マーケティングオートメーション(MA)ツールを活用して1to1のメール配信を行う企業が年々増え続けています。
一方でMAツールを導入した後になって、「やりたかった配信ができていない」といった声も聞かれます。
そこでこのコラムでは、MAツールの運用段階でよくある3つの失敗事例を取り上げます。すでに運用を担当されている現場の方はもちろん、これからMAツールの導入に関わる方もぜひ参考にしてください。
MAツールのシナリオ設計と「トリガーベースマーケティング」
MAツールは、予め設計したシナリオに沿って、顧客1人1人のタイミングでコンテンツを自動配信できることが特徴です。
例えば、「F2引き上げシナリオ」の場合、
①初回購入の3日後にサンキューメールを送る
②サンキューメールを開封した人には、A商品の案内をメールで送る
③②で商品ページのリンクをクリックしたら、クーポンを送付する
といったように、1つのきっかけ(トリガー)に対して何らかの施策が発信されます。
トリガーには、個人のライフサイクルの中で主要なイベント(誕生日や結婚記念日、車検予定日など)や、WEBサイトの閲覧やアプリのダウンロード、商品購入などが使われます。
リードが触れているメディアやコンテンツに合わせてトリガーを設定し、リードごとに異なる顧客体験を提供するシナリオを設計することで、アクションへの引き上げ率が上がります。
このように、CRMのデータベースに蓄積された顧客属性データや行動データをトリガーとして施策を行う手法を「トリガーベースマーケティング」といいます。自社のマーケティング戦略と顧客特性を掛け合わせて、何をトリガーにどんな施策を組み立てるのがシナリオ設計のキモになります。
▼MAシナリオ設計の全体像
MAツールのメール配信でありがちな失敗事例
トリガーベースの配信を行うためには、そもそもCRMのデータベースにトリガーとなるデータを持っていることが前提になります。そのため、MAツール導入・段階でどんな配信を行いたいか、何をトリガーにしたいかを明確にした上で、どのように顧客データを持つかのデータベース構築設計をする必要があります。言い換えると、MAツールありきで導入を進めても、どのような配信を行うかが考慮されていなければ、やりたいことが実現できない状態に陥ってしまいます。
ここからは、データベースに関するよくある失敗事例を3つご紹介します。
【失敗事例①】配信対象者を絞り込むデータがない!
1つ目の例は、データベース構築とシナリオ設計を切り分けて行ったがために、シナリオ設計に入った時に欲しいデータが抽出できないことです。
例えば、誕生日を迎える方にバースデーシナリオでeメールを配信するとします。
その際、データベース内に「誕生日データ」を持っていなければ、当然誕生日の方を抽出することはできませんよね。
さらに、誕生日を迎える方に世代別に特典を付ける、というプロモーションを計画するとします。
誕生日を和暦で収集している場合、そのままでは年代が出せないため、西暦に変えてデータを持つ必要があります。
このように、データベースを構築する段階で、どのような配信をしたいかを視野に入れないと、欲しいデータが抽出できない、という危険性があります。
データベース構築→配信設計と段階的に行うのではなく、MAで実現させたいことを先に決め、構築と設計を行ったり来たりしながら進めることが肝要です。
【失敗事例②】SQLを書かないと対象者を抽出できない
MAツールには、ノーコードでデータ統合から配信が可能と謳う製品が多くありますが、現実には複数の要素を組み合わせて対象者を抽出したい場合、SQLを書かなければならないケースが少なくありません(例:RFM分析でR1×M3以上、かつ女性、を対象とする、等)。
しかし、配信を行うマーケティング担当者がSQLを書くことを想定しておらず、社内にスキルを持つ人がいない場合、抽出条件をよりシンプルな内容に変えるなど変更を余儀なくされてしまいます。
これを解決するには主に3つの方法があります。
①データベース構築段階で可能な限りデータを細かく持っておく
②データ集計・抽出は別のツールを用いて連携する(分析ツールの設計は別途必要)
③SQLを書ける人を採用する、外部の力を借りる
どんな条件で抽出したいかを予め決めておけば、システム部門に要望を伝えて開発要件に加えてもらう、外注する予算を確保する、などの対策が可能になります。
【失敗事例③】メールの差し込み機能が使えない!
MAツールを使って配信するのですから、パーソナライズをフル活用したいところです。
そこにも落とし穴があります。
例えば、おすすめ商品を動的コンテンツとしてeメール内に掲載する場合、差し込み機能を使ってデータベースに登録されている項目名を表示させます。
もしその項目名が内部名(登録用の商品番号や社内で使っている呼称など)で登録されていると、下記の左のようにメール本文にも内部名で表示されてしまいます。(右があるべき表記)
解決策としては、
・内部名ではなく正式な商品名で登録を行う
・表示用として、正式な商品名のカラムを商品マスタに追加する
といった工夫が必要です。
このような表示の違和感は、テスト配信をした際に初めて気が付くということが少なくありません。その段階で気が付いても、設定のやり直しはもちろん、データベース自体を見直す必要まで出る可能性があり、最悪の場合予定していたスケジュールに間に合わない、ということもあり得ます。
データベースの構築は単なるシステムのつなぎこみとして行うのではなく、データを配信でどう使うかまで考えて設計することが、手戻りを最小限に抑えることにつながります。
データをどう持つかで運用の失敗を最小限に
これらの例からわかる通り、MAツールを効果的に運用するためには、データベース構築段階から「どのようなシナリオでどんなコミュニケーションをとりたいか」を明確にしておくことが必要です。
何をトリガーにするかによってデータ収集の方法や項目が変わるのはもちろん、場合によっては外部データを連携するなども必要になることもありますので、十分に考慮の上で設計することをおすすめします。
MAは単なるメールの発射台ではありません。
運用段階で困らないよう、導入時点からどんなシナリオを実施するのかを検討し、そのために必要なデータベースの設計を行いましょう。
メールマーケティングにこれから取り組みたいとお考えの方は、下記の記事でメールマーケティングの種類や取り組むコツをご紹介しています。あわせてご覧ください。
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