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    「2024年 日本の広告費」からわかる、今こそ見直したいダイレクトメール施策の効果と工夫

    公開日:2025-03-31
    更新日:2025-04-02

    「2024年 日本の広告費」からわかる、今こそ見直したいダイレクトメール施策の効果と工夫
    株式会社電通より毎年発表されている「日本の広告費」の2024年版が2025227日に発表されました。「日本の広告費」とは、日本国内における1年間(112月)の主要四媒体、インターネットに加え、プロモーションメディアの広告媒体料と広告制作費(含まれている項目と含まれていない項目あり)を算出し分類ごとの総広告費を発表しているものです。

    そこで今回のコラムでは、「2024年 日本の広告費」を取り上げ、特筆すべきトピックスと、特にダイレクトメール広告費(以下、DM広告費)からダイレクトメール(以下、DM)に関して考察します。

    なお、「2024年 日本の広告費」の発表に関しては、以下のリンクを参考にしてください。

    【参考資料】
    「2024 日本の広告費」 株式会社電通

    過去最高の総広告費と3兆円市場に成長したインターネット広告

    最初に2024年の総広告費と、何かと話題になりがちなインターネット広告費について取り上げてみたいと思います。

    2024年の総広告費は76,730億円で前年比104.9%の成長となり、3年連続で過去最高を記録しました。
    またインターネット広告費は、3,187億円増加の36,517億円、前年比109.6%となり、日本の総広告費全体の47.6%を占めるまでになりました。
    インターネット広告費が大きくなっている要因は、広告を提供しているフォーマットの種類、いわゆる広告種別と取引手法の多さにあり、その多さはインターネット広告の定義からも確認することができます。

    【広告種別の定義】※参考資料より抜粋
    ・ビデオ(動画)広告:動画ファイル形式(映像・音声)の広告

    ・ディスプレイ広告:Webサイトやアプリ上の広告枠に表示する画像、テキストなどの形式の広告

    ・検索連動型広告:検索サイトに入力した特定のワードに応じて、検索結果ページに掲載する広告

    ・成果報酬型広告:インターネット広告を閲覧したユーザーが、あらかじめ設定されたアクションを行った場合に、メディアや閲覧ユーザーに報酬が支払われる広告

    ・その他のインターネット広告:上記以外のフォーマットのインターネット広告、メール広告、オーディオ(音声)広告など。タイアップ広告を含む
    【取引手法の定義】※参考資料より抜粋
    ・予約型広告:純広告やタイアップ広告として、代理店・メディアレップ経由、もしくは直接広告主に販売されたもの、およびデジタル・プラットフォーム(ツール)やアドネットワークを通じて非入札方式(固定価格)で取引されるもの

    ・運用型広告:検索連動型広告、およびデジタル・プラットフォーム(ツール)やアドネットワークを通じて入札方式で取引されるもの

    ・成果報酬型広告:インターネット広告を閲覧したユーザーが、あらかじめ設定されたアクションを行った場合に、メディアや閲覧ユーザーに報酬が支払われる広告

    【参考資料】
    「2024 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」株式会社CCI/株式会社電通/電通デジタル/株式会社セプテーニ

    広告種別はコンテンツと、そのコンテンツを配信するデジタルプラットフォームの組み合わせで決定されます。さらに、デジタルの特性である双方向性やリアルタイム性を最大限活用した取引手法と組み合わせが生まれることがインターネット広告の特徴です。
    この特徴は、従来のメディアではみられることがなく、これこそが成長の源泉で、さらに広告の可能性を広げていると言ってもいいでしょう。

    2024年のDM広告費の動向

    それではDM広告費について、2024年はどのような年だったのでしょうか。
    DM広告費は「プロモーションメディア広告費」の一つの項目として記載されていて、プロモーションメディア広告費全体では16,850億円で前年比101.0%とほぼ横ばいの数字となりました。
    2024年のプロモーションメディア広告費の結果を一言で言うならば、「交通広告」「屋外広告」の各広告費が増加に転じたということでしょう。

    一方で、DM広告費は2,863億円で前年比92.3%となり、はじめて3,000億円を切りました。
    ここからは2024年のDM広告費の詳細な解説を「2024年 日本の広告費」の中で発表されているコメントを引用しながらコメントの補足説明と考察をしていきたいと思います。

    DM印刷・郵送コスト増

    まず1つ目のコメントについてです。

    ・印刷資材などの制作費高騰による広告主のマーケティング予算の見直しや、202410月の郵便料金改定などの影響もあり、前年を下回った。大量発送型のDMから、購買決定に対する効果の高いDM需要への変化により、発送数などが絞られ、減少傾向が継続している。

    印刷資材の高騰ですが、ご存じの通り印刷するためには紙、インク等の様々な資材コストに加え、工場設備やそこで働く従業員、さらに届けるための輸送関係など人件費や設備・流通関連のコストがかかります。

    印刷価格の高騰の一例を示すために、印刷には欠かせない紙の価格をKPPグループホールディングスのマーケットデータ(紙の市況)の洋紙を参考に見てみると、20252月の価格は20223月の価格と比較して約27%も高騰しています。

