不確実性の高いVUCAの時代においては、自社を取り巻く環境も、顧客を取り巻く環境も劇的に変化し続けています。
マーケティング活動においても、氾濫する情報の中で新規顧客を獲得するハードルはますます高くなっています。また、商品やサービスがコモディティ化する中で、既存顧客の維持や育成を続けるのも、やはりハードルが高くなっています。
そのような環境で、マーケティング活動における意思決定のための現状把握や、仮説の検証などに使えるのが、マーケティングリサーチです。
リサーチ(Research)は単なるサーチ(Search)とは異なっており、目的を達成するために行う体系立てられた調査活動です。この記事では、マーケティングリサーチを自社内で行う場合も、他社に依頼する場合も押さえておくべき基本と、マーケティングリサーチの活用事例をご紹介します。
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1. マーケティングリサーチの種類と調査手法
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マーケティングリサーチと一言で言っても、必要になるシーンはさまざまであり、リサーチに用いる手法や内容は目的によって異なります。ここでは最初に、マーケティングリサーチの大まかな種類と調査手法の例をご紹介します。
マーケティングリサーチは、大まかには定量調査と定性調査に分けることができます。
定量調査とは、調査対象の量や割合を測る調査で、結果が数値データとして把握できるのが特徴です。例えば、営業データ推移やスコアリング形式でのアンケート調査などが挙げられます。
一方、定性調査とは、数字では表せないような調査対象者の意見や行動、心理的な背景を探るときに行う調査です。例としては、フォーカスグループインタビュー調査(FGI)や一対一のデプスインタビュー調査などがあります。
一般的には、独自性のあるオリジナルな情報ほど調査に時間がかかるので、必要な調査期間や費用も高くなる傾向があります。Googleでの検索や、文献調査などを通じたデスクトップリサーチで得られる既存情報で済む場合は、調査工数や費用は少なくすることができますが、調査目的によっては限定的な結果しか得られないことがあります。
マーケティングリサーチの目的やかけられる費用・期間に応じて、定量調査と定性調査のどちらを用いるのか、あるいは併用するのかについて、調査を始める前に具体的に考える必要があります。また、自社で調査するのか外部に依頼するのか、あるいは既存の情報を収集すれば充分とするのか、についても考えておく必要があります。主な調査手法をリストアップしたので、参考にしてみてください。
※調査手法に専門性が要求されるほど、難易度が上がる傾向があります。
上記の他に、NPS(Net Promoter Score)調査もよく使われます。NPSとは企業や商品・サービスへの顧客愛着度を示す「顧客ロイヤルティ」を測る指標のことです。NPS調査では、スコアを基にした定量分析に加えて、フリーコメントによる評価理由の定性調査もあわせて行うことで、調査結果を踏まえた商品・サービスの改善につなげることができます。
マーケティングリサーチの際は、収集する情報の粒度にも気をつける必要があります。
収集する情報の粒度がマクロ的なものであるほど、客観的で大まかな基礎情報把握に適しており、ミクロ的になるほど個別事情にフォーカスすることができます。参考として、使用頻度の高い一部の調査手法をマッピングしてみました(下図参照)。
マクロ情報とミクロ情報のどちらの粒度もマーケティングリサーチにおいては重要ですが、目的に応じて優先度や使い方を考えてみてくださいね。
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2.マーケティングリサーチの流れ
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マーケティングリサーチを自社で行う場合も他社に依頼する場合も、基本的には下記の流れに従って調査を進めることになります。
マーケティングリサーチを始める前に、最も重要なステップは目的の整理です。
ここでは、マーケティング活動で必要となる情報ニーズや、取得する情報を用いてどのような意思決定をしたいと考えているのかを整理します。目的があいまいな状態でリサーチを始めると、思うような結果が得られず、調査対象の抜け漏れが発生します。リサーチを始める前には、目的を整理したうえで、関係者と認識合わせをするようにしましょう。
そして、整理した目的に沿って、マーケティングリサーチの具体的な方法や調査スコープ等に関するリサーチ企画・実施を行い、結果の分析から示唆を出したうえでマーケティングに関する意思決定を行います。
この流れの中でも、図で示した水色部分のステップ(マーケティングリサーチ企画~示唆の抽出)については、リサーチ実施可能な体制やノウハウを有している場合は自社内で行うこともできますが、一部のフェーズまたは全部について調査会社や広告代理店などの外部企業の力を借りて実施することもできます。目的の整理とマーケティングに関する意思決定は、自社が中心となって行うべきものですが、必要に応じて外部企業からアドバイスをもらいながら進めることもあります。
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3.マーケティングリサーチの活用事例
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マーケティングリサーチの種類や調査手法、進め方の流れについて解説してきましたが、いかがでしたか。
ここでは、フュージョン株式会社でご支援させて頂いたマーケティングリサーチ活用事例について、簡単にご紹介します。
【ご紹介事例の概要】
(クライアント企業の主事業)
宅配サービス全般を営む小売業
(課題感)
顧客ロイヤルティを向上させる施策の切り口が適切に把握できていない
(調査目的)
オンライン注文チャネルを利用するユーザーに関して、ロイヤルティ向上の為の示唆を得ること
(調査手法)
NPSスコア調査
当社では、CRM戦略策定に関わる戦略レイヤーからマーケティング施策実行に関わる戦術レイヤーまでを幅広くご支援させて頂いています(詳しくはこちら)。戦略・戦術いずれのレイヤーの場合においても、まずは現状を的確に把握することが戦略見直しや次のマーケティング施策改善につながるため、マーケティングリサーチもご支援することがあります。
今回の事例では、以下の内容について計5か月のプロジェクト形式にてご支援させて頂きました。
<当社のご支援内容>
・分析目的に合ったテーマ決定(目的整理)
・リサーチ規模や要件の定義(マーケティングリサーチ企画)
・調査票作成~実査手配
・回答データ集計~レポーティング
・報告会開催
・追加分析対応
・プロジェクト進行管理
(調査結果レポートのイメージ)
NPS調査の実施にあたっては、スコアの現状を把握するだけでなく、3か年分のエリアごとの推移や利用目的の特徴を整理し、コロナウイルス発生前後におけるユーザーの価値観や悩みの変化を整理しました。また、競合企業との比較からわかる特徴の整理やサービス改善に向けた考察もあわせて行いました。この調査は毎年行っており、経年での推移を確認しながら継続的なご支援をさせて頂いています。
NPS調査を通じて、クライアント企業からは、
・現状のサービスに対する顧客ロイヤルティを定量的に把握できるようになった
・ユーザーのリアルな声を把握することができた
との声を頂くことができました。
マーケティングリサーチはそれ自体がゴールではなく、マーケティングに関する意思決定を支える事実や示唆であることが必要です。フュージョン株式会社では、CRM戦略やプロモーション施策全般に関わるマーケティングリサーチについてもご支援しております。
ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
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