MAツールは、見込み客の獲得・育成を自動化し、顧客データ管理の効率を向上させるなど、マーケティング活動を全体的に支援し、企業のデジタルコミュニケーション戦略を強化するための重要なツールです。初めは主に外資系企業が利用していましたが、国産SaaSプロダクトの登場とデジタルコミュニケーションの需要増加に伴い、大企業はもちろん中堅・中小企業でも導入が進んでいます。
顧客の購買行動はオンライン化へと進み、顧客とのコミュニケーション手段もオンライン化しています。顧客との関係性の維持や顧客満足の向上を図り、売上拡大や利益向上を目指すCRM施策の実行にも必要なツールとして需要は年々高まっており、MA市場の売上は拡大を続けています。
参考:ITR「ITR Market View:SFA/MA市場2024」調査ハイライト
(https://www.itr.co.jp/report-library/m-24000100)
しかし、MAツールは単に導入すれば良いものではなく、適切な導入前の設計や、導入後の運用がなされないと、期待した効果は得られません。社会環境の変化の中MAツール導入によって成果を上げている企業がある一方で、MAツールを導入したのにうまくいっていない、最悪のケースとして運用そのものが機能せずに使われていない企業も少なくありません。
そこで、本コラムでは、MAツールでできることをご紹介したうえで、MAツール導入前から導入後の運用でよくある課題と、課題解決に必要なアプローチを解説します。加えて後半では、MA運用で必要なスキルについてもご紹介します。
はじめに:MAツールでできることは?
MAツールは、マーケティング活動を効率化し、効果を最大化するための多様な機能を提供します。例えば、下記のようなことができます。
1.顧客セグメンテーション
MAツールを使用すると、顧客データを分析し、顧客を異なるセグメントに分類することができます。これにより、ターゲットに合わせたパーソナライズされたコミュニケーションが可能になります。顧客との適切なコミュニケーションはロイヤルティの向上に効果を発揮します。
2.シナリオ(キャンペーン)作成機能
MAツールの中核機能の一つは、シナリオ作成によるメール等での顧客へのアプローチの自動化です。これにより、顧客の行動や属性に基づいて、タイムリーかつ関連性の高い情報を自動的に提供できます。顧客セグメンテーションやユーザー行動データと組み合わせて、顧客が欲しい情報を欲しい時に届ける顧客中心のアプローチを可能にします。
3.リードスコアリング
リードスコアリング機能を利用すると、リードの購買意欲やコンバージョンの可能性を数値で評価でき、最も価値のあるリードを優先して営業活動をすることができます。リードの放置やとりこぼしの防止としても機能し、顧客との中長期的な関係性の維持にも活用ができます。
4.ユーザー行動の追跡と分析
MAツールは、ウェブサイト訪問者の行動を追跡し、分析することができます。これにより、ユーザーの興味やニーズをより深く理解し、効果的なマーケティング戦略を策定できます。顧客の情報収集手段はオンライン化しています。オンラインでの顧客行動の分析は、よりニーズに合った情報を提供するために必要不可欠です。膨大なデータを保持し、分析するために、MAツールは重要な役割を果たします。
5.コンテンツマーケティング
コンテンツのパーソナライゼーションや、ターゲットオーディエンスに合わせたコンテンツの配信も、MAツールの重要な機能です。これにより、顧客エンゲージメントの向上とブランドロイヤルティの構築が期待できます。
6.SNSマーケティング
多くのMAツールでは、ソーシャルメディアプラットフォームとの統合ができ、SNS上での顧客エンゲージメントの分析や、ソーシャルメディアキャンペーンの効果測定が可能になります。
7.ROI分析
マーケティング活動の投資対効果(ROI)を正確に測定できます。CRM施策は効果検証を行い、PDCAを回し精度をあげていくことが大切です。MAツールの導入は施策の実行だけでなく、マーケティング予算の最適化や、効果的なマーケティング戦略の策定を可能にします。
以上の機能を適切に利用し組み合わせることで、ユーザー行動に基づくセグメンテーションで1to1のメッセージをタイムリーに配信できるMAツールは、CRM施策の実行においていまや欠かせない存在となっており、その需要は年々高まっています。
導入~運用フェーズ別のMAツール課題と必要なアプローチ
MAツールの導入は、企業のマーケティング活動を効率化し、効果を最大化するための重要なステップです。しかし、多くの企業がMAツールの真の価値を理解せず、その機能を十分に活用できていないのが現状です。以下では、MAツールの導入~運用でよく見られる課題と、それらを解決するための具体的なアプローチについて詳しく解説します。
導入前の課題:MAツールの機能とメリットの理解不足
多くの企業は、「MAツール=楽になるツール」という誤った認識を持っています。これは、MAツールの本質的な価値や機能を理解していないことが原因です。MAツールは、メール配信やユーザー行動の追跡など、多くの機能を持っていますが、それらを適切に活用し、組織の目標達成に寄与させるためには、明確な目的と具体的な目標の設定が必要です。また、どの機能を利用してどのような施策を行いたいのかを明らかにし、具体的な数値目標を設定することで、MAツール導入の効果を定量的に評価できるようにすることが重要です。
導入準備時の課題:不十分なシナリオ設計
MAツールを効果的に活用するためには、しっかりとしたマーケティングシナリオの設計が不可欠です。シナリオが不足していると、顧客に対して適切なタイミングや方法でコミュニケーションすることができず、MAツールの潜在的な価値を引き出すことができません。
