マーケティング施策を行ううえで、なんとなくの勘や経験だけでは再現性を高めるのは難しく、事実を客観的にとらえ、仮説を導き出すためのデータ活用の必要性が高まっています。とくに昨今は、マスマーケティングが主流だった頃とは異なり、顧客視点に立ちひとりひとりの顧客と適切なタイミングでコミュニケーションを取ることで、顧客の行動に変化をもたらすCRMが重要です。そして、顧客に対する適切なコミュニケーション設計を行うためには、マーケティング施策の結果や効果を客観的に把握し、次に活かしていく必要があります。
そこでデータマーケティングの重要性が高まってきています。データマーケティングとは、顧客の心理や行動の手がかりとなるデータを収集・分析し、マーケティングを最適化することを指します。
今回のコラムでは、データマーケティングを行ううえで押さえておきたい基本3フェーズと、実際にデータマーケティングに取り組むときに必要となる基本ポイントをご紹介します。
「マーケティングにデータを活用する」と一口に言っても、活用の仕方には様々な段階があります。
今どの段階にいるのかを意識することで、データ活用をより推進しやすくなります。
最初のステップは、データの集計が中心です。売上データや顧客データは、加工されていない状態では、全体の傾向やパターンが把握しにくいものです。このため、多くの企業では、月ごとの売上のまとめや、顧客数の変動の確認など、定型的なデータ集計作業を行っています。
データを集計することで、生のデータが「見える化」、「理解可能」な形に変わります。定期的に一定のフォーマットでデータを集計することで、データの変動や傾向も追跡可能となります。
しかし、この段階では、集計の目的が明確でない、またはあいまいであることが一般的です。目的が設定されていないままのルーチン作業は、数値の確認と「目標達成/未達成」の結論に終始し、データの真の価値は活かされません。
ここから次のフェーズへ進み気づきを得るには、集計結果に対して「本当に?」と「なぜ?」という二つの問いが効果的です。例えば、売上に変動が見られた場合、「本当に増減しているのか?」と問い直し、「それはなぜなのか?」と探求することです。
この段階では、フェーズ1で立てた問い、すなわち仮説を検証します。これには、データのより深い分析が必要です。
フェーズ1での問いに基づいてデータ分析を進めると、例えば、全体の売上は増えているように見えても、商品別、売上チャネル別、顧客属性別に分析すると、売上が大きく落ちているカテゴリーが明らかになるかもしれません。もし、これが予期せぬ落ち込みであれば、その原因を調べる必要があります。
原因追求の過程で、新たなデータの収集や、通常とは異なる分析方法が必要になることもあります。例えば、以下のような方法です。
ソーシャルメディアの投稿、カスタマーレビュー、ニュース記事などのテキストデータから、感情分析、トピックモデリング、キーワード抽出などを行い、ユーザーの意見やトレンドを把握します。
画像データから物体、人物、テキストを識別し、分類や特徴抽出を行います。例えば、医療画像分析では、MRIやX線画像から異常箇所を検出します。
音声データをテキストに変換し(音声認識)、感情分析や意図解析を行います。コールセンターの録音データ分析で、顧客の満足度やフラストレーションを評価します。
ソーシャルメディアのユーザー間の関係やインタラクションを分析し、コミュニティの構造や影響力のあるユーザーを特定します。
IoTデバイスからのセンサーデータを分析し、環境の変化や異常状態を検出します。例えば、工場の機械の振動データから故障の兆候を早期に発見します。
このような非定型のデータ分析を通じて、情報の深層を理解できます。ただし、これらを行うには時間とコストがかかり、全ての可能性を探るのは困難です。
具体的な問いを設定し、それに答える形でのデータ分析を通じて、ビジネスの現状を深く理解するのが、フェーズ2の段階と考えるのが良いでしょう。
現状とその原因を理解した上で、「次にどう行動するか」を考えることができれば、フェーズ3へと進むことができます。
この段階では、フェーズ2で特定された課題に対して、データを活用して解決策を見つけ出します。具体的には、課題解決による効果の予測や、必要なコストの算出をデータに基づいて行い、具体的な施策を計画します。
