再現性のあるマーケティング施策を成功させるには、効果的なデータ分析が欠かせません。しかし、「どのようにデータを分析すればよいかわからない」「どこから手をつければいいのか迷ってしまう」という方も多いのではないでしょうか。
特に、分析の目的を見失い、手法にばかり意識が集中してしまうと、得られた結果を効果的にマーケティングに活かすことが難しくなってしまいます。そのため、データ分析を行う際には、まず正しい考え方やスタンスを持つことが非常に重要です。
本記事では、データ分析初心者から中級者向けに、マーケティングデータ分析の基本的な考え方を解説するとともに、具体的な分析の手順や、実践時に気をつけるべきポイントについてご紹介します。
「データに基づいたマーケティング」「データ分析から始めることが重要」といった言葉を耳にすることが増えましたが、実際にマーケティングにおいてデータ分析がなぜ重要なのでしょうか?
現代の消費者は、ニーズに合う商品を見つけるために、さまざまなチャネルを通じて情報を集め、最適な購入手段を選んでいます。このように、購買行動が多様化しているため、企業は一人ひとりの消費者に対してパーソナライズされたマーケティング施策を行う必要があります。さらに、顧客の行動がアナログからデジタルに移行し、デジタル技術の発展により、今ではリアルタイムでデータを収集し、活用することが可能になりました。
マーケティングに活用できるデータはさまざまなものがありますが、たとえば以下のようなデータが挙げられます。
これらのデータを分析することで、顧客の購買行動や傾向が把握でき、さらに精度の高いマーケティング施策を実施できるようになります。
しかし、ここで注意しなければならないのは、データ分析の目的を見失わないことです。どんなに優秀な分析ツールを使ったとしても、「正解」や「答え」が自動的に出るわけではありません。データ分析はあくまで、目標を達成するための手段であり、ツールや手法に頼りすぎないことが重要です。
まずは、データ分析の考え方やアプローチ方法を整理しましょう。
分析の考え方で最も重要なことは「仮説思考」です。データの切り口は無限に存在し、すべてを網羅的に分析することは現実的に難しいため、仮説に基づいた分析が必要です。
たとえば、分析軸を「年次」「月次」「週次」で分けるか、「年代別」「性別」で見るか、また、集計項目を「売上金額」や「1店舗あたりの売上数量」で見るかなど、多くの項目が存在します。
こうした項目を全て網羅するのではなく、「どの要素が売上に最も影響を与えているか」といった仮説を立てることが、効率的なデータ分析につながります。
この例であれば、「年代別の売上金額割合が月次で変動しているのではないか」という仮説を立て、それを検証するためにデータを分析するケースが考えられます。このように仮説を立てる際には、業界に関する知識や過去の経験が大いに役立ちます。
データ分析のアプローチ方法としては、大きく分けて以下2つがあります。
A.仮説立証的アプローチ
B.仮説探索的アプローチ
A.仮説立証的アプローチとは、既存の仮説をデータを用いて検証する方法です。すでに「売上が特定の要因によって変動する」という仮説がある場合、それをデータで証明する作業が中心になります。
一方でB.仮説探索的アプローチとは、明確な仮説がない場合に、データを広範囲に探索し、新しい仮説を見つける方法です。まだ仮説が存在しない場合や、仮説が薄い場合は、このアプローチを使用して、データから傾向を見出すことが重要です。
例えば、「夏に若年層が特定の商品を多く購入する」という仮説がすでにある場合、仮説立証的アプローチを用いてデータを探すのは比較的容易です。しかし、仮説がない状態で同じ結果にたどり着くためには、仮説探索的アプローチを駆使してデータを丹念に調べる必要があり、時間がかかることもあります。
仮説探索的アプローチのメリットとしては、思いがけない結果にたどり着く可能性が高い点が挙げられます。これにより、新しいインサイトが得られ、革新的なマーケティング施策の発見につながることもあるでしょう。
アプローチ方法 | メリット | デメリット |
A.仮説立証的アプローチ | 分析で出すべきゴールが分かりやすい | 自分で立てた仮説の域を超えた結果を出しにくい |
