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    ファンづくりの科学的マネジメント-三階層6つの法則による顧客ロイヤルティの可視化

    2024-12-02

    ファンづくりの科学的マネジメント-三階層6つの法則による顧客ロイヤルティの可視化

    今回の記事は、ISラボ渡部様による寄稿記事です

    顧客ロイヤルティは企業にとって長期的な成長の礎となる重要な概念です。この記事では、ロイヤルティの定義から、そのドライバーとなる要素、さらには三階層・六つの法則を用いたロイヤルティの可視化手法について解説します。

    3つのロイヤルティとロイヤルティの定義

    顧客ロイヤルティは、経済ロイヤルティ・行動ロイヤルティ・心理ロイヤルティの三つの観点で捉えることができます(図1参照)。

    1. 経済ロイヤルティ:購買量や取引額を基準に測定されるもので、収益に直結する指標です。頻繁な購買や高額な購入といった行動が該当します。

    2. 行動ロイヤルティ:企業との接点やお客様の行動に基づいて定義されます。イベント参加、情報共有、口コミなどが行動ロイヤルティにあたります。行動ロイヤルティはさらに量的視点で評価する顧客行動と、行動の過程や結果における顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)の質的視点に分けられます。

    3. 心理ロイヤルティ:お客様の感情に基づくロイヤルティです。ブランドに対する信頼、愛着、応援したいという気持ちなど、非常に感情的な側面がこのロイヤルティの核となります。

    これら三つの視点はそれぞれが独立して存在するものではなく、互いに影響を与え合い、総合的な顧客ロイヤルティを形成します。そして、筆者は、顧客ロイヤルティの定義について、心理ロイヤルティを重視し以下としました。

    ブランドや商品に対して、信頼や愛着をもって末永く関係行動し続けたいと思う気持ち

    ロイヤルティマネジメントというと、企業は経済ロイヤルティの指標だけでマネジメントしようとすることが多いですが、それは極めて企業目線でありお客様目線ではありません。お客様視点でマネジメントするには、心理ロイヤルティを最上位とした指標でマネジメントする必要があります。
    この関係行動には、購買や契約、サービス利用、イベント参加、情報収集、口コミなどさまざまな活動が含まれます。重要なのは、ロイヤルティとは単なる購買頻度や購入金額だけではなく、お客様がブランドや商品に対してどのような気持ちを抱いているか、その感情が持続するかどうかという心理的な側面も大きく関与しているという点です。

    図1 3つのロイヤルティ

    【参考コラム】
    顧客ロイヤルティとは?3つの観点や可視化・向上させる方法を解説

     

    ロイヤルティドライバーとは

    ロイヤルティドライバーとは、顧客ロイヤルティを左右する具体的な要素を指します。ロイヤルティドライバーは大きく二つに分類されます。

    • 基本価値ドライバー:商品やサービスの品質や機能、デザインなど、顧客が直接的に求める価値を提供する要素

    • 体験価値ドライバー:店舗での接客やウェブサイトでのコンテンツ、アフターサポートなど、顧客体験を通じて提供される価値の要素

    例えば、アパレルショップでの「試着の体験」は、商品のデザインや品質と同様に重要です。満足度の高い試着体験が心理ロイヤルティの向上に寄与し、その結果、ブランドへの愛着が増し、長期的なロイヤルティの強化につながります。

    ロイヤルティの向上には、各接点での満足度を高めることが重要であり、ロイヤルティを支える要因となり満足度を評価する単位がロイヤルティドライバーです。ロイヤルティドライバーを定義する際には、以下の二つの視点が重要です。

    1.お客様視点でなくてはいけない

    ロイヤルティドライバーは、お客様がその満足度を正しく評価できる単位で定義する必要があります。企業側は細かい単位で満足度を測りたくなることが多いですが、あまりに細かい単位ではお客様が実際に評価できないため、正確な測定ができません。
    例えば、「接客態度の10の要素をそれぞれ評価する」といった詳細な分析は、顧客にとっては難解であり、評価にばらつきが生じます。そのため、お客様が直感的に理解しやすく、評価しやすい単位でロイヤルティドライバーを設定することが必要です。

    2.企業が施策を打てる範囲でなくてはいけない

    ロイヤルティドライバーは、企業が具体的な施策を講じることができる単位で設定する必要があります。抽象度が高すぎると、責任の所在が曖昧になり、効果的な改善策を実行することが難しくなります。
    例えば、「購買体験」という広範な定義よりも、「店員の接客態度」や「商品の見やすさ」といった具体的なドライバーに分けて、それぞれのドライバーに対して改善策を実施できるようにすることが重要です。

    このように、ロイヤルティドライバーを定義する際には、お客様視点での評価のしやすさと、企業が施策を打てる具体的な範囲の両方を考慮することが求められます。この二つの視点を適切に組み合わせることで、最適な単位でロイヤルティドライバーを定義し、顧客満足度の向上に効果的に取り組むことができます。

    図2が食材系通販事業、図3がSaaS事業でのロイヤルティドライバーの例です。
    図2食材系通販事業でのロイヤルティドライバー_図3SaaS事業でのロイヤルティドライバー

    ロイヤルティの三階層と六つの法則

    ロイヤルティの可視化を進めるためには、その構造を理解し、三階層・六つの法則に基づいて評価を行うことが効果的です。三階層とは経済ロイヤルティ、行動ロイヤルティ、心理ロイヤルティの視点であり、六つの法則はこれらの視点に基づいた顧客ロイヤルティの形成・維持に必要な要素です。以下に、それぞれの法則について詳細に紹介します。

