本記事では、マーケティングにおけるリピーター獲得の重要性や、チャネルミックスの有効性を解説したうえで、具体的にどのようにリピーター獲得施策を設計すればよいのか、例を用いて詳しく解説します。
リピーターの獲得は新規顧客の獲得に比べて費用対効果が高く、優良顧客を育成するCRMの観点でも重要です。
新規顧客からリピーターに繋げるためのF2引き上げ施策では、顧客視点でカスタマージャーニーを組み立て、マーケティング施策を検討することが大切ですが、実際に実現するのは難しいことが多々あります。
なぜなら、企業の部署の編成では基本的にデジタル担当とアナログ担当、店舗担当などチャネルごとに部署が分かれているケースが多く、KPIもそれぞれの部署で分断して設定されがちだからです。
このような状態では、各部署で最大のパフォーマンスを発揮できたとしても、顧客視点のカスタマージャーニーに基づいた施策やサービスを提供するのは難しく、リピーター獲得という視点では最大限の成果を獲得しにくいでしょう。
この課題を解決するには、顧客フェーズごとにあらかじめチャネルミックスすることを前提としてコミュニケーション設計を作成し、PDCAを回していく方法が効果的です。
以下は、富士フイルムの協力により行われた実証実験で、ダイレクトメールとメルマガを組み合わせた訴求と、メルマガ単体での訴求とで効果を比較したものです。
出典:紙メディアは意外にも若年層に有効 3つの実証実験で明らかになったDMの効果を発表 (1/3):MarkeZine(マーケジン)
グループA、B、Cの結果からわかるとおり、DMを送付しているグループAとグループBは、メルマガのみを送付したグループCに比べて、「アクセス数」「注文数」「クーポン使用率」の全てで高い効果を得ています。
このことからも、デジタルとアナログを組み合わせたチャネルミックス施策はそれぞれチャネル単独で実施する施策に比べて有効なことがわかります。
デジタルとダイレクトメールを組み合わせた実際の事例については、以下の記事で詳しく解説しています。
マーケティング施策でデジタルとアナログそれぞれのチャネルを組み合わせるメリットは、いくつかあります。
まず、情報の量と質の両方を担保できる点です。
デジタル施策の大きな特長であるリアルタイム性を活かし、タイミング良く顧客へ多くの情報を届けつつ、アナログ施策でより形に残るアプローチをすることで、行動を促すことができます。
デジタル施策だけでは情報が届かない層にアプローチできることも、大きなメリットです。
これまでデジタル施策のみでアプローチして反応がなかったお客様に紙のDMを送ることで、新しい層を掘り起こせる可能性があります。
また、ダイレクトメールなどのアナログ施策はデジタル施策に比べてコストがかかるものですが、先にデジタル施策でお客様の温度感や興味の方向性を把握してダイレクトメールを送る顧客を絞り込み、購買の引き上げの最後の一押しとして活用すれば、費用対効果を高められるメリットもあります。
さらに、複数のチャネルで顧客に丁寧なアプローチができることも、企業のイメージやロイヤルティの向上に効果的です。たとえば、初回購入をした顧客に口コミ投稿でのインセンティブを紹介したり、リピート購入時にどのチャネルでも利用できるクーポンをDMで送付したりするなどの方法があるでしょう。
デジタルとアナログを効果的に組み合わせるには、いくつかのポイントをおさえたうえでコミュニケーションを設計する必要があります。
まずは顧客視点でのカスタマージャーニーマップを基に、シナリオのスタートとゴールを定めます。個別の施策をカスタマージャーニーからいきなり検討すると、元となる情報の抽象度が高く、細かな施策の焦点がぼやけてしまう可能性があります。
結果として抽象度の高い施策しか実施できず、効果を検証しにくいという問題が発生しかねません。そのため、まずはカスタマージャーニーを区切る(シナリオのスタートとゴールを定める)ことで、何を目的とした施策にするかを検討しやすくする必要があるのです。
1つのシナリオの中には複数の顧客接点があるため、接点ごとのタイミングや伝えたい内容に応じてアナログ施策とデジタル施策をうまく使い分けていきましょう。
