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    スーパーマーケットの消費者動向からみる小売業CRM施策改善ポイント

    2024-02-27

    スーパーマーケットの消費者動向からみるCRM施策改善のポイント

    現代社会では消費者の行動や嗜好が日々変化しており、これらの動向を正確に捉え、それに応じたマーケティング戦略を立てることが、企業の存続や成長に直結します。
    特にCRMは、顧客との長期的な関係を築き、顧客のロイヤルティを高めるために重要性が増しています。このコラムでは、自主調査「小売店の利用実態調査からみる消費意識」の中で見えた消費者動向のうち、特に消費者の利用頻度が高く、日常生活はもちろん非常時にも食品を安定供給する役割を担っているスーパーマーケットに焦点を当てて解説するとともに、CRM施策改善のポイントもご紹介します。
    なお、調査の中で用いている「スーパー」には主に総合スーパー(GMS)や食品中心スーパー(SM)が挙げられますが、総務省の日本標準産業分類上で「食料品スーパーマーケット」が新設されたことは記憶に新しいでしょう。

    【参考】
    「日本標準産業分類が改定、「5811 食料品スーパーマーケット」が新設」(一般社団法人全国スーパーマーケット協会)

    今までは「各種食料品小売業」に含まれていた食料品スーパーマーケットが産業分類として切り出されたことは、より正確な業界動向把握の必要性が増したとも捉えることができるのではないでしょうか。スーパーを含めた小売業界の方はもちろん、消費者動向を踏まえたCRMに取り組もうとしている方は、ご一読ください。

    小売店(スーパー)の利用実態調査からみる消費意識

    調査テーマと調査概要

    はじめに、今回ご紹介する自主調査のテーマと調査の概要についてです。

    【調査テーマ】
    小売店の利用実態調査からみる消費意識

    【調査概要】
    調査の方法:株式会社ネオマーケティングが運営するアンケートシステムを利用したWEBアンケート方式で実施
    調査の対象:全国の20歳以上69歳以下の男女
    有効回答数:1,000名 
    調査実施日:2023年11月10日(金)~2023年11月13日(月)

    調査結果のリリースは下記のリンク先をご覧ください。
    「全国の20歳以上の男女1,000人に聞いた「小売店の利用実態調査からみる消費意識」

    お気に入りの店舗があるかどうか

    スーパーの場合、男女ともに20代~60代すべてにおいて、6割以上が「お気に入りの店舗がある」と回答しています。

    【スーパー】お気に入りの店舗があるか

    グラフを見ると、どの年代でも男性より女性の方がお気に入りの店舗が「ある」と回答した割合が高くなっており、中でも50代〜60代の女性は80%以上がお気に入り店舗を持っていることがわかります。
    また、利用頻度別に見た場合、週4日以上スーパーを利用する消費者は、87.7%がお気に入りの店舗が「ある」と回答しており、利用頻度が高いほどお気に入りの店舗を持っている傾向がありました。

    【スーパー】お気に入りの店舗があるか(購買頻度別)

    店舗の利用で重要視するもの

    次に、スーパーの場合における店舗の利用で重要視するものについては、顧客の性別・年代や購買頻度を問わず、価格がお得なこと、商品ラインナップが良いこと、立地が良いことが上位3位を占めました。

    性年代別_店舗利用で重要視するもの

    購買頻度別_店舗利用で重要視するもの

    これらは、小売業界で古くから用いられている定番理論である「ハフモデル」から考えても、妥当な結果と言えます。
    ハフモデルとは、消費者の購買行動や店舗選択のプロセスを理解するために使われる理論の一つで、特に小売業界において重要なモデルです。このモデルは、1963年にデビッド・ハフによって提唱され、消費者が特定の店舗を選択する確率を、その店舗の魅力と消費者がその店舗に到達するために必要な労力(例えば距離や時間)の関数として計算します。ハフモデルは、特に店舗の立地選定や市場エリアの分析に有用で、消費者がどの程度遠くの店舗にまで買い物に行く意欲があるか、また競合他社の存在が消費者の店舗選択にどのように影響するかを理解するのに役立ちます。

