以前のコラム「日本の広告費」から見るダイレクトメール(DM)費用推移と、正確に理解するための注意点を解説」にて、電通が毎年発表している「日本の広告費」をもとに、ダイレクトメール(以下DM)広告費に関するコロナ禍前後での推移や、DM市場規模を把握するときの注意点を詳しく解説しました。
以前のコラムで解説したとおり、DM広告費の市場規模の推移から見ても、ダイレクトマーケティングの代表的な手法のひとつであるDMは、コロナ禍においても企業にとって強力なプロモーションメディアであり、環境変化に強いメディアです。
なお「日本の広告費」の調査では、各広告費別に考察が掲載されていますが、目的はあくまでもDM広告費を含む各メディア広告費の市場規模を把握するためのものです。そのため、DMの使われ方や消費者の受け取り方等の行動変化を把握するためには、十分ではありません。
それでは、コロナ禍前後でDMに対する行動変化は起きたのでしょうか?
DMの実態をより詳しく知るためには、一般社団法人日本ダイレクトメール協会が2012年から毎年実施している「DMメディア実態調査」を読み解くことで理解できます。
そこで今回のコラムでは、DMメディア実態調査を参照しながらコロナ前後における行動変化を見ていきます。
DMメディア実態調査は、一般社団法人日本ダイレクトメール協会が2012年から毎年12月に実施しているDMにフォーカスした調査で、2022年4月に発表された2021年度版で10回目になります。
調査は、首都圏の200名を対象に、例年12月中旬に2週間かけて日記形式で行う定点調査となっており、毎年同時期に調査を行うことで、季節的な変動要因をできるだけ排除している調査となっています。
この調査では
を個別のDMごとに記録し分析をしています。
また、各調査項目はその時々で若干の追加、変更は加えられていますが、多くの設問は過去にさかのぼってもほぼ同じ設問内容ですので、経年変化やその時々のトレンドを知ることができます。
今回のコラムでは、2019年から2021年までの調査を参考にしながら、コロナ禍前後での変化を考察します。ちなみに2019年版は、2019年12月中旬に実査でコロナ禍直前の調査です。2020年版と2021年版の調査は、コロナ禍中ではありますが比較的落ち着いている時期と言えます。
また、この調査ではDMの定義を「封書、ハガキ、情報誌・カタログ、同梱パンフレット、折込チラシ」と個人にダイレクトに届くメディア全般として定義していますので、純粋な広告郵便物だけの調査ではないことが前提になります。
まず、コロナ禍前後での受取通数はどのように変化したのでしょうか。
2020年調査のタイミングは、秋からコロナ感染者が増加し、年明けの2022年1月からまん延防止重点措置が始まる直前のタイミングでした。そのため、社会環境が若干スローな時期の調査時期であったことが影響したと言えるのではないでしょうか。
2020年の増加に関しては、届いたDMの種別の調査結果も踏まえて考察します。
2020年に通数は増えましたが、受け取り種別を見ると、その他が2.3通となっています。これは、2019年の1.2通、2021年の0.6通と比較すると2倍-4倍弱です。その他は定義から考えると小包、情報誌・カタログ、同梱パンフレット、折込チラシの合計ですが、本人宛のDM送付元の業種の調査結果で通信販売メーカーが突出していることからこの業種でよく使用される小包や商品と一緒に届けられる同梱パンフレット、エリアマーケティングで使用される折込チラシが増えたのではないかと思われます。
また、本人宛のDM案内内容について、2021年を見ると「特売・セール・キャンペーンの案内」「クーポンの案内・プレゼント」等店舗送客に繋がりやすい施策の案内が減る一方、「新商品・サービスの案内」「商品・サービスの利用明細・請求書」が増加しています。特に「新商品・サービスの案内」をDM施策で実施するということは、新規顧客向けというよりは、インハウスリストを活用した既存顧客向けの施策の実施によって増加したと推察できます。
次に、DM発信者のタイプ別受容度結果を確認します。この調査では、発信者を自分との関係性で分類しており、一番関係性の深い「会員だったり、商品やサービスの取引のある相手からのDM」から一番関係性の薄い「あなた個人宛てではなく家に投函される無宛名のDM」まで、計4段階に分けています。
どの分類の関係性でも、コロナ禍の2020年には前年と比較して数%の上昇がみられますが、2021年では2019年と同水準もしくは同水準以下になっています。
社会生活の制限を受けていた2020年では、家にいる時間が増えるなど、消費者側の情報の入手にも一部制限が出ていたことから、この時期は発信者との関係性に関係なく情報を受け入れる割合が増えたが、コロナ禍が落ち着いた2021年にはコロナ禍以前の態度に戻ったと読み解くことができます。
やはり、DMの普遍的なセオリーである「誰が送ってきたのか」「なぜいま私に送られてきたのか」を受信者に明確に理解させることが重要であり、このことに関してはコロナ禍と関係なく心に刻んでおく必要があります。
ここまで見てきたように、受取通数や種別などコロナ禍による社会環境や行動の変化がDMに影響を及ぼしたものもあれば、受容度のようにコロナ禍でも変化しなかったものがあることがわかります。
今回のコラムでは、一般社団法人日本ダイレクトメール協会のDMメディア実態調査を基にコロナ禍前後におけるDMの変化について考察してみました。
DMメディア実態調査はDMに関しての唯一の定点調査で、DMを受け取る側から見たDMを把握している調査です。
受け取り手を知ることは効果的なプロモーション施策を企画・制作するための第一歩です。このような調査から得た知見を、新しいDM施策の企画・制作に反映させることによって最適な結果を得ることができます。
以下の記事では、近年のダイレクトメールに関する市場動向やトレンドを詳しく解説しているので、ご興味のある方はあわせてご覧ください。
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