毎年春が近づくと、季節の便りのごとく電通から「日本の広告費」が発表されます。
これは、日本国内で1年間(1~12月)に使われた広告費を、マスコミ四媒体(衛星メディア関連も含む)、インターネット、プロモーションメディアの広告媒体料と広告制作費に各社の協力を得ながら推定したものとして発表されているものです。
2021年の広告費は、2022年2月24日に「2021年 日本の広告費」として発表されました。
近年は、インターネット広告費がマス四媒体の広告費を超えたため、その関連の記事が多く執筆されたこともあり、すでに読まれた方も多いと思います。
一方で、メディアに取り上げられることが少ないプロモーションメディア広告費、特にダイレクトメールの広告費(以下、DM広告費)はいくらでどれほどの市場規模かはあまり知らないマーケターの方も多いと思います。
そこで今回のコラムでは、見逃されがちなDM広告費の推移や、正確に理解するための注意点について解説します。
最新のDM市場動向については、下記の記事で解説していますので、ご興味のある方はあわせてご覧ください。
DM広告費の推移
そもそもDM広告費がいくらであったかを詳しく知るには、「日本の広告費|媒体別広告費」で確認することができます。
DM広告費は、この中のプロモーションメディア広告費の一つの項目として記載されています。しかしながら、最新の2022年発表の記事内では、2021年を含めた過去3年の数字しか把握することができません。そこで、過去に発表された日本の広告費を参考にしながら過去10年間のDM広告費の推移を総広告費、プロモーション広告費と比較しながら見ていきたいと思います。
まず、広告費の推移についてです。日本の総広告費は2013年に6兆円を超え、その後も順調に伸び2019年には7兆円に迫る数字になりました。2020年の新型コロナ感染症拡大の影響を受け広告費は大きく減少しましたが、2021年は東京オリンピックの開催等の社会活動の再開を受け、2018年を超える水準まで回復しました。
プロモーションメディア広告費は2012年以降ほぼ横ばいで推移していたのですが、2020年には総広告費同様に減少、2021年は2020年と同水準でまだ回復しているとは言えません。
そして、DM広告費については、2016年の大口利用向け割引率の引き下げの影響を受けつつも、2012年以降はほぼ横ばいで推移しています。また、他のメディア広告費同様に、2020年は新型コロナ感染症の影響を受けましたが、お客様と直接つながるメディアという特性もあり、減少額は他のメディア広告費ほどではなく、2021年も同様に順調に推移していることが分かります。
増減の傾向を詳しく見るために2012年の各広告費を100とし、前年に対しての伸び率をグラフにしたのが次のグラフになります。
各広告費ともに、2018年までは前年対比100%前後で推移しています。また総広告費、プロモーションメディア広告費共に、2019年東京オリンピックに向け前年比で大きく増加しました。2020年は、一転して新型コロナ感染症の影響で社会活動が制限されたため減少、特にプロモーションメディア広告費は前年比80%を割り込む大きな減少率となり2021年も100%を割り込んだまま回復途上であることが分かります。一方で、DM広告費も2019年は他の広告費同様に減少しましたが減少幅は他のプロモーションメディア広告費ほどではなく、逆に2021年には100%を上回り大きく回復したことが見て取れます。
確かに、ここ10年のDM広告費の推移は緩やかな減少基調でした。また、DMを制作・発送する企業や業種も時代とともに移り変わりがありました。
しかしながら、DMは自社が保有する顧客や見込み客に対して直接情報を届けることができるところに加え、エリアエールやタウンメールなど地域を特定した無記名の郵送物が従来の折り込みチラシに代わって使用されていること、BtoB企業が新規獲得の施策としてDMを活用する等、現在でも多くの企業で活用されています。
注意点1.DM広告費には制作費が含まれていない
実はDM広告費を理解する上で2つの注意点があることをご存知ですか?
一つ目の注意点は、DM広告費の「定義」です。「2021年 日本の広告費|電通推定「日本の広告費」の概要」のページの(2)として「日本の広告費」の推定範囲が掲載されています。
参考資料:2021年 日本の広告費|電通推定「日本の広告費」の概要
「日本の広告費の推定範囲」の記載によるとDM広告費は「ダイレクト・メールに費やされた郵便料・配達料」とあります。つまり、日本の広告費で取り上げているDM広告費というのはあくまでも郵送料・配達料の合計に過ぎず、必ず発生するはずの制作費が含まれていないことになります。一方で、広告費に広告制作費が含まれているメディア広告費もあります。実際、日本の広告費でも2018年以降は推定としながらもDM広告制作関連市場と記載し制作費を掲載していますが、こちらはあくまでも実際の市場規模ではなく推定の市場規模であり参考数値的な扱いになっています。ただ、合算すれば大まかなDM広告費の市場規模を把握することはできます。
参考資料:2021年 日本の広告費|プロモーションメディア
注意点2.データマーケティング関連市場が含まれていない
もう一つの注意点は、DMで不可欠であるデータにまつわる様々な費用がDM広告費には含まれていないことです。2017年の「日本の広告費」のうち、DM広告費の要点の解説文の1行目に「本定義に含まれないデータマーケティング関連のDM市場は拡大傾向にある。」と記載があるのです。
例えば、従来金融機関やクレジット会社、通信会社が発行していた請求書等のオーバーレイ印刷での情報処理~印字のプロセスにかかわる費用は、DM広告費には含まれていないと推定できます。また、近年の進化した印刷技術を活用したフルパーソナライゼーション印刷や、DMP・MAなどとのオン・オフ連携、オンデマンド印刷によって制作されたDMの業務にかかわる運用費用等も、推定広告制作市場規模に含まれていない可能性があります。
テクノロジーの進歩により広告が変化していくにつれ、DM広告費においてもDMメディアそのものが進歩した結果、直接DM広告費に含まれていない費用が多く発生している点に留意しましょう。
DMは外的環境の変化に流されないプロモーションメディア
日本の広告費からDM広告費だけを追いかけると、市場規模は確かに年々減少気味に見えるため、DMメディアを活用した施策そのものが徐々に廃れていると思われがちです。
しかし、含まれている数字の意味を正確に理解し、現状を把握すると、実はDMというメディアそのものは他のメディアと比較しても昔と変わらず様々な業種・業態で活用されていることがわかります。そういう意味では、DMというメディアは実は外的環境の変化に流されない強いメディアです。
フュージョン株式会社は、広告戦略としてのDM作品を評価する日本最大の賞「全日本DM大賞」を連続受賞しています。新たにDMの実施を検討している場合や、実施中のDMの効果を高めたい、という方は、ぜひ一度フュージョン株式会社へお問い合わせください。