ダイレクトメール(以下、DM)は、特定のリストに対して広告物を送ることで、企業と消費者の間で一対一のコミュニケーションを実現するダイレクトマーケティング手法の一種です。ダイレクトマーケティングとは、企業が消費者と直接コミュニケーションを取り、商品やサービスを宣伝・販売する手法で、1960年代から半世紀以上用いられている伝統的な手法となっています。
この記事では、プロモーション施策としてDMをご検討されている方や、すでに実施中のDMのレスポンス率(=反応率)を上げたいと考えている方に向けて、ダイレクトマーケティングの第一人者であるアラン・ローゼンスパン氏(※)の『101 Ways to Improve Response(成果を生む101のマーケティングTIPS)』から、DMの改善に使えるお役立ちTIPSをご紹介します。
本文の最後には、1枚でわかる「【お役立ち資料】成果を生むマーケティング「101のコツ」」シートもご用意していますので、ぜひダウンロードしてみてください。
目次
1. マーケティングに欠かせない最重要な7つの要素
2. ダイレクトメールのレスポンス率を上げるコツ
①【封筒】のコツ
②【あいさつ状】のコツ
③【ブローシャー】のコツ
④【レスポンスデバイス】のコツ
3. レスポンス率を向上させ続けるためにやるべきこと
DMに限らず、ダイレクトマーケティングに欠かせない最重要な要素は下記の7つです。
以下、順番に解説します。
ダイレクトマーケティングで効果を出すためには、最も購入する可能性の高い見込み客にアプローチする必要があります。手当たり次第にアプローチしていては、売上につながらないばかりか営業担当の士気も下がってしまいます。適切なターゲット設定は、ダイレクトマーケティングの効果を大きく左右する要素です。
ダイレクトマーケティングの法則の1つに「直近の購入者に似た人が、次の購入者になる」というものがあります。ここで“似ている”というのは、属性や嗜好、行動が似ているということです。特に、DMや広告などコストのかかる施策を実行する際には、適切なターゲティングが重要です。
例えば、最近のWeb広告配信システムでは、自社の顧客データベースと外部にあるWeb利用者の属性リストを連携させて、自社製品の購入者に似た人にターゲットを絞って広告を表示するといったこともできるようになっています。なお、ターゲットを設定する際は、自社が保有する顧客データを分析しセグメントすることが大切です。
広告の父といわれるデイヴィッド・オグルヴィの言葉にこんなものがあります。
「ビッグアイデアのない広告は、暗闇を進む船のようなものだ」
ここで言う「ビッグアイデア」とは、人々の目を引き考えさせるもののこと、商品やサービスが顧客に何を与えられるのか端的に示したものです。商品のスペックや魅力が該当することもありますが、たいていの場合は、見込み客あるいは顧客に関することがビッグアイデアとなります。
ひとつ、海外企業のダイレクトメール(DM)での事例を見てみましょう。
≪事例≫
米国のマーケティング会社・BeNOWがこんなDMを実施しました。
ターゲットは企業のマーケティング責任者。
かれらに向けて「お話しさせてください」と書かれた箱を送りました。
箱の中には黄色い付箋が表紙に貼られた辞書が入っており、付箋には「この辞書でvisionary(先見性のある人)という単語を引いてください」と書かれていました。
そして、実際に“visionary”を引いてみると、そこにはこのDMを受け取った人の名前が定義として書いてあったのです。
この事例では
「あなたに先見の目があることをBeNOWは知っている」
「先見性があるあなたならBeNOWを選ぶ」
という2つがビッグアイデアとなっています。
DMやEメールを送るときに「このメッセージのビッグアイデアは何だ?」と考えましょう。
もし即答できない場合は、顧客に何を提供したいのか、もう一度メッセージを練り直してみましょう。
ダイレクトマーケティングにおけるオファーとは、単なる値引きや特別扱いのことではありません。クーポン券に個人情報を書いてもらう、Webサイトや店舗に訪れてもらう、電話をかけてもらうといった行動をターゲットに促すための「何か」のことです。
この事例も見てみましょう。
≪事例≫
ソフトウェア制作会社をターゲットとしたキャンペーンで、無料のミントタブレットをオファーに使った事例です。
ミントタブレットのパッケージにはディルバートという風刺漫画のキャラクターがプリントされていました。この漫画の特徴は管理的な職場への皮肉で、「あるある」と思えるユーモアが世界中で受けています。
このキャンペーンでは、ディルバートのミントタブレットが大人気で予想以上の反響を呼び、キャンペーンを中断しなければならないほどでした。ターゲットの嗜好・属性とオファーがぴったりとはまったケースといえるでしょう。
ダイレクトマーケティングでは、顧客にとっての価値を語ることが重要です。
想像してみてください。
フォーチュンクッキーのおみくじに「おいしいクッキーをご賞味ください」と書かれていたらどう思いますか?
