この記事では、なぜBtoBマーケティングが必要なのかを改めて整理するとともに、BtoBマーケティングの特徴や取り組み方のコツをご紹介します。
かつてBtoBの取引においては、営業部門が中心になって顧客を開拓し、自社の製品やサービスを売り込み、クロージングした後も営業部門がフォローアップするという一連の流れがあったため、マーケティング部門の関与度が低くなりがちでした。特に、BtoB企業では、製品を開発・製造する部門や、完成した製品を販売する営業部門が花形部門であり、営業担当者は顧客企業の担当者と顔なじみになりながら、ハイタッチセールスによる案件化や張り付きでの案件拡大機会の創出に力を注いでいました。
一方で、マーケティング部門は企業広告や製品広告を担当する広告宣伝部や広報部と、販促活動を担当する部門に分かれていました。大企業では、広告宣伝部や広報部が広告代理店と打ち合わせしマス広告を打つ、一方で営業リソースや広告費の少ない中堅中小企業は、DMやテレアポでハイタッチセールスと同等もしくは類似の効果を出せるように販促活動を行う、といったような具合です。このように、マーケティング部門は営業活動サポートのような位置づけとして捉えられていました。
しかし、インターネットの普及や急速なデジタル化の波に伴って、購買行動に変化が訪れた結果、BtoCだけでなくBtoBにおいても、商談前・商談中・商談後の全ての段階にもっと関与した統合的なマーケティング活動が必要だという認識が広まりました。そして、BtoB企業でもマーケティングの重要性が理解されるようになってきました。
多少古いデータにはなりますが、米国BtoBマーケティング専門企業JV/M inc.の調査によると、デジタルネイティブの世代が業務を行い、BtoB企業のデジタルシフトが進んだ結果、平均的なBtoB顧客の購買プロセスにおいては取引先の営業担当者にコンタクトする時点で57%のプロセスが終了しているという結果が公表されています。
BtoB企業の購買プロセスは、デジタルネイティブ世代が出てきてから大きく変わっておらず、この数字自身はコロナ禍の影響で増加はしても減少はしていないと思われます。
日本においても、デジタルネイティブの世代であるY世代やZ世代が社会人になり、企業内でさまざまな業務に携わるようになっています。彼らは、物心ついた頃にはデジタルスペースで当たり前のように情報にシームレスにつながっている環境に慣れ親しんでいます。そして今では、プライベート環境で利用するようなデジタル体験をビジネス環境においても求めています。消費者として購買行動を取るときだけでなく、企業の一員として購買行動を取るときにも、事前にGoogleで検索し、TwitterやInstagram、YouTube等の投稿をチェックするのは、ごく自然な行動になっています。
参考までに、セールスフォース・ドットコムの資料によれば、「企業が提供する体験は製品やサービス同様に重要である」と回答した人の割合は一般消費者79%、法人顧客85%と、BtoC・BtoBを問わず8割程度を占めています。
今まではごく一般的とされてきた、営業部門を中心に客先に出向き商談を発掘し、進め、クロージングするという接触型中心のビジネススタイルが、若い世代の登場とコロナ禍における非接触のビジネススタイルが当たり前となった今の環境において様変わりをしてしまったと言えます。そして、そのことはBtoB企業におけるマーケティング、セールス活動のうち、特にマーケティング活動に大きく影響を与えています。
ここで、BtoB企業がマーケティングを行うにあたって押さえるべき基本事項として、BtoBビジネスの特徴と、その特徴を踏まえたマーケティング実施のコツをご紹介します。
BtoBビジネスの特徴としては、主に下記3点が挙げられます。
【BtoBビジネスの特徴】
1.購買の関与者が複数で多層である
2.購買決定までに時間がかかる
3.意思決定の心理は論理的で合理的である
BtoCとの違いを整理したのが下記の表です。
自社製品やサービスをBtoB企業に購入してもらうためには、企業内に存在する「多数かつ多層」の関係者間の、「論理的で合理的」な購買プロセスにおいて、「購買決定までに必要な時間」における最適な関係作りが必要です。なお、顧客との関係性をどのように構築するかを決めるためには、ペルソナ設定とカスタマージャーニーマップの設計が役立ちます。
これらのBtoBビジネスの特徴を念頭に置きながら、自社をとりまく内的・外的環境を分析したり、自社の製品やサービスに当てはめ深掘りしたりことによって、自社がマーケティング活動で解決すべき真の課題を発見し優先順位付けすることができます。
BtoBマーケティングを行う際は、BtoBビジネスの特徴を踏まえ、以下の3つを工夫する必要があります。
BtoBビジネスの特徴である「多数かつ多層」の関係者の存在は、購買プロセスに大きな影響を与えます。そのため、BtoBマーケティングを行う際は、取引を進めるときに見えている担当者やその上司、商談に関係している人物以外に、自社からは可視化されていないが購買プロセスに影響を与えるステークホルダーが存在することを認識する必要があります。もちろん、ビジネスの規模や売り込みたい製品やサービスによってステークホルダーの人数や階層は変わりますが、BtoBビジネスではステークホルダーの可視化が必須です。
次に「論理的で合理的」な購買プロセスでは、各段階において自社が誰にどのようにアプローチして、次の段階へスムーズに進むための判断に対するサポートが必要なのかを見極める必要があります。そのためには、社内のどのような資源(人的資源や物的資源)を活用して、どのようなアプローチをもって対応するかを検討しなければなりません。そして、限られた自社の資源を最適に配分することが必要です。
最後に、「購買決定までに必要な時間」についてですが、BtoBマーケティングでは購買決定までの期間が長期間に渡ることが多々あります。場合によっては年度をまたぐようなことも発生するでしょう。そのため、BtoBマーケティングにおいては、購買プロセスが進行している期間だけでなく、その前後の期間や購買プロセスと直接関係のない期間も含めて、長期間にわたり最適な関係を維持し続ける必要があります。
欧米など海外のBtoB企業と比較すると一周遅れと言われていた日本のBtoB企業のマーケティング活動ですが、最近の日本企業を取り巻く外的、内的環境のダイナミックな変化が、企業自身のマーケティング活動そのものに急速な進歩をもたらしました。今では、日本企業と欧米企業とのマーケティング活動の差は縮まってきていると言えます。
しかしながら、企業の購買担当者から見ると日本の企業のマーケティングの変革はまだまだ不十分な点があります。BtoB企業にとって更なるマーケティングの変革は最重要課題です。ご興味のある方は、下記の関連コラムもあわせてご一読ください。
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