本記事では、ダイレクトメールの効果を最大化する予算設計を、施策の流れに沿って解説します。実際に施策を策定する際には、Step2で各施策を検討する際に同時進行もしくは前後しながら予算についても考えるケースも多いですが、今回は基本的な流れを紹介しています。それぞれのステップでの役割を理解したうえで、社内で進めやすい方法を探っていくとよいでしょう。
なお、ダイレクトメールの概要や基本の構成要素、作成のコツについては別記事「ダイレクトメール(DM)とは?基本の構成要素や効果的なDM作成のコツを解説」でご紹介しているので、あわせてご一読ください。
ダイレクトメールの効果を最大化するためには、データの分析結果に基づいた顧客セグメントの作成が重要なポイントです。セグメントが適切に行われていると、グループごとの顧客特性を理解したうえで、顧客心理に合わせたマーケティング施策を実施できるようになります。
セグメントの方法にはさまざまなものがありますが、購買行動だけではなく、居住地などの地理的な情報や、年齢・家族構成・収入などの人口統計学的な特性、顧客のライフスタイルや好みなどの心理学的な特性なども考慮し分類しましょう。
たとえばスーパーマーケットであれば、購買頻度や購買金額が同じ顧客群でも、家族構成やライフスタイルによって購入する商品や来店時間が異なるケースがあります。これらの顧客の行動や属性までを踏まえてセグメントすることで、同じ購買頻度・購入金額の顧客群の中に「子育て世帯」と「高所得者夫婦」が混ざっているなどの違いに気がつくことができ、適切な顧客セグメントを作成できるのです。
顧客セグメントの作成について、休眠掘り起こし施策を例としてあげてみましょう。
たとえば、休眠顧客を「直近の1年間に購入していない顧客」と定義してもセグメントとしては不十分です。直近1年間に購入していない顧客でも、それぞれの状況やニーズは異なるからです。
たとえば、直近の1年間に購入していない顧客をさらに「購入回数」や「最終購入日」などの切り口で分析してみましょう。そうすると、初回の1回のみ購入し再購入をしていない新規顧客や、商品をリニューアルしてから購入をやめた既存顧客などに細分化できます。
このように、それぞれの状況を踏まえて顧客セグメントを作成することで、セグメントグループごとのペルソナが明確化され、休眠掘り起こし施策の具体的な打ち手も最適化できるでしょう。
休眠掘り起こし施策の具体的な流れや事例については、以下の記事を参考にしてください。
顧客コミュニケーション設計とは、企業が期待する行動を顧客にとってもらうために、あらかじめ理想のコミュニケーションプロセスやストーリーを設計するものです。長期的に顧客との関係性を構築し、顧客ロイヤルティを向上させるためには顧客視点でプロモーション施策を検討することが大切です。この際に顧客コミュニケーション設計を活用することで、顧客の心情変化を促すために必要な施策を整理しやすくなるのです。
顧客コミュニケーションの設計には、コミュニケーション設計書を活用します。コミュニケーション設計書とは、既存顧客に対するマーケティング戦略の全体像(ターゲット・タイミング・オファー・チャネル・コンテンツ)をフロー化したものです。
コミュニケーション設計書を作る際にはまず、ターゲットを明確にしたうえでゴールを設定します。この際に売上向上などの定量的なゴールだけではなく、顧客の心情がどのように変化して、行動してもらいたいかもあわせて言語化することが大切です。
ゴールまでの顧客の心情変化を整理できたら、心情変化を促すためにどのタイミングで、どのようなオファーがあればよいかを検討します。さらに、それぞれのタイミングとオファーを発信するチャネルを選定し、チャネルごとに最適なコンテンツを作成しましょう。
たとえダイレクトメールを中心に検討した顧客コミュニケーション設計でも、効果を最大化するためには、適切なタイミングでオンライン・オフライン両方の施策を取り入れることが大切です。
オンライン施策はダイレクトメール施策と異なり、タイムリーにコミュニケーションを図れるメリットがあります。一方でダイレクトメール施策は形状や質感、同梱ツールなどを工夫することでオンライン施策では与えられない特別感を醸成できます。