「その情報がほしいんじゃない!」と思いませんか?
ダイレクトマーケティングにおけるメッセージも同様です。
商品について語るのではなく、ターゲットである顧客について語りましょう。商品の素晴らしさを語るのではなく、その商品を選ぶと顧客はどうなれるのか、選ぶことでどんな良いことがあるのかを語りましょう。企業都合の押し売りではなく、顧客自身にとって意味のある体験を提供することが重要です。
たとえ世界的に名前を知られた大企業であっても、きちんとした証明なしに主張を受け入れてもらうことはできません。信頼を獲得し、顧客とよい関係を構築するには、主張を支える事実や客観的なデータを添えることが重要です。
有効な"証明"としては、具体的な事実、導入事例などが挙げられます。利用者によるおすすめコメントやクライアントのリストを掲げるのもおすすめです。
テストは施策の結果を記録するためだけのものではなく、未来を予測するにも大いに役立ちます。
何がうまくいき、何がうまくいかなかったのか、マーケティング予算をどこに配分するのがいちばんいいのか、それらを判断し未来の顧客を作っていくのにテストが必要です。
DM一つ、Eメール1通を取ってみても、それはあなたの会社のサンプルを送っていることに他なりません。
「ただのDMだから」と制作会社や代理店に丸投げせずに、顧客の手元で見られる「あなたの会社」を作っているのだということをきちんと社内で認識共有するのが重要です。
次に、ダイレクトメールのレスポンス率を上げるコツを、DMの標準パーツ4つに分けてご紹介します。
DMを構成する主なパーツ
①封筒
②あいさつ状
③ブローシャー
④レスポンスデバイス
封筒は、DMを受け取ったときに最初に目にするものです。中身をどんなに工夫しても開封してもらえなければ情報は伝わらないため、受け手の興味を引き、開封してもらうことが必要です。
以下に挙げたすべての項目を一度に実施する必要はなく、DMを送付する相手の特性に合わせたTIPSを活用しましょう。
封筒編TIPS
1.封筒の外側に強烈なメッセージを書くこと
2.封筒の裏面も活用すること
3.質問で刺激すること
4.オファーを目立たせること
5.名前で呼びかけること
6.何回も呼びかけること
7.迅速な配達手段を試すこと
8.重要書類に見える封筒を使うこと
9.箱型DMを使うこと
10.中にペンを入れること
11.中にパズルを入れること
12.封筒を目立たせること
13.封筒に色を入れること
14.送付先に合わせて封筒を変えること
15.変わった封筒を使うこと
16.封筒を大きくしてみること
これらのTIPSを取り入れることで、ゴミ箱直行DMにならずに開封してもらえる可能性を高めることができます。詳細は別コラムで解説していますので、下記も合わせてご一読ください。
あいさつ状はレターとも言いますが、なぜあなたにこのDMを送るのかを記載した手紙のようなものです。単に自己紹介やあいさつだけを書けば良いわけではなく、レスポンスを上げるための書き方のコツがあります。送る相手の状況やターゲットの性質に合わせて、以下のTIPSを取り入れてみてください。
あいさつ状編TIPS
1.そもそもDMには必ずあいさつ状をつけること
2.あいさつ状は本当の手紙のように見せること
3.あいさつ状は本当の手紙のように書くこと
4.ストーリーを通して語ること
5.商品の説明ではなく、商品を使うとどうなるかを書くこと
6.一人称で書くこと
7.短い文章で書き始めること
8.リストに合わせてあいさつ状を変えること
9.見出し(ジョンソンボックス)を使うこと
10.受け手が重要な顧客であるかのように書くこと
11.誠実にふるまうこと
12.「追伸」を活用すること
13.好奇心をそそる質問で書き始めること
14.長いレターを書くこと
15.読んだ人に何かをさせること
16.引用をうまく使うこと
17.読みやすい文字を使うこと
18.社長を差出人にしてみること
19.オファーを早く提示すること
20.注文のお願いは何度もすること
21.付箋に書いたメモを活用すること
22.レターにもレスポンスの方法を明記すること
23.もっとも重要なベネフィットに下線を引くこと
