今回のコラムでは、カスタマージャーニーマップの作り方やマーケティングでの活用方法を詳しく説明します。また、すぐに活用できるカスタマージャーニーマップ設計テンプレートをご用意しました。CRMの見直しを考えている方、これからCRM設計を考えている方の最初のステップとして、ご活用いただければ幸いです。
ペルソナから設計するカスタマージャーニーマップ(CJM)シート 資料ダウンロードはこちら
カスタマージャーニーマップ(CJM:Customer Journey Map)とは、顧客とサービス・商品との接点、およびそこでの体験・感情を時系列に並べ視覚化したものを指します。例えば、下記の図はスイーツ系通販業のカスタマージャーニーマップです。
カスタマージャーニーマップはあくまでも「理想の購入プロセス」を図にまとめたもののため、作って終わりではなく、実際の顧客行動や実施している施策と照らし合わせてメンテナンスしながら活用していくことが重要です。
カスタマージャーニーマップを作成すると、顧客の態度変容プロセスの全体像を把握しやすくなります。ここからは、具体的にどのようなメリットがあるか詳しく見ていきましょう。
顧客が自社商品を認知して購入に至るまでには、興味を持つ、情報収集・検討を行う、などのプロセスが存在します。顧客がどのような接点で情報に触れているのか整理できていなければ、適切なマーケティング施策をおこなうことは難しいでしょう。
カスタマージャーニーマップは、顧客の理想の態度変容プロセスを表にまとめたものです。そのため、顧客との接点や時系列ごとの心理状況の仮説が立てやすくなり、顧客との接点ごとに適切なマーケティング施策を実行しやすくなります。
カスタマージャーニーマップは、購入までの理想のプロセスを可視化しているため、関係部署との共通認識が持ちやすくなるのもメリットのひとつです。関係者が多い場合は、目指す目標に対する認識のズレが発生し、施策に一貫性がなくなるケースがあります。
カスタマージャーニーマップを用いることで、ターゲットや目的を明確にできるため、各部署での認識にズレが生じにくく、精度の高い施策を実現できます。
カスタマージャーニーマップは前述した通り、自社にとって理想的な購入プロセスを可視化したものであるため、実際の顧客行動とはギャップが生じる場合がほとんどです。
実際にカスタマージャーニーマップを活用していくと、「理想の顧客行動と異なる部分」=「現状の課題」が可視化できるでしょう。また、複数の施策を検討している場合、現状の課題が明確であれば、施策の優先度を適切に判断できるメリットもあります。
カスタマージャーニーマップは一度作成することで、長く活用し続けることができるツールです。しかし、どのように活用するか、作成する目的をあらかじめ明確にしておくことは重要です。
カスタマージャーニーマップを作成する場合は、実際に着手する前に以下の例のような目的を定義し、共有する関係者へも周知するようにしましょう。
<カスタマージャーニーマップを作成する目的の例>
ここからは、実際にカスタマージャーニーマップを作成する方法を、大きく6つのステップに分けて解説します。作成はPCでも可能ですが、今回は複数人でアイデアを出し合いやすいアナログでの方法を紹介します。
カスタマージャーニーを作成する際は、できるだけ部署や属性の異なるメンバーを集めましょう。人数は3〜5名がおすすめです。
また、準備するものは以下の通りです。
大きな模造紙には、「カスタマージャーニーマップ作成シート」のフレームを書き出しておくとスムーズに進行できます。以下にテンプレートを用意していますので、ぜひご活用ください。
【ペルソナ〜カスタマージャーニーマップ(CJM)設計シート】をダウンロードする
◆ペルソナとは・・・自社商品の象徴的・代表的なユーザー像をモデル化したもの
まず、顧客のペルソナを設定します。
ターゲットとペルソナの違いに注意し、「ペルソナ設計シート」にできるだけ具体的に書き出しましょう。
次に、CJMを作成する目的に応じて、スタートとゴールを設定しましょう。
自社の製品・ソリューションとペルソナの感情を整理します。弊社のテンプレートを利用する場合は、「テーマ記入シート」を使うと便利です。
例えば、新規顧客獲得が目的なら、サービス認知がスタート、初回購入がゴールになります。また、顧客育成(F2転換など)が目的であれば、初回購入がスタートで、2回目購入がゴールになるでしょう。
ペルソナが、スタートからゴールまでにとると思われる行動を書き出します。
ここでのポイントは、できるだけ具体的に書き出すことです。
例)× ネットで検索する
〇 スマホで「ハンバーグ レシピ」と検索する
イメージがつかない場合は、街頭でペルソナに近い人物を見つけ、その行動を観察することでサンプルを得ることもできます。アンケートなどを利用して既存顧客から情報収集する方法もおすすめです。
ECなど、顧客の行動プロセスにおいて自社サイトが大きなタッチポイントとなっている場合には、アクセス解析も顧客行動を知るための重要なデータソースとなります。
また、統計データや外部データを活用し、デモグラフィック属性ごとの傾向を把握することも有効です。
それぞれの顧客行動に対して、顧客接点として自社の「誰」もしくはどの「ツール」が対応するのかを書き出します。対応するのが人物であれば、社内のどの部署、ポジションの方がどのアイテムで対応するのかを明記するようにしましょう。
例)【顧客行動】店舗でカタログをもらう
→【顧客接点とアイテム】店舗スタッフがサービスカウンターでカタログを手渡し
対応するのがツールであれば、具体的なアイテムに落とし込んだ形まで細分化してください。