これらの特性をうまく組み合わせ、チャネルをまたいで連動性のあるコミュニケーションをおこなうことで、連動性を持たない単体でのプロモーション施策に比べて効果が高まるケースがあります。
活用できるチャネルは多岐にわたりますが、代表的なオンライン施策としては以下のとおりです。
ここでは、顧客ロイヤルティを高める際の基本となる「誕生日施策」を例にして考えてみましょう。
まず、オンライン施策のリアルタイム性を活用し、誕生日当日にEメールでお祝いメールを送るとします。当日にお祝いが届くだけでも顧客満足度は高まりやすいと言えますが、ここでダイレクトメール施策を組み合わせてみましょう。
たとえばメール文面に「後日、郵送で特別プレゼントが届きます」と記載したうえで、バースデー特典付きのダイレクトメールを送付すれば、Eメール施策とダイレクトメール施策に連動性を持せないまま実施するよりも、顧客ロイヤルティが高められるでしょう。
このようにダイレクトメールとオンライン施策を組み合わせることで、単体で実施するよりも顧客満足度が高まり、結果として売上の向上にもつながります。
顧客コミュニケーションの設計で役立つ「顧客コミュニケーション設計書」をダウンロードしたい方は、以下のページよりダウンロードください。
顧客コミュニケーション設計ができたら、プロモーション全体の予算を最適化します。
プロモーション全体の予算を振り分ける際は、粗利単価やLTV(顧客生涯価値)を算出し、損益分岐点も考慮したうえで決定しましょう。
ここで重要なのは、各施策での効果を鑑みたうえで「予算をきちんとかけるべき施策」がどこかを見極めることです。考慮すべき効果の中には、施策ごとの売上だけではなく、顧客との関係性構築に寄与している度合いなども含まれます。施策実施後にブランドリフト調査なども取り入れながら、予算の最適化でもPDCAを回していきましょう。
ここでは、ダイレクトメール施策の販促費を構成する要素について掘り下げて紹介します。
損益分岐点は以下で紹介する費用の合計となる「販促費」と「粗利単価」で算出できます。
また以下の記事では、ダイレクトメールの効果測定方法やLTV・粗利単価・損益分岐点などの計算方法について解説しています。
企画費とは、前段で解説した顧客コミュニケーション設計の作成にかかる費用です。顧客コミュニケーション設計を社内でおこなう場合は、以下で説明する人的コストと重なる部分がありますが、社内に知見を持たない場合は専門企業に委託することも選択肢の一つです。
また、意味のある顧客コミュニケーション設計を作成するためには、ターゲットとなる顧客理解が欠かせません。必要に応じてアンケートを収集したり、購買データや顧客データの分析にもコストを割く必要があるでしょう。
ダイレクトメールの反応率に大きな影響を与えるデザインについても、制作会社へ委託する場合は販促費として考慮したい費用です。デザイン制作会社に依頼する際には、ダイレクトメールの制作経験がある企業かどうかをきちんと見極めることが大切です。
また、デザイン制作を外注せずに社内で対応する際にはすでにあるコンテンツをうまく活用するとよいでしょう。具体的には、Webサイト上の商品ページにあるデザインや訴求文を流用したり、顧客からの口コミがあるならばそれを採用したりすると、コンテンツに統一性が生まれやすくなります。
また、顧客コミュニケーション設計で複数のチャネルを利用することが決まっている場合、それぞれのチャネルでコンテンツをうまく統一することもアイデアの一つです。
ダイレクトメールの印刷費は部数や形状・印刷方法・印刷物の数(ツールの数)などによって変動します。
最も安価なのは、はがきサイズのダイレクトメールです。一方で受け取った際のインパクトを重視する施策では、角2封筒タイプを使用し大きさを重視したり、ノベルティやグッズを同封したりと工夫を凝らすケースもあるでしょう。一般的に印刷費・封入費は印刷物が大きくなればなるほど費用が上がります。用紙や印刷方法もこだわるとその分費用がかさむため、予算と見合わせながら最適な仕様を検討しましょう。
基本的にリストは自社で取得している顧客リストを利用してプロモーションをおこないますが、自社リストがない場合は専門の企業から購入する選択肢も考えられます。特にBtoB施策では新規顧客の獲得に必要なリードとなるリストが自社にない場合が多いため、最初のアプローチでは購入リストを活用し、レスポンスがあった顧客を徐々に自社のリストとして蓄積していく方法が一般的です。