    これら3つの選択肢以外についてみてみると、会員になることで受けられる恩恵、いわば「会員プログラム」に該当する項目である「会員特典があること」「郵送DMやチラシからのお知らせが充実していること」「アプリ・WEBチラシ・メールマガジンからのお知らせが充実していること」についての重要度合いはロイヤル層で特に高くなっています。ただし、「ポイントカードの還元率が高いこと」については、ロイヤル層よりもヘビー層のほうが高くなっています。これは、ヘビー層は直接的な金銭的メリットを即時に感じることを重視している一方で、ロイヤル層は店舗との関係性や特典を重視する傾向にあり、直接的な金銭的なメリットに加えた会員ならではの顧客体験を求めていると考えられます。

    店舗を利用するときの購入姿勢

    店舗を利用するときの気持ちとして、「事前に購入するものを決めて利用するかどうか」についても調査を実施しました。その結果、「購入するものをあらかじめ決めてから利用することが多い」(35.4pt)と、「どちらかといえば購入するものをあらかじめ決めてから利用することが多い」(45.2pt)を合わせると、約8割が店舗を利用する前にあらかじめ購入するものを決めていることがわかりました。

    【スーパー】店舗を利用する時の購入姿勢

    購買頻度別に見た場合も、割合は多少違いがあるものの傾向は同じ結果が出ています。性年代別では、他の性年代に比べ男性20代が「店舗で購入するものを決めることが多い」(20.5pt)と回答する割合が多く出ていますが、それでもやはり傾向は同じ結果になりました。
    この結果から、事前の情報提供の有無が購買するかどうかを大きく左右していると予想できます。

    自分の購買傾向から、どのようなサービスを展開してほしいか

    全体で見た場合、自分の購買傾向から「自分好みの商品情報の提供」(30.7pt)や「よく買う商品群の割引情報」(55.8pt)といった購買に直接かかわる情報提供を求める割合が大多数を占めました。一方で、「自分の購買傾向からサービスを展開してほしくない」との回答は23.1ptと、2割強は否定的に捉えていることもわかりました。

    この結果について購買頻度別に確認すると、ロイヤル層(週4日以上利用)は「自分好みの商品情報の提供」が38.6ptと4割近く、他の顧客層よりも大きく出ています。

    自分の購買傾向から、どのようなサービスを展開してほしいか

    自分の購買傾向からどのようなサービスを展開してほしいかまた、「店舗との商品開発や店舗展開」が21.1ptと2割を超えており、他の顧客層に比べると、価格以外のサービスについても関心を持っている方がいるようです。これは、より自分好みのニーズや商品サービスを求めているほか、他の顧客層に比べてロイヤルティが高い分、単なる消費者という立場だけでなく、共創を通した積極的な関わりを求めているとも考えられます。一方、ライト層に着目すると「自分の購買傾向からサービスを展開してほしくない」が37.1ptと全体回答(23.1pt)と14ptの差をつけています。ライト層はスーパーを頻繁に利用しない層であり、プライバシーへの懸念や必要以上のパーソナライズに対して抵抗感があると推察できるのではないでしょうか。


    これらの結果から、スーパーマーケットでは、顧客全体に対して均一な価値を提供するだけでなく、自社で保有する顧客データなどからひとりひとりの顧客のニーズや期待を理解し、顧客理解に基づいたCRM施策を展開し改善を繰り返していくことが重要だと言えます。
    フュージョンでは、スーパーマーケットを展開する企業様向けのCRM支援を行っています。詳細は以下の事例ページをご覧ください。

    【ご支援事例】
    長期間の伴走CRM支援で安定した会員プログラム運営を実現(株式会社いなげや様)

     

