マーケティングオートメーション(MA)ツールは、2013年頃にBtoB企業から利用が始まり、ここ数年BtoC企業でも急速に導入が増えています。シンプルなメール配信ツールとの違いは、CRMのデータベースと連携し顧客の行動や反応に応じてアプローチを変えられること、そしてそれらの配信を自動化できることにあります。
MAツールを使って成果を出すには、誰にどんな情報を届けるのかを決めるシナリオ設計が非常に重要になります。このコラムでは、シナリオ設計のプロセスとBtoC向けの鉄板シナリオについて解説します。
MAツールの実装に入る前に、配信する概要を整理するための設計図が「シナリオ設計書」です。
シナリオ設計書では、1つのシナリオで、誰に(セグメント)、どんな内容を(コンテンツ)、どんな頻度・タイミングで(シナリオ)配信し、最終的にどういう状態になってもらいたいか、を整理します。ここからはシナリオ設計書を作っていく具体的なステップを解説していきます。
最初のステップは、対象者を決める(セグメント)ことです。
MAツールにCRMデータを連携することで、属性や購買だけでなく顧客の行動(WEB閲覧やメール開封など)もトリガーとして条件に加えることができます。
セグメントの例)
△:過去2回以上買っている人
〇:過去2回以上買っている、かつ、直近のメルマガの開封がある人
※仮説として、直近のメルマガを開封していることから現在も自社への興味が継続していると考えられ、シナリオ発動で次のアクションを促すことができる可能性が高いと想定
このように、複数の軸から条件にこだわってシナリオによる効果が見込める対象者を絞り込みます。
セグメントが決まったら、次にシナリオのゴールを決めます。
対象者がどんな状態になることを目指すのかをできるだけ具体的に決めておくと、その後のストーリーがイメージしやすくなります。
ゴール設定の例)
△:買ってもらう
〇:定期で申し込んでいる商品以外の商品購入をしてもらう
そして、シナリオのスタートからゴールがつながるようにストーリーを決めていきます。
このストーリーが「シナリオ」です。
上記の設計書の例では、シナリオの中で3回の顧客接点を設け、各回にメールを送るシナリオになっています。この段階では、分岐条件(図のひし形部分)や待機時間(図の時計マーク)の具体的な数値は決める必要はありません。ストーリーを俯瞰して、流れに無理がないか、企業からの押し売りになっていないか、など、顧客の立場になって違和感がないかも確認しましょう。
おおよそのストーリーが決まったら、1つ1つの顧客接点で伝えるコンテンツ内容を検討します。
コンテンツの基本の「型」
A:オファー提供型
割引やセールなどのタイミングでオファーを提供する
購買上大事な情報を発信する
B:リマインド型
オファーの利用やキャンペーンなど、期限があるものを再周知する
購買の機会を作り後押しをする
C:サンキュー型
会員登録や購入に対するお礼
アクションに対する納得感を醸成する
D:興味深耕型
商品やサービス情報などの情報提供を行う
商品への興味を深め、購入に引き上げる
E:コミュニケーション型
顧客ロイヤルティを高めたり、ファン化を目的にした配信
メッセージを伝えること自体が目的
コンテンツの「型」の使い方について、上記の設計書の例で補足します。
メール①では、コンテンツの「型」C:サンキュー型を送信すると書かれていますので、最初のメールは対象者へのサンキューメールであることがわかります。
メール②では、コンテンツの「型」D:興味深耕型ですので、①のサンキューメールを開封してくれた方により詳しい商品情報を説明したコンテンツを配信します。
メール③では、コンテンツの「型」A:オファー提供型ですので、②のメールの中で、どのリンクをクリックしたかを分岐条件にして、それぞれの商品を購入する際のオファーを付けたメールを送信します。
ここまででシナリオの大枠はできましたので、最後にコンテンツの中のコールトゥアクション(CTA)に合わせて、前後の分岐条件を調整していきます。例えば、メール本文の中のCTAとして「キャンペーンの詳しい内容はこちら」という誘導があるのであれば、そのリンクをクリックしたか否かを分岐条件に、次のアクションを分けてそれぞれで設定します。
