現在のマーケティング活動において、顧客視点が重要であることは言うまでもありません。
今日においては、個人がさまざまなデジタルデバイスを所有し、大量の情報の中から自分が必要とするものを主体的に選んでいます。複雑化している顧客の行動をとらえコミュニケーション活動を展開することは、BtoCビジネスにおいてはもちろんのこと、BtoBビジネスにおいても同じく必要です。
今回のコラムでは、BtoBビジネスを顧客視点で考える際に必要なペルソナ設定のポイントをご紹介します。
ペルソナとはラテン語で「人格」という意味で、特定の顧客像を指します。年齢や性別だけでなく、趣味嗜好・家族構成・週末の過ごし方・仕事内容・悩みなどを緻密に設定し顧客像を具体化させるものです。
ペルソナは、WebサイトやDM・商品開発・販促物・料理メニューなどを作る際にニーズに沿った商品開発や提供のヒントになるため、さまざまな場面で活用されています。またペルソナがあれば、会社全体でのイメージのズレを軽減できるメリットもあります。
ペルソナ自体は、実際の人物ではなく空想の人物を詳細にイメージするものですが、企業で思い描くペルソナを作るのではなく、アンケートや顧客先から得た情報・SNSなど実際の声を元に作り上げていくことが大切です。また、情報を分析し統計などを用いて作り上げると、よりマーケティングに有効なペルソナとなるでしょう。
ペルソナと似た言葉で「ターゲット」も、マーケティングではよく利用されます。ペルソナとターゲットでは以下のような違いがあります。
ペルソナ | ターゲット | |
性別・年齢 | 男性・36歳 | 男性・30代 |
職業 | 大企業ハウスメーカー・営業課長 | 大企業の会社員 |
居住地 | 東京都品川区 | 首都圏 |
家族構成 | 妻32歳・娘5歳・息子1歳 | ━ |
趣味 | キャンプ・釣り・家族旅行 | ━ |
週末の過ごし方 | 家族と公園やキャンプ・旅行など | ━ |
悩み | 仕事が忙しく、顧客対応の状況によっては土日がつぶれ予定が組みづらい | ━ |
上表のとおり、ペルソナとターゲットでは、イメージする人物像の粒度が異なります。そのため、ペルソナはターゲットより具体的な人物像を思い描く点が特徴で、「ある特定の人物」に対してのマーケティング施策を考えることができます。
一方、ターゲットはペルソナに比べ、ある程度粒度が荒く、不特定多数が対象として括られます。そのため、自社の商品やサービスを購入してもらいたい年代や年収・性別の層を大まかに定義する際に活用できます。
同じ企画を担当している社員同士でも、ターゲットのイメージ像が個々に違うと商品開発や企画が不安定なまま進んでしまう可能性もあるでしょう。もちろんターゲットは重要ですが、ペルソナ設定をすると、より的を絞ったマーケティングが可能になるのです。
BtoBはBtoCに比べ、購入に至るまで1ヶ月や1年など検討期間が長期に及びます。なぜなら、BtoCは購入するときの気分や心理が購入動機になり得ますが、BtoBは心理だけではなく、企業の利益になるかを合理的かつ論理的に検討するからです。
そのため、BtoBでは決裁者が単独であることは考えにくく、担当者・担当者上司・上長と稟議され、必要な場合は役員会議などで決裁されるケースが一般的でしょう。
結果としてBtoBの場合、商品を購入するまでの関与者が複数人になるケースが多い点が特徴です。
そのためBtoBのペルソナ設定は、担当者だけでなく上長など決定権をもつ複数人をペルソナに取り入れることが重要です。関与者それぞれのペルソナを設定すれば、個別に適切なアプローチをかけられるからです。また企業によっては、何事にも挑戦する企業もあれば慎重に物事を進め伝統を守る企業もあるため、企業自体のペルソナを決めていくことで、よりマーケティングの効果を発揮します。
前述の通り、BtoBビジネスにて顧客視点でのマーケティングを考える場合は、購買決定プロセスの各段階においてさまざまな役割を持った担当者が関与者として登場します。そのため、その時々に感じている心理状態でプロセスに関与していることを踏まえなければなりません。
関与者ごとのペルソナ設定の具体例を見ていきましょう。
上の表で記載したように、置かれている立場によって各担当者の心理状態はさまざまです。ただ、購買プロセスに関与する際は、どの担当者であっても「自分が満足したい」という想いも持ち合わせているケースが多いです。
BtoBビジネスにて顧客視点を理解する最初のステップでは、購買決定プロセスにかかわる多層かつ多数の関与者一人ひとりにおける役割とその心理状態を理解します。そのうえで、関与者の視点に立って行動を考えることが重要です。
そのため、BtoBペルソナを作成するときには、現場担当者のペルソナだけを作成するだけでは十分ではありません。購買決定プロセスに関与する、もしくは関与の可能性がある人物のペルソナも作成する必要があります。
例えば、ある商材を売り込む現場担当者のカスタマージャーニーを考える場合、現場担当者のペルソナだけではなく、その商材の購買決定権を持つ意思決定者のペルソナも併せて設定します。意思決定者のペルソナが購買決定プロセスにどのような影響を及ぼすのかを考えながらカスタマージャーニーを作成すると、精度を上げられます。
BtoBのペルソナを設定する上で、BtoCペルソナにはない重要な要素があります。
それは「企業のペルソナ」です。
企業のペルソナとは、それぞれの企業の持つ固有の企業風土、企業カルチャーや組織構造など、その企業が持つ独自の文化、言ってみれば代々脈々と受け継がれるその企業のDNAと言ってもよいでしょう。
また企業のペルソナには、ペルソナである企業だけではなく、業界や業種・職種に由来する特有の文化も含まれます。
言い換えれば、企業や組織、企業や組織の属する業種がどのような性格であるかを考えてみると理解しやすくなると思います。
例えば、伝統的な大企業であれば保守的な文化であることが多いでしょう。保守的な文化の場合、現場担当者が革新的なソリューションを積極的に採用してみたいと思っても、意思決定者は提案に対して消極的で、採用に関してなかなか理解してくれない可能性が高くなります。
一方、革新的な新興企業やオーナー企業であれば、経営層のペルソナが現場担当者により強く影響を及ぼす場合もあるでしょう。
このようにBtoBのペルソナ設定においては、個人の行動や考え方に対して、企業や業種・職種から受けるさまざまな影響が色濃く反映されます。
BtoBマーケティングを顧客視点で考える上で、BtoBペルソナ設定時のポイントをご紹介しました。
担当者が購買決定プロセスを進めていくにあたり、さまざまな段階で直接的に影響を与える関与者の存在があります。そもそも担当者や関与者の考え方の根底に根付いている企業や業種から受ける共通の影響など、より深く、より広く検討することでカスタマージャーニーを精緻にできます。
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