フェーズ3が各部署で達成された場合、効果的なプロモーションや顧客獲得キャンペーン、新商品の開発などが進行し、これが売上向上につながります。
会社全体がこのフェーズに到達すれば、データを基盤とした経営戦略が形成され、全社一丸となって効率的に目標に向かって進むことができます。データを基に判断し、企画を練り、施策を実行することで、望む未来を創り出すのがフェーズ3の目標です。
フェーズ1から3に進むにつれて、必要なデータの量や、分析・判断のためのスキルレベルも高まります。「自社は現在どのフェーズにいるのか」「データをどのように活用したいのか」を明確にし、分析の基となるデータの蓄積や、必要な人材・ツールの整備が不可欠です。
それでは、データマーケティングにいざ取り組むときにはどのような点に気を付けて進めれば良いのでしょうか。ここでは実務上で必要となる基本的なポイントを中心にご紹介します。
データの集計すらしていないなんてあり得るのだろうか、と思われるかもしれませんが、データ集計自体に課題があるというケースは存在します。そして、この集計段階でのポイントは、前処理工程を丁寧に行うことです。
前処理とは分析の目的に合わせて、収集しただけの未整理データを加工することです。
自社で取得できたデータを集計し、生のデータを「目に見える」・「わかる」形式にする重要なステップです。社内にデータが散在している場合は、例えばECサイトの購買データ、ギフトの発送伝票、店舗の来店履歴など、データとして蓄積されているものを集めましょう。
このときによく発生する課題として、複数のデータベースを使っていたり、各データの取得目的が異なっていたりするために、集計作業に入る前のデータの前処理に手間が生じることが挙げられます。複数データのクレンジングや突き合わせなどの作業は地道な確認や細かな修正が必要になるため、この作業単独では大きな成果や示唆を生まない割に工数がかかりやすく、敬遠されがちです。
しかし、この前処理作業を避けずに取り組み、自社の持つさまざまなデータが可視化されることで、初めて数字に疑問を持つことができます。そして、それらの数字がこの後の分析で明確にしていくべき課題のヒントになります。
加えて、前処理段階で発生する課題も合わせて可視化することで、自社データで取得する項目や要件を再定義するきっかけを作ることができます。これらは、MAツールなど各種ツール導入を行うときの要求仕様や、設計段階でのシステム要件にも相当するため、この工程は決して無駄にはなりません。
「分析」という漢字は「分(分ける)」と「析(「木」と「斤」)」になりますが、言葉のとおり分けて切り出すのがデータ分析です。分析対象を可視化するのがデータ集計の段階ですが、ここでは集計結果を深堀して課題や仮説を抽出します。
より深くデータを分析することで、仮説を複数考えることができたり、自社のマーケティング課題を明確にできます。3.データによる予測でマーケティングを戦略的に
データ分析を行うと、自社のマーケティング施策の課題が可視化されるため、それらの課題を解決するための検討を行うことでしょう。
このフェーズでも、検討した解決策によって課題が解決された場合に、何にどのくらいの効果があるのか、そのためにどのくらいのコストをかけるのが最適かなど、データを元に予測し、施策を立案します。経験や勘に頼るのではなく、再現性のあるマーケティングを行うためには、自社の持つデータや外部環境分析の結果などをもとに改善策を検討し、具体的なマーケティング施策に反映したうえで、継続的な効果検証と改善を繰り返すことがマーケターに求められます。この時、前提として自社に存在するCRM戦略や経営戦略で打ち出されるKPIなどの目標達成指標も踏まえて、自社のマーケティング施策へ落とし込んでいく必要があります。
「データ活用ができていない」とひとことで言っても、どのフェーズに課題があるのかによって取り組むことが変わります。
データ分析は、現状把握や仮説検証の手法の一つにすぎません。
データを通して課題を明確にとらえ、適切な分析手法を用いて自社のマーケティング課題解決につなげていきましょう。
今はまだデータ活用の目的が整理できていない方や、いろいろ考えているけれど何から手を付ければ良いか分からない…といった方は、一緒に現状と課題を整理するところから始めてみませんか。
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