な顧客体験を提供しづらくなってしまいます。
この問題を解決するためには、顧客IDの統合と一元管理が必要です。顧客データを会員番号などのIDをキーに一元管理することで、一人の顧客が異なるチャネルでとった行動を同一の顧客として捉えることが可能となり、より精度の高いマーケティング活動を展開することができます。
しかし、顧客IDの統合と一元管理は容易なことではありません。それぞれのチャネルで収集されるデータの形式や内容は異なり、それらを統合するためのシステムや仕組みが必要となります。
この記事では、顧客データ統合を実現するための具体的な方法と、その重要性について詳しく説明します。
顧客データの統合が重要な理由
リアル店舗・自社ECサイト・ECモール・モバイルアプリ・SNS など、企業と顧客の接点は多岐にわたります。
企業と顧客の接点が多岐にわたると、それぞれの接点で収集されるデータがサイロ化(システムやデータが分散し、連携されていない状態)してしまうことがあります。このような状況では、以下のような問題が生じます。
同一顧客を捉えられない
例えば、同じ顧客がリアル店舗と自社ECサイトでそれぞれ購入した場合、本来なら同一の顧客の購買行動と捉えられるべきですが、データがバラバラに管理されている場合、別々の顧客として判断されてしまいます。
これが原因で、顧客コミュニケーションや経営判断にミスマッチが起こってしまう可能性があります。
無駄なコスト・人的リソースがかかる
システムやツールをチャネルごとに複数保有していると、分析するたびにバラバラのデータを統合しなければならず、非効率となってしまいます。
また、1つ目の問題で挙げたような重複顧客が多いと、施策の「無駄打ち」をしてしまう可能性も高くなります。
一人ひとりの顧客に最適な顧客体験を提供するためには、自社の顧客理解を深めることは非常に重要です。顧客IDの統合と一元管理により、データを基に顧客の特性を正しく捉えることができるようになります。その結果、顧客にとって最善の商品やサービスを、最適なタイミング・チャネルで提供するためのマーケティング戦略を立てることが可能となります。
顧客理解のためのCRM分析については、下記の記事で解説しているのでぜひご一読ください。
顧客データプラットフォーム「CDP」の特徴とその選定方法
CDPとは?
CDPとは「Customer Data Platform(カスタマー データ プラットフォーム)」の略で、企業の顧客に関するデータを収集・管理・分析する「顧客データプラットフォーム」です。
かつては、「プライベートDMP」という名称で、企業が1st Party Dataを収集し、データ分析やWEB広告の出稿などに幅広く使うマーケティングデータのプラットフォームとして、主にシステム部門が運用してきました。
CDPとプライベートDMPはどちらも1st Party Dataを扱うため、同様のツールとして認識されがちですが、役割と構造には違いがあります。
プライベートDMPでは、マーケティング基盤としてデータ活用の幅を広げることが重視されたため、顧客IDに紐づくデータだけでなく、IPアドレスなどの匿名のデータも含めて格納されます。そのため、緻密なデータ集計や分析、ターゲットを絞った広告配信などに有効活用されてきました。
対してCDPでは、1to1コミュニケーションのための顧客ID統合基盤としての役割が大きく、データの全体量よりも「1人の顧客に対するデータの精度」を重視して、個人に紐づく形でデータを収集・管理することが特徴です。各チャネルで収集したデータが顧客IDをキーに統合されていることで、顧客の解像度が高まり、1人1人に最適なマーケティング施策を展開できるようになります。そのため、近年は顧客中心のマーケティング施策に注力しているマーケティング部門が運用するプラットフォームとして広く導入されています。
そしてCDPは、様々な外部ツールとの相性がよく、連携することで1to1コミュニケーションが実現できます。例えばMA(マーケティングオートメーション)ツールと連携すれば、保有するデータを使ってさまざまな切り口でのセグメンテーションが可能となり、マーケティング施策の精度を大きく高めることができるでしょう。
CDPの選定方法
CDPの概念が日本に入ってきた当初は、CDPはマーケティングのデータ基盤として、外資系のエンタープライズ向けのサービスが主力でした。これらのCDPでは、扱えるデータの量が大きく、プラットフォームに格納されたビッグデータを駆使してあらゆるマーケティングの分析や施策設計が自由にできるメリットがあります。
しかしここ数年は、CDPにMA・分析・AIなどの機能が搭載されたオールインワンの国産のマーケティングプラットフォームが一気に増え、中小企業を中心に急速に導入が進んでいます。
その背景には、マーケティング部門の人材・スキル不足から専門知識を持った人材の確保が難しく、データ管理・分析・プロモーション設計を少人数で担っている企業が少なくないことが挙げられます。オールインワンのサービスは、外資系サービスに比べてデータの扱いに慣れないマーケティング担当者にも扱いやすい作りになっており、1ツールで一通りのマーケティングPDCAサイクルを回せる、いわば小回りが利くツールの方が取り回しやすい、という考えがあるようです。
コスト面でも、初期費・運用費ともに比較的導入しやすいプランも用意されており、従来のエンタープライズ向けのCDPからオールインワンツールに乗せ換える企業も出てきました。
一方で、オールインワンサービスは直感的に使いやすいことの裏返しで、パッケージ化されたSaaSサービスであるために拡張性が低く、自社独自のカスタマイズが難しかったり、機能追加に都度コストがかかる、といったデメリットもありますので、CDPの選定は慎重に行いましょう。
CDPを選定する際の観点としては、
・どんな機能が搭載されているが(MA・分析・AIなど必要な機能はあるか?)
・専門知識がなくても、ノーコードでデータ取り込みや抽出が行えるか
・取り扱えるデータ量は問題ないか
・MAなどの外部ツールとの連携は可能か
など、マーケティングデータをどう活用したいかを踏まえて検討することをおすすめします。
データ統合を通じて効果的なマーケティングを実施しましょう
現在のデジタル社会では、消費者の行動パターンは日々変化しています。そのため、企業には顧客のデータをリアルタイムで収集・分析し、迅速に対応していくことが求められます。その前提として、顧客IDを軸にしたデータ統合は欠くことのできないステップです。
データ統合を通じて、一人ひとりの顧客の特性を正しく捉え、顧客にとって最善の商品やサービスを、最適なタイミング・チャネルで提供するための戦略を立てることが可能となります。これにより、マーケティング活動の効果を最大化し、自社の成長を加速することができます。
フュージョン株式会社は、目的に合わせた顧客データの設計から、データの分析と活用に向けた実務まで伴走型でご支援するCRM支援サービスを提供しています。データ統合の取り組みを始めることで、自社のマーケティング活動をより効果的に、より効率的に進めることができます。お気軽にご相談ください。