CRM戦略支援の中で、マーケティング活動に必要なデータ分析やデータ活用の相談は多くあります。
その中でも、分析帳票の作成を自動化したい、BIツールのダッシュボードを改善したいなど、課題が分からない状況での相談がありました。
一方で、目的が定まっていない状態でデータを分析・活用しても良い効果は得られません。フュージョンでは、データ分析やデータ活用に関するご相談に対して、すぐに依頼内容の回答を行うことはせず、お客さまとのディスカッションの場を通して、課題に対する認識をすり合わせることから始めます。
ヒアリングを重ね課題を突き詰めると、本質的な課題は別にあることがほとんどです。データ分析は手段であり、目的と課題の掘り下げが重要です。
今回のコラムでは、実際にご相談を受けた3つのCRM事例を紹介します。クライアントが認識していた課題を掘り下げたことでわかった本質的な課題と、実際にご提供した課題解決策を紹介します。CRMについての基本的な理解を深めたい方は、別記事「CRMとは?マーケティングとの違いの有無や、CRM領域での課題解決の流れ」もあわせてご一読ください。
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データ分析のための仕組み作りや環境整備が課題のCRM事例
最初の事例は、まちづくりプロデュースや商品開発、店舗運営・菓子製造などを手がけるGOOD NEWS様の事例です。こちらのクライアントでは、ヒアリングを重ねていくうちに、以下のようなことがわかってきました。
- 実店舗(オフライン)とECサイト(オンライン)を連携し相乗的な成果を上げる仕組みづくりの必要性
- GOOD NEWS様の企業理念や事業特性を踏まえてビジネスを拡大していくことを重点課題としている
そこで、ヒアリング内容からクライアントの目的・本質的な課題・解決策を以下のように整理しました。
(目的)
意思決定や施策進捗管理に活用できるデータ活用基盤の構築
(本質的な課題)
1. 実店舗やECでの業績データを一元管理・可視化する仕組みが不足している
2. 購買データに基づく各KPIの進捗把握や課題抽出を行う環境整備ができていない
3. 適切な課題設定や課題解決に向けた推進ができる人材が不足している
(解決策)
・GOOD NEWS様の企業理念や事業特性を踏まえたプロジェクトの推進
・想定利用者の利用目的に応じた業績管理用BIダッシュボードの構築
上記の本質的な課題を解決するために、BIツールによるダッシュボードの設計・開発、さらにBIダッシュボードで可視化されたデータをもとに、課題解決に必要な取り組みの整理を行いました。
BIダッシュボードについては、想定利用者の利用目的に応じた内容を検討し、場所や時間を問わず想定利用者が簡単に見られるよう構築をしました。現在では分析の精度も上がり、課題設定などもできたため、大変満足しているという言葉を頂いています。
事例の詳細は、下記リンクをご参照ください。
事業活動を通じて生み出す共感消費-伴走型マーケティング支援で課題の可視化や経営判断を可能に-
BIダッシュボードの改修よりもKPIマネジメントが課題のCRM事例
2つ目は、化粧品業界のクライアント事例です。「BIツールのダッシュボードを改善したい」とのご相談を頂きましたが、すでにBIツールを導入しており、自社でダッシュボードの開発も行っていました。
上記の背景も踏まえつつヒアリングを進めてみると、以下のようなことがわかってきました。
- コロナ禍の影響を受け、ブランド施策の方向性が変わり見るべきKPIが変化している
- KPIの変化を受け、各種施策のインプレッションやCTR、CV、ROIなどのKPI指標をモニタリングし、最適化に取り組んでいる
- 一方でKPIを確認する会議において、話題が拡散してしまい議論が収束しなくなっている
(たとえば、KPIが悪化すると「CRMが悪いのか?」「ブランディングが悪いのか?」と、議論が堂々巡りになっている)
ヒアリング内容から、クライアントの目的・本質的な課題・解決策を以下のように整理しました。
(目的)
マーケティング業務におけるKPI指標のモニタリングと最適化
(本質的な課題)
現行のダッシュボードだけでなく、KPIの運用を行う”体制”そのものにあること
1. 各KPIを、どの部署が責任をもつのかが曖昧になっていること
2. 責任の所在が曖昧なまま、全員参加型で対策会議を行っていること
ダッシュボードの再設計と構築は、各部署の責任範囲と会議体が定めて行う
(解決策)
「KPIの責任を持つ部署」と「会議体」を再整理して見直し、体制が整ったのちにダッシュボードを再設計・構築
このご提案を行った際には「もやもやの原因は、ここにあったのか」と、おっしゃっていただきました。実際にこのクライアントでは、部署ごとの責任範囲と会議体の再整理を実施しました。
現在は、各会議体に合わせたダッシュボードの構築に順次取り組んでいます。
アプリデータ分析ではなく顧客セグメントとKPI定義が課題のCRM事例
最後にご紹介するのは、コロナウイルスが猛威を振るっていた2021年、業績が伸び悩んでいた小売業界のクライアント事例です。「アプリのデータ分析で困っている」とのご相談を頂きました。
リモート会議でのヒアリングを重ねていく中で、以下のようなことがわかってきました。
- アプリのデータ分析で、施策の効果測定を行いたい
- 現在は既存顧客育成に注力しており、最適な施策設計を見つけたい
- これまで顧客育成に取り組みきれておらず、方向性が定まりきっていない
ここまで伺ったうえで、ヒアリング内容から、クライアントの目的や本質的な課題、解決策を以下のように整理しました。
(目的)
優良顧客向けマーケティング指標の定量化
(本質的な課題)
1. 優良顧客の言語化と、それを定量的に表現するセグメント基準が決まっていないこと
2. 顧客の優良化フェーズ(セグメント)ごとの、KPIツリーが構築されていないこと
3. KPIと施策の関係性を検証していく、PDCAサイクルが回せていないこと
(解決策)
データマーケティングを行うための地図として「顧客定義」と「KPIツリー」、2つの仕組みを構築
ご提案では、クライアントから「そうそう、これがやりたかったんだ」とのお言葉をいただきました。現在では施策とKPIの関係性の解明に向けて、テストとその検証に取り掛かっています。
事例の詳細は下記のリンクからご覧ください。
店舗アプリデータ分析に基づくKPIマネジメントの仕組み化(小売業界様)
データ分析の前に本質的な課題設定を
本記事で紹介したデータ分析や活用の相談の背景には、本質的な課題が隠れていました。
今回の事例に関わらず、データ分析や活用はあくまでも課題を解決するための手段です。課題設定ができていると認識していても、実際は掘り下げきれていない場合もあります。
そのためにも、データ分析をする前に本質的な課題設定ができているかを確認することが大切です。
特に新事業の立ち上げ時期や拡大時期、関係者や社員が増加したときは、課題の共有が行き渡っているか課題の認識にズレがないかを確認しましょう。
フュージョンではデータ分析や活用などのご支援だけでなく、CRMにおける課題設定のサポートから仕組みや体制作りまで、貴社のマーケティングパートナーとして併走します。
本質的な課題の設定ができているか不安、社内に相談できる適任者がいない、何から始めれば良いのか分からないといった方も、ぜひお気軽にお問い合わせください。