「日本の広告費」とは、日本国内における1年間(1~12月)におけるマスコミ四媒体(衛星メディア関連も含む)、インターネット、プロモーションメディアの広告媒体料と広告制作費を算出し総広告費と分類ごとに発表しているものです。
そこで今回のコラムでは、「日本の広告費 2022年」の発表を受けていくつかのトピックスと、ダイレクトメール広告費(以下、DM広告費)に関しての考察を取り上げます。
最初のトピックスは、2022年の総広告費についてです。
2022年の総広告費は7兆1,021億円、前年比104.4%の伸びとなり、過去最高であった15年前、リーマンショック直前の2007年の総広告費7兆191億円を上回りました。
総広告費に関しての詳しいコメントについては、電通の報道資料では以下のように述べられています。
- 上半期は、コロナ禍からの回復に伴う行動制限の緩和や、北京2022冬季オリンピック・パラリンピックなどにより好調だった。
- 下半期は、ウクライナ情勢や欧米の金融政策の転換による経済環境の大きな変化、新型コロナの再拡大などの影響を受けたものの、社会・経済活動の緩やかな回復に伴い「外食・各種サービス」「交通・レジャー」を中心に広告需要が高まった。
- 社会のデジタル化を背景に、好調なインターネット広告費によって広告市場全体が成長した。
出典: 「日本の広告費 2022年」 株式会社電通
上期・下期を総括し、国際的イベントの開催や社会・経済活動の緩やかな回復による広告需要の高まりが影響を与えたとされており、加えて総広告費が過去最高になったのは、インターネット広告費の成長=広告市場の成長が理由とされています。
そこで次のトピックスとして、インターネット広告費を取り上げます。
2022年のインターネット広告費は3兆912億円と初めて3兆円を上回りました。2019年に2兆円を超えテレビメディア広告費を超えたと話題になりましたが、たった3年で3兆円市場に成長し、総広告費に占める割合も43.5%といまやマス4媒体広告に変わって広告市場を牽引する存在となりました。
ちなみに2022年の総広告費に占めるマス4媒体広告費、プロモーションメディア広告費はそれぞれ33.8%、22.7%です。前回の過去最高だった2007年は総広告費にマス4媒体広告費、インターネット広告費の割合は50.9%、8.6%であったことを考えるとたった15年で広告市場は大きく変化したと言えるでしょう。
インターネット広告費に関する細かい考察は本題ではないので、こちらも電通の報道資料から引用して掲載しておきます。
- ウクライナ情勢や円安、原材料高騰などの影響を受けたものの、前年に続き大きく増加した。
- 特にインストリーム広告を中心とした動画広告の需要増が寄与した。企業の販売促進活動におけるデジタル活用が進み、リスティング広告やデジタル販促も好調だった。
出典: 「日本の広告費 2022年」 株式会社電通
2022年の日本の広告費総論を確認したところで、本題であるDM広告費はどのような動向だったのかを見ていきます。
DM広告費は「プロモーションメディア広告費」の一つの項目として記載されています。ただし、DM広告費の推定範囲は「ダイレクトメールに費やされた郵便料・配達料」の合計で、この金額には他の広告費に含まれている関連制作費は含まれていません。しかしながら、2018年からは広告市場には含まれないものの、DM広告制作関連市場も掲載されるようになりました。
そういう意味では、実際のDM広告市場規模はこの2つ数字を合算すれば、大まかではありますが把握することができます。
それでは、2022年のDM広告費はどうだったのでしょうか?
DM広告費は3,381億円、コロナ禍でも回復基調にあった2021年と比較すると前年比98.1%と微減の結果となりました。
※株式会社電通「日本の広告費」よりフュージョン株式会社作成
また、過去5年間のDM広告費の推移を見ても、コロナ禍の影響が大きかった2020年を除き微減が続いています。
一方で、企画・制作関連費用やデータ処理運用費で算出されているDM広告制作関連市場は、初めて算出された2018年以降は微減続きでしたが、2022年は1,103億円、前年比103.0%と微増になっています。
それではDM広告費が微減、DM広告制作関連市場が微増という結果はどのように捉えれば良いのでしょうか?影響した要因は主に2つあると考えられます。
まず、長きに渡った新型コロナ感染症の社会生活への影響や、人件費、資材や原材料費、輸送費、燃料費の高騰等、物価高騰など経済の変化により、DMのように紙媒体を使用し、個人へ配達、配送するオフラインメディアには今まで以上の戦略性が求められるようになってきています。
そして次に、今までは施策としてDMを活用していなかったが、新たなマーケティング施策としてDMに取り組み始めた企業や、今までDMを活用していたが更に効果を高めるために新しいクリエィティブ設計・制作を含めて施策を一新した企業などが増加しました。
これらの要因により、DM広告制作関連費が増加したと考えても良いのではないでしょうか。実際、当社へのお問い合わせの傾向としても、前述した要因によるご相談が増えています。
この傾向は今後も続くと思われますのでDM広告費だけではなく、DM広告制作関連市場の推移もあわせて注視したいところです。
2022年の日本の総広告費は、新型コロナ感染症やウクライナ情勢、物価の高騰等、経済・社会環境の大きなうねりを継続して受けながらも、一方でインターネット広告が成長したことによって、過去最高の市場規模となりました。
DM広告費を見ると広告市場としては微減ですが、DM広告制作関連市場を含めるとまだまだ広告としては有望なメディアと考えても良いのではないでしょうか。
以下の記事では、近年のダイレクトメールに関する市場動向やトレンドを詳しく解説しているので、ご興味のある方はあわせてご覧ください。
DMも他の広告同様に経済・社会環境の変化を受けている中ではありますが、今後はよりいっそう複数メディアとの融合を前提にした高いコミュニケーション戦略、そしてなによりも人を動かすためのビックアイデアが盛り込まれたクリエィティブ制作が求められます。
フュージョン株式会社は、広告戦略としてのDM作品を評価する日本最大の賞「全日本DM大賞」を連続で受賞しています。新たにDMの実施を検討している場合や、実施中のDMの効果を高めたい、という方は、ぜひ一度フュージョン株式会社へお問い合わせください。
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