前のアクションから何日後に次のメールを配信するのが顧客にとって嫌がられないタイミングなのか、といった待機条件にもこだわって設定しましょう。
これでシナリオ設計書の完成です。
(まとめ)シナリオ設計書を作成するプロセス |
この流れはMAに限らず、施策の目的をぶらさずに達成するまでの道筋を決めるための王道の進め方です。ただ実際には、予算の都合上、新規でコンテンツ作成ができず既存のコンテンツを使うことが決まっているケースも少なくありません。その場合は、順番が前後しても構いませんので、すでに決まっている部分を軸に他の要素ももれなく検討しましょう。
ここからはBtoCでは定番の4つのシナリオをご紹介します。
何らかのきっかけで会員登録をした人に向けて、初回購入を促すシナリオです。
会員登録のお礼を伝えると共に、キャンペーンで扱った商品に関する情報やオファーを提供することで、購入に引き上げるためのコミュニケーションプランを立てましょう。
キャンペーンがきっかけでメールアドレスを登録してくれたお客様は、その特典に魅力を感じて会員登録をしてくれており、そもそも購入の意志がないケースもあります。その場合、少しずつマインドシェアを上げるシナリオを組む必要がありますので、分岐条件の中にWEBサイトのクリックを追加したり、コミュニケーション型のコンテンツを組み込むのもおすすめです。
サンキューメールから始める、顧客育成のシナリオです。
過去の購買傾向から、初回購入→2回目購入につながりやすい商材や顧客の仮説を立て、ストーリーを組み立てます。
最初のメールで初回購入への感謝を伝えます。この段階では、購入への納得感を感じていただくため、初回購入の商品の使い方やメンテナンス方法について詳しく説明します。売り込みよりもお客様とのコミュニケーションを取ることに重きを置きます。
2通目は、2回目購入の商材に興味が湧いたタイミングで、より詳しい商品情報を提供し、購入へ引き上げます。
3通目としては、カゴ落ちで止まっている方にリマインドを行い、さらに購入を促します。
注意点としては、売り込みの要素が強くなりすぎると離脱につながる可能性があるため、このシナリオ以外に顧客が受け取っている一斉配信メールを含めて、顧客体験として問題ないかも確認しましょう。
オファーキャンペーン、UGCキャンペーン(※)など、期間限定の企画・イベントの告知として、一斉配信のメルマガで案内するところからスタートします。
メルマガだけで購入につながればゴールは早いですが、反応がない人にはチャネルを変えて情報を再送したり、カゴ落ちしている人にはキャンペーン期限のリマインドを行うなど、顧客のアクションを分岐条件にして引き上げていきます。
このシナリオは、既存顧客をターゲットにすでに購入している商品とは別の商品のクロスセルを目的にしていますので、短期的に売上を作りたい時に効果を発揮します。
※UGC:User Generated Content(ユーザー生成コンテンツ)の略で、ユーザーが作るコンテンツのこと。‘○○を購入してSNSで写真をシェア’など
多くの顧客は複数のチャネルで自社との接点を持っているため、チャネルごとの顧客接点をバラバラに設計するとうるさく感じてしまうことがあります。MAは顧客が自社に興味を持ったタイミングでアプローチできることが最大のメリットですので、自社のマーケティングデータからそのタイミングを見つけ、そのタイミングにあったコンテンツを届けることが施策成功のカギになります。
このコラムではMAツール活用をテーマにオンライン施策に絞って解説しましたが、MAでのプロモーション施策はCRM戦略の一部であり、シナリオの中に紙のダイレクトメールなどオフラインチャネルも組み合わせることで、さらに高い成果が期待できます。顧客が興味を持った時にタイムリーにコミュニケーションを取る時はデジタルで、直接手元に届けることで商品・サービスを印象づけアクションに引き上げる時はオフラインで、といったように使い分けることもおすすめです。
メールマーケティングにこれから取り組みたいとお考えの方は、下記の記事でメールマーケティングの種類や取り組むコツをご紹介しています。あわせてご覧ください。
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