    【参考資料】
    KPPグループホールディングス株式会社 「マーケットデータ(紙の市況)」

    紙以外でも化学製品であるインクの価格の高騰、燃料やガソリン代価高騰、運輸業の2024年問題による輸送費の高騰など様々な要因で印刷費が高騰していると考えられます。

    また、コメントでは「郵便料金改定の影響」とさらっと書かれていますが、郵便料金の改定は1994年以来30年ぶりの改定で、定形郵便物は最大で31%、はがきは34.9%という大幅な改定の影響を受けたためDMが減少したと読み取ることができます。

    ただし、改定時期が10月で、値上げに関しては周知されていた上に、DMの企画は数か月かかることが一般的であることから、本格的に影響が出るのは2025年以降になるのではと予想されます。こちらの影響に関しては、日本郵便が例年5月に発表している「郵便物・荷物の引受物数」が公表されれば通数の増減を通して検証できると思います。

    そして、これら複合的な要因により同じ予算で発送できる通数が減ってしまった結果、通数を絞り込む、もしくは予算そのものを違うメディアへシフトさせたクライアントが増加したと考えられます。

    デジタル施策と連動したDMの需要増

    次に2つ目のコメントの前半部分です。

    ・データマーケティングを活用したパーソナライズDMや、CRM(顧客関係管理)などのデジタル施策と連動したDMへの需要は高い。

    1つ目のコメントで「大量発送型のDMから、購買決定に対する効果の高いDM需要への変化により、発送数などが絞られ、減少傾向が継続している。」とありました。

    この部分に関しては、BtoC分野に限って言えば、2005年の個人情報保護法施行以来、大量発送型ではなくレスポンス効率や結果を重視するDMにシフトしてきています。そのため、このコメントに関しては少し疑問があるところです。

    通数の絞り込みを行うためには、単なるDMの送付にとどまらず、キャンペーン全体の中で「DMをどのタイミングで、どのように活用するか」といった使いどころを見極めたうえで、シナリオ全体を設計する必要があります。

    その際、「セグメンテーション」や「パーソナライズ」などのマーケティングテクノロジーを活用し、効果的なクリエイティブを開発することに加えて、オンラインやオフラインのタッチポイントと併用・連動させることも重要だと考えられます。
    この傾向は、2024年のDM制作関連市場が1,119億円、前年比100.4%で横ばいであったことからDM広告費は絞り込んだが制作関連費はそのまま、という傾向からも推測できます。

    このことから言えるのは、これからのDM企画・制作支援には、単なる制作スキルにとどまらず、企画提案力やデータ分析力、クリエイティブ開発力に加え、セグメンテーションやパーソナライズ、MA(マーケティングオートメーション)などのテクノロジーを活用する総合的なマーケティング力が求められるということです。

    この点については、フュージョンの代表である佐々木がNHKの取材でコメントしていますので、あわせてご一読ください。

    【参考情報】
    郵便料金10月値上げへ どうなるユニバーサルサービス(NHK 2024年6月11日)

    無宛名便DMの増加

    最後はコメント2つ目の後半部分です。

    ・無宛名便DMは、不動産業などでエリアマーケティング効果が評価され、従来の折込から移行する動きもあり、増加している。

    コメントにある折込を配布するためのプラットフォームというべき、一般新聞の発行部数が2024年には約2,600万部でした。総世帯数が5,570万世帯とすれば2世帯に1世帯以下しか新聞を購読していません(当然複数の新聞を購読している企業があることを考えればリーチできる世帯はもっと少なくなると思われます)。

    その上で、新聞の購読者の年齢層を考えると、折込は特定の層しかメッセージが届かない可能性が高いと考えることが妥当で、折込を補完、もしくは代替するメディアとして無宛名便DMやポスティングを活用していると考えるのが妥当でしょう。

    特に、日本郵便のタウンメールやタウンプラスであれば、細かいエリアやマンションなどの建物を個別に指定することもでき、個人情報がなくDMを送ることができない相手にもメッセージを届けることが可能です。そのため、これらの利用が増えているのではと推測します。

    また、ポスティング市場は日本の広告費には含まれていませんが、2024年は1,481億円、前年比100.6%の市場であることが別項目で発表されています。

    【参考資料】
    一般社団法人 日本新聞協会 「新聞の発行部数と世帯数の推移」

    2025年のDMではデータとマーケティングテクノロジーがカギ

    最後に、一般社団法人 日本ダイレクトメール協会が2025110日に「ダイレクトメール展望2025」を発表しました。
    2025年のDMの展望を「パーソナライズ」、「AI活用」、「ファーストパーティー・メディア」というデータとマーケティングテクノロジーにフォーカスして、今年以降の活用に関して述べていました。

    以下「パーソナライズ」、「AI活用」、「ファーストパーティー・メディア」の展望の要約とその考察をしてみます。

    「パーソナライズ」

    • デジタルな世界の中でさえ、顧客とのより深いつながりを育むために、71%がダイレクトメールを使う
    • イメージ画像や文字をパーソナライズしているのは86%
    • 97%がパーソナライズに意味があると考え、特に 56%はパーソナライズでとても高い反応率になると回答