24.今すぐレスポンスしなければどうなるのかを伝えること
25.季節の挨拶を加えること
26.感情に訴えること
27.すでに多くの人がレスポンスしたと伝えること
28.ただ一人に向かって語りかけること
29.可能な限り何度も受け取り手を登場させること
30.あいさつ状の裏面も活用すること
各TIPSの詳細は、下記の関連コラムで解説していますので、詳細が気になる方は下記コラムをお読みください。
ブローシャー編TIPS
1.最も重要なベネフィットをパンフレットの表紙に載せること
2.数字を含む見出しを使うこと
3.写真の下にキャプションを付けること
4.人物写真を使うこと
5.ターゲット層の写真を使うこと
6.印象的なビジュアルを使うこと
7.Q&Aを載せること
8.グラフを載せること
9.Q&Aの最後の質問をコール・トゥ・アクションにつなげること
10.ブローシャーの中身が一目でわかるようにすること
11.「お客様の声」を載せること
12.「お客様の声」にはお客様の本音を使うこと
13.変わったフォーマットを試すこと
14.少しずつ情報を開示すること
15.絵本や児童書からアイデアを得ること
16.明るい背景に濃い色の文字を使うこと
17.フリーダイヤルの番号を載せること
18.リストを使うこと
19.診断コンテンツを使うこと
ブローシャーは、ダイレクトメールパッケージの中でも、特に説明と説得を担うパーツです。
送り手の目線でアピールポイントを書き連ねたのでは、受け取り手の心には響きません。受け取り手にとって有益な情報を盛り込むだけでなく、書かれた内容が分かりやすく飽きずに読んでもらう工夫をすることが、反応率アップに必要な条件です。詳細は下記のコラムをご覧ください。
レスポンスデバイス編TIPS
1.オファーの写真を載せること
2.レスポンスデバイスにも「売り文句」を載せること
3.お金では買えないものをオファーすること
4.返信用ハガキをパーソナライズすること
5.返信用ハガキに切り取れる部分をつけておくこと
6.簡単なアンケートを入れること
7.レスポンスに対するお礼を記載すること
8.「はい/いいえ」のチェックボックスを入れること
9.「たぶん」「ときどき」のチェックボックスも入れること
10.Eメールやウェブサイトでのレスポンスも受け付けること
11.ただし電話も忘れないこと
12.キャッシュバックや特別な保証の情報を載せること
13.オファーをパーソナライズすること
14.返信用ハガキにフリーダイヤルの番号を書くこと
15.料金受取人払の返信用封筒を使うこと
16.ホワイトペーパーをオファーにすること
17.無料の「キット」をオファーにすること
18.レスポンスデバイスに「無料」の文字を載せること
19.オファーの価値を金額に換算すること
20.オファーの選択肢を与えること
21.オファーの期限を明記すること
22.ただし、すべての人にオファーを提供すること
23.すぐ行動してくれた人にはより良いオファーを提供すること
レスポンスデバイスのTIPSは、オファーの内容と絡めたものが多くなります。レスポンスデバイスにオファーを掲載すると、端的にメリットが伝わるため行動喚起にもつながりやすくなります。詳細については、下記のコラムをご覧ください。
ダイレクトメールは、継続することで効果を高めていくことができるチャネルです。長期的な視点でレスポンスをを上げるためにやるべきことをご紹介します。
ダイレクトメールにおけるフォローアップとは、一度ダイレクトメールを送った同じ相手に、少し時間をおいてもう一度コンタクトすることです。
フォローアップは一度目のコンタクトを補足・強化する役割を持ちます。たとえば、割引キャンペーンを案内したのち、割引期間終了間近に「もうお申込はお済みですか?」のような2回目の案内を実施するのです。
複数回ダイレクトメールを送るのはコストもかかりますが、フォローアップを実施することでレスポンス率の向上が見込めます。また、紙のダイレクトメールだけでなく、電話やEメールも利用できます。
シールやスタンプを入れると、たいていのダイレクトメールでレスポンス率が向上します。
