マーケティング戦略において、マーケティング対象者となる顧客を理解することの重要性は誰しもが認識しているところです。しかし、ターゲットとなる顧客像が漠然としていると、効果的な施策を生み出すことは難しいでしょう。
そこで今回は、届けるべきターゲットを明確にするために有効なペルソナ設計について、ターゲットとの違いに触れながら解説します。
ペルソナとは
ペルソナは「仮面・人格」という意味のラテン語が由来です。マーケティング用語として使われる際は、特定の商品・サービスの利用者の属性・ライフスタイル・趣味嗜好などの特徴をイメージできるように、具体的な条件を設定した顧客像を指します。
CRMに取り組むにあたってペルソナを設計することはとても重要です。
ペルソナ設計を通じて顧客理解を深め、顧客視点に立ったアプローチを実現することで、顧客満足度、ロイヤルティアップ、売上向上など、さまざまな成果につながります。
ターゲットとの違いや使い分け
ペルソナと似た用語にターゲットがあります。混同されがちなので違いを簡単に説明します。端的に言うと両者の違いは、具体性と設計における起点です。
マーケティングにおけるターゲットは、商品やサービスの購入可能性が高い顧客層を基本的な属性や行動に基づいて分類したものです。その分類は過去の知見や経験に基づきます。そのため、ターゲットは、過去に実施したビジネスや施策の延長線上にあると言っても過言ではありません。そういう意味でターゲットは、ペルソナよりも抽象的でありやや企業起点での視点・発想に基づいていると言えるでしょう。
一方、ペルソナはターゲット層の中でその商品やサービスを利用してほしい具体的な人物像を設計します。そのためペルソナを設計するためには、人物のデモグラフィック情報(年齢・性別等の事実情報)も必要ですが、それ以上にサイコグラフィック情報(趣味、嗜好、価値観等の心理的情報)や行動情報(購買行動・日常行動等)が重要です。そしてペルソナは、企業から見て自社の商品、サービスを都合よく受け入れてくれる顧客像を思いつきや妄想で作るものではなく、定量・定性分析により入手した事実や裏付けに基づいて設計します。
以上のことから、ペルソナは特定の条件で分類された顧客層を指すのではなく、より具体的な顧客像であることがわかります。そしてそれは、顧客起点の視点・発想で設計するものと言えます。
次に両者の使い分けについて見ていきましょう。
ここまで説明した両者の違いを踏まえると、使用に適したシーンは異なってくると想像できるのではないでしょうか。
ターゲットを活用するシーンとしては、すでに商品やサービスを提供していて、既存のマーケットにまだ成長余力があると見込んでいる場合です。現在進行系で利用している顧客と同じような属性を持つ層をターゲットに設定し、商品やサービスを利用してもらうようにアプローチするのが良いでしょう。
一方、既存の商品やサービスに新しいマーケットの開拓が必要な場合や、新規の商品やサービスを市場に投入する場合は、ターゲットではなくペルソナを活用する方が良いでしょう。商品やサービスを新たに利用してもらいたい人物像を具体的に作成し、カスタマージャーニーマップで行動や感情、接点を洗い出し、その上で使用して欲しいその人物に対して施策を実施します。
このように、ターゲットは既存のマーケットを拡張する場合に有効で、ペルソナは未開のマーケットを開拓する場合に有効だと言えます。
まとめ:「ターゲット」と「ペルソナ」の違い | |
ターゲット | ペルソナ |
|
|
ペルソナ設計のメリット
ここまではペルソナの概要について説明してきました。ここでは、ペルソナを設計するとどのようなメリットがあるのかを紹介していきます。
具体的には以下のようなメリットが挙げられます。
顧客視点に立って施策を考えることができる
職業やライフスタイルのような具体的な想定をすることで、その顧客のニーズや抱えている課題を解像度高く想像でき、そこに刺さるようなメッセージやコンテンツにつなげていけるでしょう。顧客目線に立ったアプローチは、顧客満足度向上や顧客ロイヤルティの強化にもつながっていきます。
CRM活動の効率化を図ることができる
ペルソナを明確にすることで、誰に対して、どのようなメッセージを伝えるべきかが明らかになり、施策の無駄打ちを削減することに繋がります。顧客になる見込みが高いマーケティング対象者にのみリソースを投入することで、CRM活動の効率化を図ることができます。
チーム全体で共通認識を持つことができる
チーム全体でペルソナを共有することで、顧客に対する共通認識を持つことができ、担当者間で一貫性のあるコミュニケーションを取ることができるようになります。また顧客像が統一されているので、サービス開発から施策の実行にいたるまで、各タイミングでペルソナを軸に判断していくことができるでしょう。