B.仮説探索的アプローチ |
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次に、マーケティングにおけるデータ分析の手順について具体的に見ていきましょう。データ分析は大きく分けて、次の3つのステップで進行します。
①現状把握分析
②課題抽出・施策検討
③効果検証
それでは、それぞれのステップについて詳しく解説していきます。
最初に、現状のデータを分析して把握することが重要です。この段階では、データ全体を把握しながら、カテゴリ別、商品別、チャネル別、時系列などの軸を組み合わせて分析を行います。ここでは、売上金額、数量、リピート率、RFM分析、デシル分析などの基本的な分析手法を使用することが多いです。
例えば、デシル分析を用いて、既存顧客を購入金額順に10段階に分類することで、売上構造を明確にし、優良顧客層を特定することができます。これにより、関係者全員が共通の認識を持つことができ、次の施策に進むための基盤が整います。
CRM(顧客関係マネジメント)におけるデータ活用時の注意ポイントについては、以下の記事で解説しています。
次に、課題を抽出してマーケティング施策を検討するフェーズに進みます。この段階では、まず仮説を立て、それを立証するためのデータ分析を行います。
通常は、フェーズ①の現状把握分析やビジネス経験を元に、仮説立証型アプローチを活用します。ただし、仮説が明確でない場合には、仮説探索型アプローチを取り入れてデータから新たな仮説を見出すこともあります。
例えば、「3回購入した顧客はリピーターになる確率が高い」という仮説を立てた場合、その仮説をデータで検証します。仮説が立証されたら、1回または2回購入した顧客に対してクーポン付きのメルマガを送るなどの施策を検討できます。
この段階では、施策を検討する際に効果検証を見据えた設計を行うことが重要です。後の効果検証で適切な評価を行うためにも、施策実施前から計測の準備を整えておく必要があります。
詳しくは、以下の記事で解説しています。
最後のステップでは、実際に行ったマーケティング施策の効果を検証します。ここでは、施策が成功したかどうかをデータで評価し、成功要因や失敗要因を明確にします。たとえば、ターゲット選定やクリエイティブに問題があったのか、それとも他の要因が影響したのかを細かく分析し、次回以降の施策改善に役立てます。
マーケティング施策は、実施しただけで終わりではありません。必ず効果検証を行い、次のデータ分析と施策改善に活かすことが、持続的な成果を上げるための鍵となります。
フュージョンでは、マーケティング効果検証の精度を上げるためのセルフチェックシートを用意しましたので、ぜひご活用ください。
現代の消費者は、複数のチャネルを活用して情報を収集し、購買に至ることが増えています。このため、企業は個々の顧客に合ったパーソナライズされたマーケティング施策を実施する必要があります。マーケティング施策の成功には、顧客データを分析し、それに基づいたアプローチが欠かせません。
ただし、データ分析を始める前に重要なのは、最終ゴールまでの道のりを整理することです。
仮説の精度を高めるためには、トライ&エラーを繰り返しながらより優れた仮説や施策につなげることが求められます。データ分析自体が目的ではなく、分析結果を基にして次のアクションに結びつけることが最も重要なポイントです。分析の目的を見失わないよう、常にゴールを意識して進めていきましょう。
データ分析中に目的を忘れてしまうことはよくありますが、最初に立てたマーケティングの目的に立ち返ることで、アクションを成果に結びつけやすくなります。時折、自分がどこに向かっているのかを確認し、方向性を再確認することが大切です。
フュージョン株式会社では、マーケティングにおけるデータ分析はもちろん、施策設計から実施、そして効果検証まで、トータルでサポートいたします。BIツールを活用して、現状把握分析の再現性を高めるサポートや、フェーズ②の課題抽出においてクラスタ分析などの高度な分析手法を取り入れることも可能です。
データに基づいたマーケティング施策を効果的に展開したいとお考えの方は、ぜひ一度お問い合わせください。