単に目を通してもらうだけではなく、受け取った人が手を動かすような仕組みを考えることがポイントです。いまより3秒長く、ダイレクトメールを捨てずにおいてもらえる工夫をしてみましょう。3秒で構いません。それだけで、レスポンスに大きな効果があります。
「新しい」という言葉には「無料」という言葉と同じくらい力があります。
もし新製品や新サービス、新しいお知らせがあるのなら、部分的にではなくダイレクトメールパッケージ全体を通して目立つように使ってみてください。
企業が顧客のことを知っているのなら、顧客もまた企業を知っています。見込み客に宛てるのと同じダイレクトメールを使っていては「おざなりな対応しかしてくれない」という印象を与えてしまします。
せっかく属性情報や購買情報のある相手にアプローチするのですから、一方的に購入をお願いするのではなく、相手の状況や嗜好に合わせて価値を提供できるようなダイレクトメールを送りましょう。
常に新しいダイレクトメールパッケージを企画し続けるのは大変です。過去に反応の良かったダイレクトメールがないか探してみましょう。アップデートして、もう一度使ってみるのです。
コピーもオファーも同じダイレクトメールで、たとえば封筒のサイズだけを変えてテストしてみましょう。部分的な変更で反応率が大きく変わることはよくあります。
一部だけ変えてテストを行えば、どの要素がレスポンスに影響したのか判断しやすくなりますし、コストも抑えられます。
特に同じ宛先リストを何度も使う場合にはこういったテストがとても重要です。
リフトノートとは、レスポンスを引き上げる(=リフトする)ことを目的として付け足されるパーツのことです。
具体的には、メインのレターよりも小さなサイズ・異なるテイストで、簡潔にオファーに言及したものとなります。
社長の署名入りのグリーティングカードや既存顧客からの推薦状、「付箋に書いたメモ」などもリフトノートの一種といえるでしょう。
とてもシンプルな手法ですが、これほど端的に「ご連絡ください」というメッセージを伝えられる要素はありません。
連絡先や申込窓口としてフリーダイヤルの番号があるなら、それが十分目に付くようになっているか見直してみましょう。
たとえばカタログの全ページにフリーダイヤルの番号を載せておけば、気になる商品があったときにすぐ電話してもらえます。
BtoBの場合に特に有効です。
セールス色の強い封筒ではなく、IR資料や公的な書類に使われるような事務的な封筒を使うといった手法が代表的です。
最初に手に取った人が、開封せずにはいられないような工夫をしましょう。
ダイレクトメールにおいて最も重要なものはリストですが、それに続いて大事なのがオファーです。
どんなオファーが相手に響くのか、労力を惜しまずにテストしましょう。
1回のダイレクトメールで2回申し込んでもらえれば、レスポンス数は2倍になります。どうしたら複数回レスポンスしてもらえるか考えてみてください。
≪事例≫
ローゼンスパン氏が実施した施策では、返信用ハガキを2枚封入し、このようなコピーを掲載しました。「1枚はご自身でご利用ください。もう1枚は同僚の方にどうぞ」
この施策の結果、ハガキ1枚分のわずかなコスト増に対し、レスポンス率が40%も向上しました。
これらのコツを踏まえて戦略的にDMを企画立案すると、効果を出し続けることにつながります。
一方で、DM施策を継続したくても発送費のコスト負担が大きくプロモーション予算の確保に苦心しているご担当者も多いのではないでしょうか?
DMの費用の中で大きな割合を占める発送物や目的に応じて適切な発送方法を選ぶことで費用対効果の向上に繋げることができます。DMの企画立案全般や費用対効果に関する詳細は、下記のコラムをご覧ください。
レスポンス率を上げるためにはさまざまなTIPSがあることがおわかり頂けたでしょうか。各TIPSは複数交えて使うことでその効果を高めることができますので、ぜひご参考にしてください。
なお、本記事でご紹介した各TIPSを一枚にしたチェックリストを下記よりダウンロード頂けます。現状のDMを振り返る際にご活用ください。
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