この際、デジタル施策を主軸としてシナリオを組みつつ、最も効果的と思われるタイミングでアナログ施策を実施する形が王道です。
こうすることで、DMに代表されるアナログ施策のデメリットとなるコスト面の課題も解消され、効果を最大限に発揮するシナリオが完成します。
またデジタル施策の結果で、顧客の検討度や興味関心度合いがある程度推し量れる場合は、まずデジタル施策を実施したうえで、その結果を踏まえてDMの内容を変えたり、送付する顧客を絞り込んだりするとよいでしょう。
複数のコンバージョンポイントそれぞれで効果計測を怠らないことも重要です。チャネルミックス施策では、各所に設置したコンバージョンポイントの結果に応じてシナリオを分岐させることで、顧客の状況に応じた適切なコミュニケーション設計を実現できます。
コンバージョンポイントごとの結果を踏まえその後の施策を打ち出すことで、カスタマージャーニーマップ全体を通して足並みを揃えたコミュニケーションが可能です。結果として、質の高い顧客体験を提供できロイヤルティの向上にもつながるでしょう。
以下の記事ではダイレクトメールを主軸として、デジタルと組み合わせる考え方を詳しく解説しています。
デジタルとアナログを組み合わせた施策の例として、Eメールと紙のダイレクトメールでのシナリオを例に紹介します。
この例は、初回購入をスタートに2回目購入をゴールにした、F2引き上げ施策シナリオです。
まず商品お届け後にEメールでコミュニケーションを図ります。商品お届け時の気持ちの高まりに合わせて、商品の使い方の説明や企業の想いを伝えて、初回購入への納得感を深めるフェーズです。この際、メール文中には初回購入の感想をWebアンケートで回収したり、口コミ投稿を促したりと、何かしらのコンバージョンポイントを設けておきましょう。
その後、初回購入した商品が使い切る少し前のタイミングで紙のダイレクトメールを送付します。
ダイレクトメールでは、メール開封の有無やメール文中でどの商品のリンクをクリックしたかなど、設置したコンバージョンに対する顧客の反応に応じて掲載内容を出し分けることで、より顧客に寄り添ったアプローチが可能になります。
ダイレクトメールはEメールに比べてタイムリーな発送ができないと思われがちですが、MAツールと印刷のフローをデータ連携することで即日発送する方法もあります。
そのため、この例のように一連のデジタルシナリオに紙のダイレクトメールを組み込むことが可能になり、顧客体験(CX)の向上と成果の最大化が実現できます。
上記のようなシナリオは、デジタル担当部署とアナログ担当部署が分かれていると実施が難しいという現実もあります。社内で部署をまたいでシナリオを設計するのが難しい場合には、部署間の調整を含めて外部に委託するのも選択肢の一つとして検討するとよいでしょう。
デジタルとアナログを組み合わせることは、リピーター獲得施策をより効果的に実施するための方法の一つです。また、チャネルミックスはただそれぞれのチャネルを組み合わせるだけではなく、前後の施策で連動性を持って実施することが重要です。デジタル施策だけでは成果が頭打ちで、テコ入れを必要性を感じている方は、アナログ施策も取り入れてシナリオをアップデートしてみてはいかがでしょうか。
フュージョン株式会社では、上記で一例としてご紹介したF2引き上げシナリオの他にも、デジタルとアナログを組み合わせたBtoC戦略向けのコミュニケーションシナリオをご用意しています。当社の知見を活かした鉄板シナリオをppt形式でダウンロードできるため、そのまま編集・アレンジし、すぐに実務に活かせる資料です。
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デジタルとアナログの特性を活かした顧客コミュニケーション設計については、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
チャネルミックスだけではなく、CRMの基本的な考え方に沿ったカスタマージャーニーマップの作成や顧客コミュニケーション設計、ダイレクトメール施策のご相談なども承っております。マーケティングの全体設計でお悩みの方はぜひお気軽にお問い合わせください。