リストを販売している企業で購入すると、1件10〜15円ほどが多いようです。
販売企業によってセグメントの自由度やリストに記載されている項目が異なるため、自社の活用方法に即したリストが提供されるかをきちんと確認するようにしましょう。また、安く購入できるリスト販売企業がある一方で、リスト情報が古く活用できないようなものを販売する悪質な名簿業者があるのも事実です。そのため、購入前の情報収集は大切です。
ダイレクトメール施策を成功させるためには、先ほど説明した通りコミュニケーション設計が何よりも大切です。また、コミュニケーション設計書の内容を実際に送付するダイレクトメールで表現するためには、自社内に施策の目的や方向性を理解した進行管理者が欠かせません。
ダイレクトメールは印刷会社や配送業者・デザイン制作会社など、発送するまで多くの関係会社とのやり取りが発生するため、社内の人的コストも考慮して予算を決定することが求められるでしょう。また、社内でのリソース確保に不安がある場合は、ダイレクトマーケティングを得意とする代理店などに依頼するのも一つの方法です。
ダイレクトメールの送料は主に以下の要素で料金が変動します。
重量 | 重くなればその分高くなる |
発行部数 | 多ければ1部あたりの価格が安くなる |
郵便でダイレクトメールを広告郵便物として発送する場合は、発送部数に応じて割引率が上がります。2,000通から割引の対象となり、はがきであれば8%、定形郵便や定形外郵便は12%の割引が適用できます。さらに差出郵便局が指定する郵便区番号ごとにあらかじめ仕分けして投函した場合は、さらに割引が適用されます。
なおいずれの場合も、差出郵便局で事前に申請する必要があるため、詳しくは最寄りの郵便局に問い合わせましょう。
フュージョンでは、企画設計やデータ分析、クリエイティブ設計はもちろん、印刷・発送までを含めたDM施策のトータル支援を提供しています。ダイレクトメールの支援実績は下記の資料でご紹介しているので、ぜひご覧ください。
ダイレクトメールを発送したら、効果測定を実施しましょう。
ダイレクトメールでの効果測定は、主にレスポンス率を検証します。ダイレクトメールに記載したQRコードからの申し込みや、電話での問い合わせなどが直接的な効果を測る数値です。
また、オンライン施策と組み合わせて実施している場合は、オンライン施策側の効果が単体で実施した時と比べてどのように変化したかも忘れずに検証しましょう。
PDCAを回す際には、ダイレクトメールのクリエイティブだけではなく、タイミングやセグメントについても最適だったか効果測定することが大切です。
効果測定をするときに、利用する指標の一例を紹介します。
下記指標をKPIとして設定することで、どのくらい目標に到達できているかを具体的に確認できます。
レスポンス率 | ・DMによって顧客が行動した割合 ・アンケートや資料請求など行動を定義する |
レスポンス率=レスポンス件数÷DM発送数×100 |
コンバージョン率 (CVR) |
・商品購入など目標に達成した割合 | コンバージョン率=コンバージョン件数÷DM発送数×100 |
レスポンス獲得単価 (CPR) |
・レスポンス1件獲得にかかったコスト ・低いほど、効果的な施策 |
CPR=販促費÷レスポンス件数 |
顧客獲得単価 (CPO) |
・コンバージョン1件にかかった費用 ・低いほど効果的な施策 |
CPO=販促費÷受注件数 |
Webサイトへのアクセス数 | ・顧客の関心度を測る指標として活用 | アクセス数を測るための準備が必要 |
ダイレクトメール施策を実施する際は、流れを理解し顧客に合わせた施策を実施することが大切です。また、ダイレクトメールを送るときに必要なコストを理解したうえで、コストを最適化させるようにしましょう。
フュージョン株式会社が提供するダイレクトメール改善サービスでは、全体の戦略設定から企画・制作・効果検証までをワンストップでサポートしています。
初めてダイレクトメールの実施を検討している場合や、現在実施しているダイレクトメール施策の効果に課題をお持ちの場合は、ぜひ一度フュージョン株式会社へお問い合わせください。