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カスタマージャーニーマップ作成時のよくある課題と解決策

作成者: Admin|Jan 14, 2025 3:00:00 AM


マーケティングの現場では、「顧客視点」という言葉すら聞かなくなるくらいに、顧客視点での施策設計・実施が一般的になりました。しかし、顧客の行動や感情を的確に把握し、それに応じた施策を立案するのは容易ではありません。そこで作成するのが、ペルソナとカスタマージャーニーマップ(以下、CJM)です。

CJM
は、顧客が企業や商品に触れる一連のプロセスを可視化し、課題を明らかにするためのものです。ただし、その作成プロセスでよくある課題に対応できなければ、CJMは「作って終わり」の資料になりがちです。

本記事では、CJM作成時に現場でよく起こる課題とその解決策について、注意点も含めて解説します。CJMの作成手順や作成メリットについては、別記事「【テンプレート付】カスタマージャーニーマップ(CJM)とは?作成手順やメリットについても解説」で解説しているので、あわせてご一読ください。

カスタマージャーニーマップ作成時のよくある課題と解決策

CJM作成ではさまざまな課題が発生しますが、それぞれに効果的な解決策があります。CJMの作成プロセスは、大まかに「顧客視点」と「企業視点」に分けることができます。「顧客視点」は顧客行動や顧客感情が、「企業視点」は顧客接点やコンテンツ、課題や解決策が当てはまります。

以下に、現場でよく見られる課題とその解決策を具体例とともに紹介します。

顧客視点でのよくある課題と解決策

1.CJMのスコープがあいまい

ひとつめのよくある課題は、CJMのスコープがあいまいなままで作り始めてしまい、CJMが果てしなく巨大になってしまうことです。
CJM
CRM戦略設計のステップであるだけでなく、その後の顧客へのプロモーション施策立案やカスタマーサポート活動も含めた企業活動全般の指針になるものです。また、自社の顧客の理解を深め、投資判断の根拠にすることもできます。そのため、CJM作成時には関連部門の担当者にも入ってもらいながら、関係者全員で作成することをおすすめします。

【参考コラム】
CRM戦略とは?重要性・メリットとCRM戦略設計の4ステップを解説

ここで言うスコープとはCJMの作成範囲ですが、スコープがあいまいになっているということは、すなわち目的がまとまっていないという意味でもあります。例えば、今回としては顧客の新商品の購買プロセスに特化するはずが、「ブランド認知も入れたい」とCJMの対象範囲が広がり、議論が発散してしまうような場合です。
解決策としては、スコープを事前に明確化したうえで関係者に共有し、範囲外の話題は次回議論のテーマとして残しておくのが良いでしょう。スコープを明確にするためには、下記のテーマ記入シートのようなフォーマットを用意して記載するのも良い方法です。

2.顧客行動の抜け漏れ

CJM作成の最初のステップでは、顧客行動の検討を行います。ここで最初の問題が発生します。それは、洗い出す顧客行動の数が絶対的に少ないという問題です。行動数が少なくなるのは、なぜでしょうか?それは、実際の施策担当者は、自身の経験から一つの行動の前後にある連続した行動のイメージが既にあり、自分の中ではイメージできているがゆえに前後の行動を省略してしまうからです。
例えば、「モニターに参加する」という行動があるとします。
実際は、この行動の前には
「モニター募集していることを知る」
「モニターに応募する」
「モニターに当選する」
があります。そして、これらの後には
「モニター商品を使ってみる」
「モニターの感想を送る」
「モニター謝礼を受け取る」
等があります。

単に「モニターに参加する」という行動だけでも前後にこれだけの関連した行動があります。しかし、施策担当者はその前後で何が起こるかをなんとなく理解してしまっているので、結果顧客行動の前後を省略してしまうのです。

また、関連した行動について、最初から「こういう行動をするはず」と想定して取り組んでしまうと、想定していない行動まで洗い出すことが難しくなります。

CJMでは、つい企業側の理想的な顧客の行動を反映してしまいがちです。しかし、顧客行動は顧客との接触機会、企業から見れば売り込むチャンスですから、行動をもれなく抜き出すことによって売り込むチャンスがどこにあるのかを把握することができます。
粒度を細かくすると煩雑になると思われるかもしれませんが、粒度を上げることはあとでもできます。まずは行動を最小の単位に分解し、できるだけ多くの顧客行動を書き出すことが重要です。

3. 適切なグループ化やタイトル付けの難しさ

顧客の行動を書き出した後は、それを似た行動ごとにグループ化し、それぞれにわかりやすいタイトルをつけます。ここでよく見られるのが「認知」「理解」「欲求」「記録」「購入」といったように、AIDMAのステップに従って漠然とグループ分けし、タイトルをつけてしまうケースです。
確かにAIDMAは消費者行動モデルの代表格であり、行動を分類する際に参加者間の共通認識を得やすい便利な枠組みです。しかし、実際の顧客行動はそんなに単純に分類できるものではありません。例えば、「認知」というグループの中にもさらにいくつかの小さな行動グループが存在するはずです。それらを細かく分けて分析することで、新しいアイデアが生まれる可能性が高まります。

(よくある例)
「認知フェーズ」にSNS広告、口コミ、CMが混在し、施策に一貫性が欠ける。

 ( 解決策)
行動グループを「オンライン広告」「オフライン広告」など具体化する。

もちろん、すべての行動に個別のタイトルをつける必要はありませんが、同じ種類の行動を適切にグループ化し、タイトルをつけることは重要です。それにより、顧客の行動が変化するポイントや流れを見つけやすくなります。このプロセスを丁寧に行うことで、より深い洞察が得られるようになります。

