CRM戦略におけるDMの役割は、1to1コミュニケーションを通じてお客様のロイヤルティを高め、売上アップや収益最大化につなげることです。
特に、BtoCビジネスでリピート購入を促すことで安定的な売上の獲得が見込める業界・商材においては、お客様に合わせたメッセージやオファーを、お客様にとって最適なタイミングで提供することでDMの成果アップにつながります。
DMで成果を上げるためには、施策設計の最初の段階で、DMのターゲットを絞った上でDMで果たしたい目的を明確にすることが非常に重要です。
例えば優良顧客をターゲットにした場合、優良顧客に初めてアプローチする施策なのか、優良顧客の会員数アップを目的にするのか、それとも優良顧客の売上アップを目指すのかなど、目的が変わればDMで訴求する内容や求めるアクション(ゴール)が変わります。
そこで今回のコラムでは、これまで一斉送付のDMしか実施していなかった企業が、優良顧客をターゲットに実施したDMで売上を伸ばした成功事例をご紹介します。
今回ご紹介する事例は、スイーツが人気の「LeTAO(小樽洋菓子舗ルタオ)」というブランドを展開する、株式会社ケイシイシイ様です。
クライアントの状況
ケイシイシイ様では、「LeTAO(小樽洋菓子舗ルタオ)」というスイーツブランドを展開し、販売チャネルには店舗と通販があります。
通販担当チームでは、ミッションである「通販顧客の売上アップ」を達成するため、リピート購入を増やすことを目標にしていました。しかし、長年CRMに課題を感じており「顧客の購買行動や心理に添ったアプローチができていないのでは?」という疑問を感じていました。
そこで、「優良顧客に対して、新たな施策を実施すると売上アップにつながるのでは?」という仮説を立て、優良顧客向けの施策に新しくチャレンジすることにしました。
まずは優良顧客を定義する
DM制作に入る前に行ったのは、どんなお客様が優良顧客なのか定義することでした。
以前から商品カタログを定期的にDMで送っていましたが、ターゲットを絞って施策を実施したことはなかったため、通販顧客にどんなお客様がいるか購買データを見て一定の条件で分類し、顧客ステージとその定義を決める必要がありました。
そこで、ケイシイシイ様から顧客購買データをお預かりし、その購買パターンや顧客の特性など、CRMに関する取り組みの現状を把握する基礎分析を行いました。
分析の切り口は大きく下記の3点で、おおよそ過去3~5年分の実績推移を可視化します。
・売上の構成要素を把握する「売上構造分析」
・自社顧客の状況を把握する「顧客分析」
・顧客の商品購入状況を把握する「購買分析」
これらの顧客データ分析結果から購買パターンを分析し、優良顧客の条件を定義しました。この条件は、この後DM実施時にDM送付ターゲットの抽出条件として使用します。
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そして、ここで定義した優良顧客をターゲットに3つのDMを実施しました。
DMの成功を左右する4つのポイント「ターゲット」「クリエイティブ」「オファー」「タイミング」の軸で各DMを掘り下げます。
DMの成功を左右する4つのポイントについては、下記のコラムで解説しています。
▼優良顧客をターゲットにした3つのDM(まとめ)
成功事例①:優良顧客施策の「立ち上げ期」のDM
送付対象者は、基礎分析による顧客ステージ分類で新たに「優良顧客」と定義した、年間の購入金額・回数が多いお客様です。
クリエイティブとしては、DMが届いたお客様に「あなたが企業にとって特別な存在である」という想いを伝えるため、優良顧客であることを証明する会員証の位置づけのカードを封入しました。
DM送付の結果、送料無料特典の効果で購入回数がアップしました。DM1回あたりの購入単価はダウンしたものの、回数アップが単価ダウンの影響を上回り、全体売上がアップしました。実施前に想定していた仮説が実証され、一定の成果が見られたことから、優良顧客向けDMを継続することになりました。
▼成功事例①:「会員カード付きDM」の送付で、全体売上アップ優良顧客を差別化
目的 |