    パーソナライズに関しては、セールスフォース社の調査であるコネクテッドカスタマーレポートにおいても、「パーソナライズは、現代の顧客エンゲージメントの指針となります。約3 分の2 の顧客は、変化するニーズと好みに合わせて体験を進化させることを企業に期待している」との回答結果が出ています。

    根底にあるのは、自分に好ましいブランドが自分をよく理解してくれているうえで、自分のためのユニーク体験を提供してくれるコンテンツであれば、それに対しての反応率は当然いい結果を生むということです。それを実現するためには、さまざまな接点で顧客の情報を収集することが重要になります。

    【参考資料】
    コネクテッドカスタマーの最新事情 / Salesforce Research

    AI活用」

    • 通販カタログDMでは、RF分析を使ってターゲットを選定していたが、セグメント単位での分析により誤差やムダが生じていた
    • 現在ではAIを活用し、多くの属性を持つデータベースを分析して、個別の反応率を予測することで、売上が115%改善された事例がある
    • AIを使うことで、DMを送らないでも購買に至る可能性が高い人には逆にDMを送らないなど効率的なターゲティングが可能に

    最近のマーケティングにおけるAIの活用法と言えば、企画時のアイデアの壁打ちやプレゼンのまとめ、生成AIなどによるコピー開発やデザイン開発などが例に挙げられますが、展望で述べられている話はどちらかといえばデータ分析や予測性能の向上という視点で述べられています。

    従来時間がかかっていた分析からの示唆の洗い出しや、独自視点が求められる示唆から仮説の導き出し等に今後AIを活用するというのは、効果的であると同時に効率化につながる可能性が高く注目分野になるのではないでしょうか。

    「ファーストパーティー・メディア」

    • DMは主に既存顧客のLTV最大化に活用されていた
    • 現在、新規顧客の接点確保がクッキー規制やオンライン環境の過密化により一層困難に
    • 既存顧客のデータを持つ企業は、既存顧客のデータを蓄積し、それを第三者広告主向けに代行リスト(新規顧客開発のDMメディア)として提供するサービスが増加
    • 顧客の同意を得て構築した既存顧客のデータ資産は、新規顧客開発に課題を抱える広告主にとって有望な手段

    自社の保有するファーストパーティーデータを、他社から見たサードパーティデータとして活用してもらうという意味で、その上でデータ=メディアであると考えられます。

    自社データを第三者に使用許諾を与えることに関してはメリット・デメリットがあります。
    自社の顧客データを他社の情報と組み合わせることにより、自社だけでは収集できないさまざまな情報が取得でき顧客データがよりリッチになります。
    また、自社だけでは提供できない商材やサービスを特別なオファーとして提供でき顧客ロイヤルティの向上につなげることができるというメリットがあります。

    その反面、第三者が取り扱う商材、データの使われ方や顧客の扱われ方によっては、せっかく育ててきた自社のブランドの毀損にもつながり、最悪のケースではブランドからの離脱につながる可能性もあるというデメリットもあります。顧客データのメディア化にあたっては自社のビジネスモデルと合わせて慎重に検討する必要があります。

    「ダイレクトメール展望2025」を読み解くと、「2024年 日本の広告費」の1か月以上前に発表されていたのにもかかわらず、内容的には「2024年 日本の広告費」のDM広告費のコメント内容を補完、補強している内容であり「日本の広告費」と組合せて読み解くと今後のDMを活用したビジネスやマーケティングに関してより一層の理解が進みます。

    【参考資料】
    一般社団法人 日本ダイレクトメール協会 「ダイレクトメール展望2025

    ※2025年3月31日をもって、一般社団法人 日本ダイレクトメール協会は解散しました。

    これからのDMに求められるのは、マーケティングの総合力

    2024年 日本の広告費」のDM広告費の解説をしながらDMの今と今後に関して考察をしてみました。
    DM広告費は減少していますが、それは様々な外的要因による影響を受けた結果にすぎません。

    本レポートでは、単独のDM施策を最適化するだけではなく、ポスティングや商業印刷に加え、デジタルや店頭など他メディアとの組み合わせと最適化が重要であること、そしてマーケティング全体を統合的に設計・実行する総合力の必要性が一層高まっていることを強く実感する内容となりました。

    フュージョン株式会社は、全日本DM大賞を18年連続で受賞しています。
    この実績は、クリエイティブの評価だけでなく、そこに至るまでの企画・分析・データ活用・オペレーションといった各部署が一丸となってクライアント企業を支援してきた成果であり、さらにその先のレスポンスやお客様の満足度までを含めてご評価いただいた結果であると考えています。

    過去の受賞作品を含む全日本DM大賞の実績については、以下のページをご覧ください。
    フュージョン株式会社 全日本DM大賞受賞実績ページ

    フュージョン株式会社が提供するダイレクトメール改善サービスでは、全体の戦略設定から企画・制作・効果検証までをワンストップでサポートしています。
    初めてダイレクトメールの実施を検討している場合や、現在実施しているダイレクトメール施策の効果に課題をお持ちの場合は、ぜひ一度フュージョン株式会社へお問い合わせください。



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