    成功するCRM施策に必要な同質化と差別化の観点

    ここで、成功するCRM施策に必要な観点として、同質化と差別化について解説します。
    この場合の同質化は、顧客が基本的に期待するサービスのことを指します。例えば、今の時代ではたいていのスーパーがポイントカードやアプリなどによるポイントプログラムを導入しています。このような業界標準のサービスについては、このサービスが無いことによる競合とのマイナスな差異が発生しないよう、他企業と同じように提供が必要です。これにより、顧客の基本的な満足を確保することができます。

    差別化は、自社独自の価値提供を通じて顧客のニーズに応えることを指しています。例えば、ロイヤルティプログラムでの上位顧客向けにポイントの加算率の向上や、特別な割引、限定イベントへの招待などを通じて、上位顧客への差別化されたサービスを提供し、顧客満足度とロイヤルティを高める取り組みが挙げられます。ここで重要なのは、比較的短期で提供できる金銭的価値に加え、顧客データを用いた良質な顧客体験のための利便的価値や、よりロイヤルティを高めてもらい離反を防ぐための中長期的な心理的価値も提供することです。

    ロイヤルティプログラムにおける提供価値-1

    特に近年はロイヤルティプログラム自体がコモディティ化してきているため、自社の企業理念やサービス特性、顧客とのコミュニケーションで大切にしていることなどから生まれる独自性が差別化要素となって表れている例が増えています。

    【参考】
    日経クロストレンド:全6回 ロイヤルティプログラム再構築

    顧客理解に基づくCRM施策にはCRM戦略設計が大切

    ここからは、顧客に最適なCRM施策を実施するために必要なCRM戦略設計について解説します。
    CRM戦略とは、顧客とコミュニケーションを取る上での方向性が示された全体像のことです。自社の顧客とのコミュニケーションやプロセスを整理したうえで、下記の4つのステップでCRM戦略を設計することで、データに基づくマーケティング施策の実施や、LTV・顧客満足度の向上が実現できます。

    (CRM戦略設計の4ステップ)

    1. 自社のCRM課題発見と目標・KPI設定
      • CRM戦略の有無や内容を整理
      • CRM実行計画内容や施策設計の現状を整理
      • CRM実務レベルでの施策ひとつひとつの現状を整理
      • 現状の整理結果から課題を抽出し、目標・KPIを設定
    2.  データに基づく顧客定義と顧客分類
      • 特定のルールで顧客をグループ分け(例:優良顧客、既存顧客、新規顧客…)
      • 上記のルールに基づいて顧客を分類
    3. 顧客分類ごとのペルソナ設定とカスタマージャーニーマップ作成
      • 顧客分類ごとのペルソナを設定
      • ペルソナ設定を基にしたカスタマージャーニーマップの作成
    4. CRMプログラムの設計・見直し
      • 1~3までで得られた情報に基づいたCRMプログラムの設計・見直し

    自社ならではのCRM施策に取り組むためには、自社の顧客データをもとにした綿密な設計が重要です。現在すでにCRM戦略を設計している企業でも、今回紹介したプロセスに基づいて内容を見直すことで、より効果的なものにブラッシュアップできる可能性があります。
    詳細は別コラム「CRM戦略とは?重要性・メリットとCRM戦略設計の4ステップを解説」でも解説していますので、あわせてご一読ください。
    また、フュージョンではこのCRM戦略設計用テンプレートを公開しています。社内での取り組みにご活用ください。

     

    CRM戦略設計ならフュージョン株式会社にご相談ください

    CRM戦略を設計・見直す際には、自社の現状をきちんと把握したうえで課題を明確化することが最初のステップです。顧客データなどあらゆる情報を活用しながら、効果的なCRM戦略を設計していきましょう。
    自社のデータを活用したCRM施策の改善に取り組みたいが、進め方に悩んでいる、うまく進まないといった課題がある方は、フュージョン株式会社にご相談ください。

     

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