シナリオを新規作成もしくはアップデートする際は、最初からツール上で操作するのではなく、一度設計書を起こしてシナリオの全体感を棚卸しすることをおすすめします。
シナリオ名、目的、配信チャネル、対象者といった基本的な整理から始まり、配信後にお客様に求めるアクションやシナリオの目標数値も設計書にまとめます。また、すでに実行しているシナリオの効果が感じられない時も、設計書を書き起こしてどこがボトルネックになっているのかを洗い出すことで、変更すべき点が見えてきます。
▼シナリオ設計書の例(当社作成)
また、カスタマージャーニーを踏まえてシナリオを設計することで、顧客とのエンゲージメントを深め、コンバージョンを向上させることができます。カスタマージャーニーは顧客の行動やタッチポイントを可視化し施策に落とし込むためのフレームワークですが、MAツール活用時にもカスタマージャーニーがないと実施すべき施策のタイミングやタッチポイントが最適化されず、またその施策でどのようなコンテンツで何を語るのかを検討することもできません。
MAツールを活用するためにはマーケティング施策を点ではなく線、ストーリーで展開する必要があります。そのためには、マーケティング施策設計と運用の両方が必要です。
導入後:MA運用設計の不備
MAツールで成果を出せるかは、その機能よりも、実際のオペレーションの設計と実行に依存します。
運用設計が不十分だと、MAツールの多様な機能をフルに活用することができず、投資対効果が低下します。運用設計では、業務を遂行するための業務フローの作成や、作業のための体制作り、人的リソースの再配置、スケジュールの作成やクリエイティブやコンテンツ開発のための外部パートナーの活用など、さまざまな検討事項があります。これらの要素を整理したうえで運用設計を行い、MAツールを効果的に活用することで、マーケティング活動の効率と効果を最大化することができます。
MAツール運用に必要なスキル
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MAツールを正確で効果的に運用すると、企業のマーケティング活動の質を大きく向上させることができます。しかし、運用には適切な知識とスキルが必要です。ここでは、必要なスキルについて詳しく解説します。
スキルの重要性
MAツールの運用には、主に下記の3つのスキルが必要です。これらのスキルを活かしながらMAツールを活用することで、マーケティング活動の効果を最大化することができます。
1.シナリオプランニング
顧客の行動や反応に基づいて、最適なマーケティングシナリオを設計する際に求められる主なスキルです。
戦略的思考力: ビジネス目標と顧客ニーズを結びつけ、効果的なシナリオを設計する能力 |
2.データ分析
適切なPDCAを回すためには収集されたデータの分析を行う必要があります。以下は、データ分析を行う際に求められる主なスキルです。
統計学・数学の知識: データを正確に分析し、有効な結論を導き出すための基礎知識 |
3.コンテンツ作成
ブランドメッセージを伝え、顧客の関心を引くコンテンツを制作することは効果を高めるためにも必要です。
ライティングスキル: クリアで魅力的なテキストを作成する能力 |
これらのスキルをすべて習得するのが理想的ですが、現実的には困難な場合が多いです。習得には時間とコストがかかり、習得までの間に業務が停滞するリスクも存在します。習得が困難な場合、外部の専門家やパートナー企業との協力を検討することが有効です。
外部パートナーの利用により、迅速な業務の効率化と効果の最大化が期待できます。近年では、マーケティング・アズ・ア・サービス(MaaS)の概念が登場し、マーケティングオペレーションの設計から実際の運用までを一元的に支援するサービスが増えています。
これにより、企業はマーケティング活動の効率化と効果の最大化を図ることができます。MAツールの運用成功のためには、適切なマーケティング計画とMAツール運用に関する知識が不可欠です。
MAツール運用にお困りの方はご相談ください
人口減少や価値観の多様化、サービスの多様化などにより、新規リード獲得がBtoB・BtoC企業にとって大きな課題となり、MAツールの導入が多くの企業で進んでいます。しかし、導入後、活用がうまく行かないという事例も少なくありません。
この背景を踏まえ、今回はMAツール導入がうまく行かない理由と、成功させるためのポイントについて解説しました。
MAツールの運用は、あくまでもCRM戦略の実行の1つの手段にすぎません。手段ありきにならないよう、なぜMAツールを導入するのか、MAツールで何をしたいのか、しっかり目的とゴールを定めた上で運用設計を行い、PDCAサイクルを回していくことをおすすめします。
MAを含めたデジタルマーケティングをこれから推進していきたい、という方には、下記の記事でメールマーケティングの種類や取り組むコツをご紹介しています。ご興味があればあわせてご覧ください。
フュージョン株式会社では、30年以上の経験を基に、CRM領域で多くのクライアント企業を支援してきました。ターゲット設定、コミュニケーション設計、クリエイティブ企画設計、MAツールの実装と運用、効果検証など、CRM領域の総合支援を行なっています。
MAツールの運用に関しては、Salesforce社のBtoC向けMAツール「Salesforce Marketing Cloud Engagement」に特化した運用支援サービスを提供しています。
「Salesforce Marketing Cloud Engagement」を導入しているがうまく活かせていない、リソースが足りていないなどのお悩みがある方は、お気軽にお問い合せください。