    法則1:心理ロイヤルティは複数のロイヤルティドライバーから形成される

    お客様の心理ロイヤルティは、商品のデザインや店舗での接客など、複数のロイヤルティドライバーの満足度によって決まります。
    例えば、商品の品質、価格、顧客対応など、複数の要素が総合的に影響し合い、心理ロイヤルティを高めます。

    法則2:ロイヤルティドライバーの影響度は異なる

    各ロイヤルティドライバーが心理ロイヤルティに与える影響度は異なります。
    例えば、アパレルショップで「試着」の満足度が「店内ディスプレイ閲覧」よりも心理ロイヤルティに与える影響が大きいといった具合です。影響度の高いドライバーを見極め、それにリソースを集中させることがロイヤルティ向上のための重要な戦略となります。

    法則3:体験するドライバーの違い

    顧客ごとに体験するドライバーには違いがあります。
    例えば、すべての顧客が「店舗のディスプレイ」を目にするわけではなく、試着を体験する顧客も限られています。そのため、各ドライバーの体験率を定量化する必要があります。顧客がどの体験をしたかを把握し、それに応じたアプローチをすることが、ロイヤルティ向上の鍵となります。

    法則4:ポジティブ・ネガティブ体験から形成されるドライバー満足度

    ロイヤルティドライバーの満足度は、複数のポジティブな体験やネガティブな体験から形成されます。ポジティブ体験が多ければ満足度が向上し、ネガティブ体験が多ければ満足度は低下します。
    例えば、良好な接客や迅速な問題解決はポジティブ体験として満足度を向上させ、一方で商品の不具合や不親切な対応はネガティブ体験として満足度を低下させます。

    法則5:体験ごとに心理ロイヤルティへの影響度が異なる

    ポジティブな体験でも、影響度の大きさは異なります。
    例えば、「店員の気配りが素晴らしかった」という体験は、「店内の照明が明るく気持ちよかった」という体験よりも、心理ロイヤルティに対する影響度が大きくなります。このように、各体験の心理ロイヤルティへの影響度を把握し、それを基に優先順位をつけて改善を図ることが求められます。

    法則6:セグメントごとに異なる心理ロイヤルティスコア

    顧客セグメントごとに、心理ロイヤルティや各ドライバーの満足度は異なります。年齢やライフスタイル、利用する商品などによって、どのロイヤルティドライバーがどの程度重要かが変わるため、セグメントごとの分析が必要です。
    例えば、若年層の顧客には商品デザインが重要であり、中高年層の顧客にはアフターサポートの質が重要である場合があります。このように、ターゲットセグメントごとのニーズに応じた戦略を立てることが不可欠です。

    ロイヤルティ可視化の意義

    ロイヤルティの可視化は、ファンづくりのためのマネジメントにおいて非常に重要です。多くの企業では、購買金額や頻度に基づいた経済ロイヤルティに重きを置きがちですが、顧客との長期的な関係構築を目指すためには、心理ロイヤルティの向上が欠かせません。そのためには、顧客がどのように感じ、どのような行動を取っているかを定量化し、見える化することが求められます。

    特に、心理ロイヤルティをKGIKey Goal Indicator)として設定し、その構造を六つの法則に基づいて可視化することで、ファンづくりのための具体的なアプローチが可能となります。企業における部門ごとの視点の違い(例えば、CFOが経済ロイヤルティを重視するのに対し、CCOが心理ロイヤルティを重視する)も理解し、適切な指標を設定することが重要です。

    心理ロイヤルティの可視化により、顧客がブランドに対して抱く感情を数値化し、企業がその情報を基により効果的な施策を講じることができます。
    例えば、顧客からのフィードバックを分析し、ポジティブな体験を増やす施策を強化したり、ネガティブな体験を減らす改善を行うことが可能です。また、顧客セグメントごとの違いを把握することで、よりパーソナライズされたアプローチが可能となり、結果的に顧客満足度とロイヤルティの向上につながります。

    おわりに

    顧客ロイヤルティの向上は、単なる購買促進にとどまらず、顧客との強固な信頼関係を築くことでブランド価値を高め、持続的な成長を可能にします。本稿で紹介したロイヤルティの三階層と六つの法則を理解し、それを基にした顧客ロイヤルティの可視化手法を導入することで、企業は顧客の感情や行動を的確に捉え、より効果的なマーケティング戦略を展開することができるでしょう。

    さらに、心理ロイヤルティの向上を目指した施策を講じることで、顧客が単なる購買者からブランドのファンへと変化し、企業に対する支持を持続的に強化することが期待されます。顧客との関係が深まることで、競合他社との差別化が図られ、顧客の生涯価値(Customer Lifetime Value)が向上し、結果的に企業の成長に寄与します。ロイヤルティ向上活動が、ただの顧客満足向上活動にとどまらず、長期的なブランドのファンづくりに繋がることを願っています。

    顧客ロイヤルティ可視化サービスに関する詳細は、サービス資料にてご確認ください。

    2024年10月8日の株式会社ネオマーケティングとの共催ウェビナー「購買者づくり」で終わらせない「心理ロイヤルティの定量化で実現する本当のファンづくり」でも、今回の内容について解説しています。
    動画もあわせてご覧ください。

    ウェビナー動画「心理ロイヤルティの定量化で実現する本当のファンづくり」

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