一般社団法人日本ダイレクトメール協会が実施する「DMメディア実態調査」は、首都圏200名を対象に、自宅に届いたDMに関する実態を年次で調査・分析するものです。2022年度の調査は2023年4月30日に公開され、今回で12回目を迎えます。
この調査では、DMメディアに対する「意識やイメージ」、送付企業や送付者、受け取ったDMの種類、開封・閲読率、そしてその後の行動などを、個別のDMごとに日記形式で記録し分析します。調査項目は社会環境や消費者行動の変化に応じて微調整されますが、大部分は一貫しており、時系列での変化を把握することも可能です。
なお、この調査でのDMの定義は「封書、はがき、情報誌・カタログ、同梱パンフレット」であり、一般的に想像される広告郵便物のダイレクトメールを対象としたものではない点に注意が必要です。本コラムでは、誤解を避けるため、DMメディア実態調査の定義に従った場合は「DM」と表記し、いわゆる広告郵便物を指す場合は「ダイレクトメール」と明記することとします。
2022年のDMの受取通数、つまり企業からの発送通数はどのように変化したのでしょうか? 結論から言うと、受取通数は2021年の5.5通/1週間から2022年は5.1通/1週間へと0.4通/1週間減少しました。
しかし、この結果だけを見て「DMは時代遅れ」と判断するのは早計です。
この調査のDMの定義は広範で、受取通数は「自分宛」「自分以外」「宛名なし」の全てを合算したものです。そこで、「本人宛」の受取通数だけを見てみると、2021年の3.6通/1週間に対し、2022年は3.8通/1週間と微増しています。つまり、受け取ったDMの総数は減少したものの、「自分宛」のDMは微増していることが分かります。
また、「自分宛」のDMは開封率、閲覧率、行動を起こした割合も高いという結果がDMメディア実態調査から明らかになっています。これらの事実から、企業は引き続き既存顧客へのリテンション活動に注力していることが伺えます。これは新型コロナウイルス感染症の影響で新規顧客獲得活動が難しくなって以来の傾向です。
一方、「自分宛」のDMを受け取った人数は、2021年の179人から2022年は168人へと減少しています。これは、企業が効果を重視し、または費用面から自社リストを活用しつつターゲットを絞り込んで発送している可能性があります。これは、限られたリソースの中で結果を出すために、企業が優良顧客の選別を積極的に行っているとも解釈できます。
この度の調査では、DMのタイプや形状に関する項目に新たな追加がありました。それは、「圧着のはがき」で、これまではおそらく「はがき」のカテゴリーに含まれていたと思われます。
調査結果を見てみると、全体の31%がはがき、プロモーションなどで頻繁に使用されるA4サイズのはがきと圧着のはがきが26%、大型の封書が7%となっていました。この結果から見ると、はがきが企業のコミュニケーションメディアとして意外と多く使用されていると感じられます。
その理由として、日本郵便が平成30年11月に公開した「郵便事業の課題について」という資料を挙げることができます。この資料によれば、私信の利用頻度が年間10通未満(年賀状を除く)と答えた人の割合は約80%でした。これを2週間に換算すると、最大でも週0.4通となります。したがって、私信として受け取ったというよりは、ほぼダイレクトメールとして使用されていると考えるのが妥当でしょう。
2022年の個人宛てのDMの内容を見てみると、「新商品・サービスの案内」「商品・サービスの利用明細・請求書」「特売・セール・キャンペーンの案内」がトップ3でした。その中でも、「商品・サービスの利用明細・請求書」の割合が増加し、「新商品・サービスの案内」「特売・セール・キャンペーンの案内」は微減または横ばいでした。さらに、「獲得ポイント等の案内」「クーポンの案内・プレゼント」「試供品の案内・プレゼント」は増加傾向にあります。これは、コロナ禍で店頭送客が限定的もしくはできなかった時期と比較して、2022年末は社会状況が比較的安定している時期であり、小売業やサービス業などが徐々に送客活動に力を入れ始めていたからだと考えられます。
最後にDMを受け取った後の行動を見てみましょう。具体的に行動したと答えた人の割合は、2021年と比較して微減の19.3%でした。
具体的な行動としては、「ネットで調べた」が最も多く8.4%、次に「問い合わせをした」が4.9%、「話題にした」が3.2%でした。また、「お店に出かけた」「商品・サービスを購入・利用した」の2つは前年に比べて微減となりましたが、他の項目は前年と比較して微増で、大幅に増えた項目も見られました。
通信販売やEC企業のように、ダイレクトセリングのメディアとしてDMを多用する企業にとっては、この2つの項目が低いと物足りないかもしれません。しかし、DMを全般的なコミュニケーションメディアとして考えると、開封後の行動が多岐にわたるのはDMの特性と言えます。
その中でも、各年代の特徴的な行動を把握することが重要です。例えば、男性と女性の20代では、「具体的に行動した」と答えた人が59.6%、35.3%と平均を大きく上回っています。これは特筆すべき点で、特に男性20代の「ネットで調べた」の割合が33.3%、女性20代の「話題にした」の割合が19.1%と、これらの行動が突出して高いことが見受けられます。
これらの事実から、男性20代に対してダイレクトメールを送る場合は、QRコードや短縮URL、検索窓などを使用してWebやアプリに誘導すること、女性20代に対しては家族や友人と話題にしやすくするためにSNSと連携するなど、前後の行動を含めた一連のストーリーを考える必要があります。
その意味では、DMを単独のキャンペーンで使用するメディアとして捉えるのではなく、キャンペーン全体のコミュニケーションの中でどのように使用すれば、他のメディアとの相乗効果で結果を最大化できるかを考えることが重要です。
新型コロナウイルス感染症の影響は、この2022年末の調査時にも一部反映されていると思われます。調査結果からは、社会活動が全体的に徐々に回復している様子が見受けられますが、一部の活動はまだ完全には戻っていない様子が見受けられました。特に年代によっては、社会活動やそれに伴う行動そのものが変化していることも確認できます。
この調査結果は、DMに関わるマーケターだけでなく、デジタルを含むセールスプロモーション全般に関わるマーケターにとっても有益な情報源となります。なぜなら、DMメディア実態調査は、受け手視点からDMを分析している唯一の調査だからです。
受け手の変化を把握することは、DMの企画・制作の第一歩となります。自社調査や自社データを用いて把握することも重要ですが、第三者の調査からも多くの知見を得ることができます。調査から得た知見を新しい施策の企画・制作に反映させることが、成功への鍵となるでしょう。
以下の記事では、近年のダイレクトメールに関する市場動向やトレンドを詳しく解説しているので、ご興味のある方はあわせてご覧ください。
フュージョン株式会社では、ダイレクトメールを含めたコミュニケーション全体の戦略設定から実際の企画・制作・効果検証までをワンストップでサポートしています。
初めてダイレクトメールの実施を検討している場合や、現在実施しているダイレクトメール施策の効果に課題をお持ちの場合は、ぜひ一度フュージョン株式会社へお問い合わせください。
お問い合わせフォームはこちら
出典:一般社団法人日本ダイレクトメール協会「DMメディア実態調査2021」「DMメディア実態調査2022」
https://www.jdma.or.jp/data/research.php