例)【顧客行動】スマホで「ハンバーグ レシピ」と検索する
→【顧客接点とアイテム】自社サイト内のレシピページに飛ぶ
それぞれの顧客接点で、ユーザーの感情や考えていることを推測し、カスタマージャーニーマップに記入します。
例えば情報収集のプロセスで、「様々な媒体に接触しているものの、なかなか次のプロセスに進まない」という行動が見られたと仮定します。この場合は、「何を選んでいいかわからない」「だんだん考えるのが面倒になってきた」というような、ネガティブな思考になっていることが想定されるでしょう。このようなネガティブな思考や感情も漏らさずに書き出していくことが大切です。
感情を付箋に貼り出すときは、上からポジティブ、ニュートラル、ネガティブの順で貼り出していき、その動きを矢印で図解すると、CJMを見たときに直観的にユーザーの感情を把握できます。
顧客感情が上がっているところ、下がっているところに対して何ができるかを考え、具体的な対応策として書き出していきます。そして、顧客の行動・接点とアイテム・感情を行ったり来たりしながら、その対応策が十分であるかを話し合います。
以上で、基本的なカスタマージャーニーマップが作成できました。
カスタマージャーニーマップの縦軸と横軸を一望すると、各プロセスにおける課題とそれに対する施策が見えてくるでしょう。
◆6つのステップを通して、CJM作成時で大事なこと
また、BtoB向けのカスタマージャーニーマップの作成方法は以下の記事で詳しく解説しています。
【BtoB事例】カスタマージャーニーマップ(CJM)作成の進め方
カスタマージャーニーマップで挙げた自社対応策は重要なものばかりですが、全ての策に同時に手を打つことは現実的ではありません。
ここからは実際に施策を検討する際に、カスタマージャーニーマップをどのように活用するか、ポイントを紹介します。
比較検討プロセスにおいて、ペルソナが「本当にこの商品が必要だろうか」という不安を抱いているとします。カスタマージャーニーマップを見れば、その時によく接触するデバイスやメディアがわかります。そこに対して不安を解消するようなコンテンツやサービスを提供すると、顧客感情をポジティブに引き上げ、離反を防止することにつながります。
例えば、顧客の離反が止まらない課題を抱えながら、対応策として新規顧客獲得のプロモーションを打っても、穴の開いたバケツに水を注ぐようなものです。まずは穴をふさぎ、それから新しい水を注ぐように、緊急度の高い離反対策を優先的に実施します。
また、対策案の中には大掛かりなシステム開発が必要なものや、他部署と調整が必要なものもあるでしょう。着手する難易度が低い策から取り組むことも、着実に実行する方法です。
そして対応策を実施した後には、実際に課題解決につながったのかを検証し次に取り掛かる、というPDCAサイクルを回していきましょう。
カスタマージャーニーマップは定期的に見直して、顧客との接点や施策が古くなっていないかを確認することが大切です。カスタマージャーニーマップを見直す際は、最初の作成ステップである顧客の理想の行動と顧客の感情を中心に見直すことが効果的です。
現代は外部環境の変化が著しいため、今までの知見・経験に基づいたアイデアの出し合いだけでは足りません。顧客はどのような課題を抱え、どのような行動を取るのか、そして、どのような気持ちになるのか仮説を洗い出すことが必要です。
そのためには、事実として今起きていることを情報収集し、整理する必要もあるでしょう。
特に、顧客の行動については、今まで以上に丁寧に洗い出し咀嚼して理解することで、新しく増えた顧客の行動が発見できるかもしれません。また、各行動での接点で今まで意識してこなかったものも見つかる可能性があります。
顧客の行動が多いほど感情の動きが増え、接点が増えるので、ぜひ一度見直していただきたい部分です。顧客行動の見直しによって、感情の動きと顧客との接点も増えますが、それらの数が多いほど、すべてに対策を打つことは難しくなります。そのため、特に感情が落ち込むときを狙って具体的な施策を打つことがポイントです。
(事例)顧客の購買行動に合わせたダイレクトメール施策で売上アップに貢献(株式会社ケイシイシイ様(小樽洋菓子舗 ルタオ))
カスタマージャーニーマップの見直しを通して、現在のペルソナ像と未来のペルソナ像のギャップを明確にし、未来のペルソナ像に近づくための具体的な施策を含めたマーケティング活動にしていくことが重要です。
私たちはカスタマージャーニーマップをCRM設計のスタートと位置づけ、顧客像を明確にし最適なコミュニケーションを図り、顧客のLTVを最大化するための「航海図」のようなものと考えています。
テクノロジーの進化とコロナによる消費行動の変化により、企業と顧客の接点はますます多様化、複雑化しています。顧客は、店舗にあるチラシやECサイトのバナー、SNS広告、テレビCMも、全て同じ1企業の発信、として捉えています。そのため、EC担当部署はEC顧客の動向を見る、店舗の担当者は来店客を見る、といった垣根をなくし、企業全体として顧客を捉えることが重要です。
過去にカスタマージャーニーマップを作成したときよりも、新しい顧客接点が増えているかもしれません。これを機に見直してみてはいかがでしょうか?
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フュージョン株式会社では、カスタマージャーニーマップの作成に関するご支援も行っております。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。