企業活動において「売上」や「利益」が重要な指標であることは言うまでもありません。特に上場企業であれば、ステークホルダーからこれらの数字を厳しくチェックされることでしょう。では、マーケターはどちらに注目すべきでしょうか?それは「売上」です。
なぜなら、利益は「売上」から「売上原価」「販売費」「一般管理費」を差し引いたものです。利益を上げるために費用削減は有効ですが、特にマーケティング費用を過度に削減すれば、売上機会を逃すリスクがあります。つまり、費用削減だけでは限界があり、マーケターが本来果たすべき役割は、持続的に「売上」を上げることにあります。
その「売上」を生み出すために重要なのが、「誰から、どのように売上を創出するのか」を考えることです。特に最近では、顧客一人ひとりに寄り添ったアプローチが求められ、「CRM(顧客関係マネジメント)」が改めて注目されています。CRMは単なるツールやシステムの導入ではなく、顧客理解を基盤に「誰に」「何を」「どのように」提供するかを考えることから始まり、顧客の獲得・維持・育成を一貫して行うのが重要、とフュージョンは捉えています。その意味で、CRMは顧客一人ひとりとの関係を深め、企業の売上向上と顧客満足度の最大化を目指す顧客中心の経営戦略と言えます。
本コラムでは、「売上」と「顧客の行動や態度変容」の関連性を解説しながら、なぜ今、CRMが企業の売上向上において不可欠なのかをご紹介します。なお、CRMに関する基本的な内容については、別記事で解説しています。あわせてご一読ください。
新規顧客から売上を伸ばすには
売上を拡大する方法として真っ先に思い浮かぶのは「新規顧客の獲得」でしょう。確かに、新しい顧客が増えれば売上は増加します。しかし、多くの顧客は即決でいきなり購入するわけではありません。例えば、「無関心層」から「関心層」、「潜在見込客」「顕在見込客」といったように、段階的に行動や態度が変化していきます。この変化を早く、効率的に、そして低コストで進めることがマーケターに求められています。
潜在顧客から顕在顧客への移行を促すCRM施策
従来、この購買プロセスの促進にはマス広告が主流でした。しかし近年、デジタル広告とマーケティングテクノロジーの発展により、CRM(顧客関係マネジメント)の考え方を活用した個別アプローチが効果を発揮しています。特に、潜在見込客から顕在見込客への移行には、パーソナライズされたコンテンツ提供やデータに基づいたターゲティングが有効です。BtoB分野でも、BtoC以上にターゲティング精度が求められる見込み客へのCRM的なダイレクトなアプローチが活用されるようになってきています。
既存顧客維持で安定した売上を確保
新規顧客を獲得した後、その関係性を維持しなければ、顧客は離れてしまいます。これはつまり、「顧客は何もしなければ消失する資産である」と言えます。「新規の顧客を獲得」したあと、この顧客に何もアプローチしなければ顧客は購入を止めてしまう、他のブランドに流れてしまう可能性が高まります。そのため、継続的に売上を上げる、もしくは、最低でも売上を維持するためには、顧客の購入の行動の定着化を図る必要があります。「新規顧客」「継続顧客」「離反顧客」「優良顧客」「ロイヤルカスタマー」など、各顧客セグメントに対してアプローチで継続的な購入を促し、より顧客ロイヤルティを高めてもらうために、自社のCRM戦略に基づいた個別施策が効果的です。
例えば、購入後のサンクスメールや定期的な商品提案、誕生日特典の案内など、顧客に「自分ごと」と感じてもらえるアプローチが有効です。これにより、離脱を防ぎ、再購入を促すことができます。
最近ではFMCGプロダクトを扱う企業でさえ、D2C活動を通して顧客のデータベースを整備し、顧客と直接のコミュニケーションを実施している企業が増えています。こちらもマーケティングテクノロジーの進歩が後押しをしていると考えられます。もちろん費用対効果を検討したうえではあるでしょうが、さまざまな企業で販売チャネルの多様化が進んでおり、その中でCRMのアプローチを採用する企業が増えていると考えられるでしょう。
購買行動の変化を促し売上を向上させる
既存顧客が確保できたうえで、さらに「売上」を上げるためには、顧客の購買行動の変化を促すことが必要です。「購入頻度を上げる(適正化する)」「1回あたりの購入点数を増やす」「1回あたりの購入金額を上げる」ということを考えなければいけません。具体的には、
- 「商品を定期的に購入してもらう」
- 「同じブランドの他の商品や自社の他のブランドの商品も併せて買ってもらう」
- 「できるだけ定価で買ってもらう(値引きのない状態で買ってもらう)」
- 「複数の商品をまとめ買いをしてもらう」
等が考えられます。
これらの購買行動を促すためには、顧客と企業の間で、企業や商品・ブランドに対しての信頼関係が構築できている必要があります。顧客との関係を深め、売上をさらに伸ばすためには、「一般顧客」「継続購入顧客」「定期購入顧客」を超えて、「ロイヤルカスタマー」へと育成していくことが重要です。ロイヤルカスタマーは企業やブランドに強い愛着を持ち、繰り返し購入してくれるだけでなく、他の人に勧めてくれる存在でもあります。
このような顧客育成は、CRM(顧客関係マネジメント)が最も得意とする領域です。特に、CRMにロイヤルティマーケティングの考え方を組み込むことで、個々の顧客に合わせたきめ細やかなアプローチが可能になります。例えば、特別なキャンペーンの案内や、購入履歴に基づくパーソナルな提案は、顧客に「自分のことを理解してくれている」と感じてもらえるきっかけになります。
フュージョン株式会社では、顧客とのコミュニケーション設計書を公開しています。ぜひご活用ください。
また、こうした直接的なアプローチだけでなく、マス広告も同時に重要です。ブランドへの信頼度や全体的な満足度を高めるためには、継続的な露出やブランドメッセージの発信が欠かせません。CRM施策で顧客一人ひとりに寄り添った対応をしつつ、マス広告でブランド全体の価値を高めていく。この両輪の取り組みが、顧客との長期的な関係構築には不可欠です。
「誰」から「どうやって」売上を上げるか、CRMならフュージョンへ
今回のコラムでは「顧客の行動・態度」と「売上」の関係性とアプローチの方法を見てみました。こうしてみると、実はCRM的なアプローチは「売上」と「顧客の行動・態度」の変化に対し幅広く対応できること、そしてなぜ今CRMが重視されているのかが理解していただけたかと思います。
「誰から」「どうやって」売上を生み出すかを意識することで、より効果的なマーケティング戦略が立てられます。CRM(顧客関係マネジメント)は、新規顧客獲得から既存顧客維持、購買行動変容まで、幅広いフェーズで売上向上に貢献します。フュージョン株式会社では30年以上にわたり、CRM領域における企業の課題解決を支援してきました。「CRMは何から始めたら良いか分からない」「自社に最適な施策を知りたい」という方は、ぜひご相談ください。