優良顧客の差別化による、会員の維持、購入回数アップ |
ターゲット |
購入金額・購入回数で、優良顧客と定義したお客様(約1万人) |
クリエイティブ |
優良顧客であることを証明する「LeTAO Smile Pass」を送付 |
オファー |
①自宅・勤務先の送料無料特典 |
タイミング |
年1回 |
成功事例②:優良顧客の「維持拡大期」のDM
優良顧客向けの施策が定着してくると、「送付対象者の多くが昨年と同じため、毎年同じ特典やクリエイティブではインパクトが薄れてしまうのではないか」という課題が挙がりました。
そこで、送付対象者を拡大しクリエイティブの変更を行うとともに、ケイシイシイ様が従来から重要としている「ギフト利用の促進」にもつながるよう、オファーの設計を見直しました。
<2年目の施策でブラッシュアップした点>
①DM送付対象者を拡大
→前年にDMを受け取っていない方を加えることでレスポンスUPを目指す
②クリエイティブコンセプトを見直し
→優良顧客の認定感をより強調することと保管性を高めることを目指す
③ギフト購入でのオファーを追加
→ギフト購入でのオファーを追加→さらなる売上アップを目指す
結果、1年目の施策に続いて売上アップにつながっただけでなく、パスポートを模した冊子がSNSでも話題に。DMを受け取ったお客様からは、「来年も楽しみにしています」という声も寄せられました。
▼成功事例②: 送付対象拡大、「パスポート入りDM」で話題のデザイン改善
目的 |
優良顧客の差別化による、会員の維持、回数アップ |
ターゲット |
購入金額・回数に基づくセグメンテーション(約4万人) |
クリエイティブ |
「LeTAO Smile Pass」を「LeTAO Smile Passport」に進化させ、「さあ、スイーツの旅へ」のコンセプトで、エアメールを連想させるデザイン |
オファー |
①自宅・勤務先の送料無料特典 |
タイミング |
年1回 |
成功事例③:優良顧客の「安定期」のDM
毎年継続することでお客様にもケイシイシイ様社内にも認知が広がったこともあり、優良顧客向けDMが定常施策として年間計画に組み込まれるようになりました。
この段階では、優良顧客の差別化よりも顧客満足度の向上とLTVの最大化をゴールに置いており、送付タイミングを増やして実施しています。
このDMを送付したのは、立ち上げ期の初回DMから9年目でしたが、レスポンス率・売上とも過去最高を達成しました。
▼成功事例③: 施策の定常化によりLTV最大化を実現
目的 |
日頃の感謝の気持ちを丁寧に伝え、満足度の向上を図ると共に、LTV最大化を目指す |
ターゲット |
現在の優良顧客に加えて、今後優良に引き上げていきたい顧客を含む |
クリエイティブ |
「さあ、スイーツの旅へ」のコンセプトを継続。 |
オファー |
①自宅・勤務先への送料特典 |
タイミング |
年4回(数ヶ月ごとに特典利用を促すリマインド、顧客の誕生月に合わせたバースデーDMを追加) |
優良顧客向けDM施策設計ならフュージョンへ
BtoCの優良顧客向けDMでは、他の顧客と差別化した特別感のある体験を贈るコミュニケーションや企業からの感謝を伝えることで、企業へのロイヤルティの向上、長期的には顧客のLTV向上にもつながります。
※ロイヤルティとは、ブランドや商品に対して信頼や愛着をもって末永く関係行動し続けたいと思う気持ちのこと
顧客を飽きさせず、サプライズ感があり届いてうれしくなる、心待ちにしてくださるような施策を継続的に設計・実施し、効果検証しながら進化させていくことが大切です。その他の優良顧客向けDM施策事例は、下記のページでご紹介しています。あわせてご覧ください。
フュージョン株式会社では、CRM領域の専門性に基づき、BtoCビジネスにおける既存顧客維持・育成のためのマーケティング戦略設計や、施策実行をトータルでご支援しています。
「DMの成果を最大化したい」「新たにDMを始めたい」というご相談はもちろん、DM施策のROI改善や、クリエイティブ訴求方法にお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。