4. 顧客感情が曖昧なまま進めるリスク

顧客行動が少ないことに関連しますが、顧客の感情は行動の前後で生まれるため、顧客行動の数が少ないと必然的に感情の数も少なくなります。ただし、同じ種類の行動(例えば、商品モニターに関連する商品サンプルの受け取り、商品トライアル、店頭体験など)の場合、似たような感情を抱くことが多いため、それらをまとめて扱っても問題ないと考えられます。

ただし、このルールが適用できるのはあくまで同じ種類の行動に限られます。それ以外の異なる行動については、感情を省略せず、できるだけ細かく書き出すことが重要です。

顧客感情は、顧客が次の行動に進むための「スイッチ」です。そのため、どのタイミングでどのような感情が生まれるのかを理解することで、顧客が行動を起こすきっかけを予測し、的確なアプローチを行うことができます。顧客の感情を丁寧に分析することで、効果的な施策を設計する土台を築けるのです。

(よくある例)
「購入」に対して「期待感」とだけ記載し、購入前後の感情変化を見逃す。

(解決策)
感情を具体的に記載し、施策を感情に基づいて設計する。

企業視点でのよくある課題と解決策

ここからは、企業視点でよくある課題と解決策について、具体例を交えて解説します。

5.顧客接点やコンテンツの種類が省略される

以下の例にあるように、BtoCのCJMは、BtoBと比べると顧客接点の数がそれほど多くありません。

ステージ(例)

顧客接点(例)

認知

SNS広告( Instagramフィード、TikTokの短尺動画、Xプロモーション…)、Google広告、口コミ・レビューサイト、インフルエンサー投稿、イベントや展示会

リサーチ・比較検討

公式ECサイト、商品レビュー、メルマガ登録、比較コンテンツ記事、YouTube動画

購入フェーズ

カートページ、決済画面、購入サポート、広告リターゲティング

購入後フォロー

購入お礼メール、商品配送(感謝カード付)、アンケートフォーム、SNS投稿依頼

リピート・ロイヤル化

定期購入プラン、ポイントプログラム、限定イベント招待、季節商品のお知らせメール

そのため、CJMの前半で登場した顧客接点が、後半では「既知の接点」として省略されがちです。
例えば、SNSを接点として記載する場合は、つい「SNS」とひとくくりにしてしまうことがよくあります。しかし、SNSといっても特性はさまざまです。コンテンツがフロー型(リアルタイム型)かストック型(蓄積型)か、テキスト中心か動画中心か、さらには投稿頻度やタイミング、コンテンツの量や質など、媒体ごとに異なる特徴があります。同じように、自社サイト内の掲載場所も「サイト全体」とせずに細かく書き出すことが重要です。

また、顧客の行動やステージが変われば、同じ接点でも掲載するコンテンツの内容は変わるべきです。そうしなければ、顧客の感情を適切に動かし、行動を促すことは難しくなります。

したがって、顧客接点をしっかり書き出すことは、最終的にどのようなコンテンツを掲載するかを検討する際に非常に役立ちます。このプロセスを丁寧に行うことで、より効果的なCJMを作成する基盤が整います。ぜひ、細部まで丁寧に検討しましょう。

6.固定観念にとらわれる

既存の商品やサービスについてカスタマージャーニーマップ(CJM)を作成する際、特に顧客接点に関して固定観念にとらわれて記載をためらうケースがよく見られます。当社ではワークショップ形式での顧客接点を検討する際は、「過去の成功や失敗、リソースの制約などの条件を考えず、自由に発想してください」とお願いしています。

しかし、過去の経験から「これはできない」と思い込んでしまい、最初から選択肢を狭めてしまうことが少なくありません。
さらにもう一つの課題として、マップの後半部分で検討される接点がオウンドメディアに偏りがちなことが挙げられます。このため、現状の接点だけをもとに考えがちで、新しい接点やアイデアを思い浮かべるのが難しくなるケースがあります。また、逆に「このステップでは過去にこれをやって成功した」という成功体験に固執して、他のアイデアを受け入れるのが難しいこともあります。

過去の成功体験は重要ですが、CJMを作成する際は、まず顧客視点に立ち、ニュートラルな立場で考えることが大切です。成功も失敗も、実現可能性も一旦忘れ、固定観念にとらわれないことが必要です。バイアスに影響されてしまうと、本当の意味で顧客視点に立ったCJMを作るのは難しくなります。自由で柔軟な発想を心がけることで、新しい可能性を発見し、より効果的な顧客体験をデザインすることができるでしょう。

CJMを用いたCRM戦略設計はフュージョン株式会社へご相談ください

カスタマージャーニーマップ(CJM)は、ペルソナで設定した顧客が、商品やサービスに接する前後でどのような行動をとり、どのような接点で情報に触れ、その結果どのような感情を抱くのかを明らかにするものです。この作業を行う際には、先入観や思い込み、過去の成功体験や失敗体験をできる限り排除し、フラットな視点で顧客の立場に立って考えることが重要です。
そのため、CJMの作成は担当者だけで行うのではなく、できるだけ中立的な立場の人が情報を整理し、適切に提供することが効果的です。そのうえで、ワークショップ形式でチーム全体が意見を出し合い、ファシリテーターによる進行を取り入れることで、真の顧客視点に基づいたCJMを作れるようになります。このプロセスを丁寧に行うことで、顧客に寄り添ったジャーニーを設計し、より効果的な施策につなげることができます。

フュージョン株式会社では、CRMコンサルティングサービスの一環として、ペルソナやカスタマージャーニーマップ(CJM)の作成支援を行っています。
「新たにペルソナやCJMを作成したいが、具体的な手順がわからない」「作成の準備に不安がある」「ワークショップの支援が必要」「商品やサービス、市場の変化に合わせて既存のペルソナやCJMを見直したい」など、どのようなお悩みでもお気軽にご相談ください。