ペルソナ設計は、CRM戦略設計のプロセスにも含まれ、顧客の解像度を高める上で取り組むべきものです。CRM戦略の位置づけや進め方については、別記事「CRM戦略とは?重要性・メリットとCRM戦略設計の4ステップを解説」をご参照ください。
ペルソナ設計の具体的な方法
ここからはペルソナを設計するための具体的な方法を紹介していきます。
1. 情報収集
ペルソナ設計の第一歩は、ターゲット顧客に関する情報を収集することです。代表的な情報収集方法を紹介します。
アンケートやインタビュー
新商品や新サービスを作る際、大まかなターゲットは決まっていることが大半だと思います。対象のターゲット層に対してアンケートやインタビューを行い、ユーザーの基本的な情報や生の声を収集することは非常に大切です。
流れとしてはアンケートで熱心なユーザーを特定し、インタビューで深堀りしていきます。
母集団形成のためにWebアンケートを活用し、SNSでの拡散や回答者への特典付与などを用いる工夫をするとよいでしょう。
データの活用
アクセス解析や顧客データの分析もペルソナ設計には非常に有用です。アクセス解析からは、顧客のサイト訪問数、閲覧したページ、滞在時間、離脱率がわかります。顧客データの分析からは顧客の購入頻度、購入金額、購入時期、また購入した顧客の属性の共通点などが見えてきます。
こういったデータを基に、実際に商品やサービスに興味がありそうな顧客像を固めていくことができるでしょう。
ペルソナ設計をするときは、憶測は避け客観的事実に基づかなければなりません。担当者あるいは企業にとって都合の良い顧客像を想像するのではなく、納得感のあるペルソナを作るために上記のような情報収集やデータの活用が必要なのです。
2. ペルソナの詳細設計
ある程度情報が収集できれば、実際にペルソナを設計していくことになります。設計する際には、下記のような項目を設定していくと顧客像がより明確化されます。
- 名前、年齢、性別、職業、家族構成、収入など、基本的な属性情報
- 商品やサービスに対するニーズ、課題、価値観、ライフスタイル
- ペルソナの性格、行動パターン、思考パターン
- ペルソナの目標、夢、不安、悩み
- ペルソナの言葉遣い、服装、趣味嗜好
このように基本的な情報から心情、ライフスタイルなど、実在する人物のように詳細なプロフィールを設定しましょう。さらにペルソナの背景や目標、課題などを設定し、ペルソナにストーリーをもたせることで、よりリアルな人物像としてイメージしやすくなります。余裕があればペルソナを写真やイラストなどでビジュアル化してみるのもよいでしょう。そうすれば、チームメンバー間でさらに共通認識を持ちやすくなります。
また、設計したペルソナを定期的に見直すことも大切です。一度設計したペルソナがいつまでも効果的であるとは限りません。市場環境や顧客のニーズは常に変化していくものです。時間が立つにつれて、ペルソナ設計に基づく施策の効果が薄くなっているような場合は、その変化にあわせてペルソナの見直しを検討するとよいでしょう。
カスタマージャーニーとの関連性
カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを購入するまでの過程を可視化したものです。ペルソナ設計をカスタマージャーニーと組み合わせることで、顧客体験をより密度の濃いものにすることができるでしょう。
ペルソナ設計によって、ターゲットとなる顧客像が明確になり詳細な顧客像を構築できます。一方、カスタマージャーニーは、顧客が商品やサービスを購入するまでの過程を可視化します。
ペルソナの視点に立つことで、顧客が各段階で抱える感情や課題をより具体的に理解することができ、それぞれの段階で適切なメッセージやコンテンツ、コミュニケーション方法を検討することができます。
ペルソナ設計を軸にカスタマージャーニー全体を設計することで、顧客の属性や行動に合わせた顧客にとって意味のある体験を提供することができるでしょう。
フュージョンではペルソナから作るカスタマージャーニー設計シートを公開しているので、ぜひご活用ください。
ペルソナ設計・カスタマージャーニー設計のご相談はフュージョンへ
フュージョン株式会社では、30年以上にわたり、CRM支援サービスとして現状分析による現状把握から戦略策定、実際の施策の開発、実際の運用支援までの統合的なサポートを通じ多くのクライアント企業を支援してきました。
クライアント企業が保有するデータを基に顧客像を可視化し、ペルソナ設計からその後のCRM戦略の設計・改善をすることも得意としています。
ご興味のある方は、ぜひ一度フュージョン株式会社へお問い合わせください。