「レスポンスデバイス」とは、マーケティングや広告の分野で、顧客や見込み客がある広告やキャンペーンに対して反応した際に、その反応を記録・集計するためのデバイスやツールを指します。
例えば、DMのキャンペーンで、QRコードをスキャンして特定のウェブサイトにアクセスすることを促す場合、そのQRコードをスキャンした回数やアクセスしたユーザーの数などのデータを収集するためのツールやシステムが「レスポンスデバイス」として機能します。
このようなデバイスやツールを使用することで、キャンペーンの効果を正確に測定し、やりっぱなしのマーケティング施策を防ぎ、将来の施策改善に活かすことができます。
このコラムでは、レスポンスデバイスを工夫することでレスポンス率を高めるコツについて、具体的なTIPSを見ていきましょう。
視覚的に「何が得られるのか」をイメージできることはとても重要です。
たとえオファーが無料のレポートなどであっても、必ず画像を載せましょう。
≪事例≫
ダイエット飲料のUltraSlimでは、写真自体をオファーとしたDMを実施しました。DMにはダイエットのBefore/Afterの写真が掲載されており、こんなコピーが添えられていたのです。
「あなたの写真を送ってください。
ご希望の体重になったあなたの写真を作成して返信します!」
ダイエットに期待されるものを強烈に視覚化するこの施策は大きな成果を上げました。
レスポンスデバイスは、ターゲットが行動に移る直前に目にするツールです。
行動を後押しするために、端的なコピーを記載しましょう。
DMが開封されたときに、仮に中身がこぼれ落ちてしまい、手の中にレスポンスデバイスだけが残っている状況を想像してみましょう。その状況下で、
・どうやってレスポンスすればいいのか、分かりますか?
・それだけを見て、レスポンスしたいと思いますか?
両方「Yes」と言えるなら、素晴らしいレスポンスデバイスだといえます。
1で挙げたように、レスポンスデバイスにもオファーを掲載したとしても、レスポンスしなくともすぐに手に入るようなオファーでは効果がありません。
DMのメッセージと調和しており他社が真似できないようなオファー、お金では買えないような独自性のあるオファーであってこそ、レスポンスデバイスに掲載したときにも大きな効果を生みます。
≪事例≫
グラノーラやオートミールで有名なクエーカーオーツカンパニーは懸賞を実施した際、その賞品として人気テレビ番組の出演者と朝食をともにできる権利を提供しました。
同社の商品は朝食の定番となっています。
朝食を楽しく思い出に残るものにするこのオファーは、商品ともよく合っている上、懸賞に参加しなければ手に入らないものでした。
予算の都合等で、パーソナライズできる箇所が限られているときには、返信用ハガキのパーソナライズを選びましょう。
申込者の情報を記載する箇所に、あらかじめ氏名等を印刷しておくのです。
レスポンスの手間を取り除きハードルを下げるほど、レスポンス率は上がります。
切り取った部分は返信したあとも手元に残ります。
ここにオファーの写真や説明を記載しておけばオファーが届くまでの期待を維持することができます。また、商品の概要を書いておけば申込みの控えとして利用してもらえます。
コミュニケーションの手段として活用することを考えてみてください。
人は、自分の意見を聞いてもらいたいと思っているものです。
この心理を利用して、簡単なアンケートを入れておくと、レスポンス率がぐっと上がるケースがあります。ただし答えに悩む質問や、多すぎる質問は回答が面倒になってかえってレスポンスから遠ざけてしまいます。設問数は多くても7~9個ぐらいにとどめましょう。
また、申込情報等の記入欄はアンケートのすぐ下に置きます。こうすると、アンケートに回答した流れを断ち切ることなく、申込欄に誘導できます。
普通は、レスポンスしてもらった後にお礼を伝えます。
しかしあらかじめお礼を述べておくのは、心理的に有効なテクニックです。
飲食店のトイレなどで「きれいに使っていただきありがとうございます」という掲示を見たことはありませんか?
人の心理として、前提となる枠組みや期待を示されると無意識にそれに従ってしまうというものがあります。この心理を利用するのです。
これは、寄付を募る場合などには特に有効です。
「はい」や「いいえ」で答えられる質問を載せ、それに回答するためのチェックボックスを付けておくと、注目度が上がりレスポンス率も向上します。
たとえば、サプリメントの通信販売であれば「○○というお悩みはありますか?」という質問を返信用ツールに記載しチェックを入れて回答できるようにしておきます。
自分の悩みについて手軽に伝えられる機会は人の気を引きますし、「はい」にチェックを入れて返信してきた人にアウトバウンドコールを実施するなどすれば成約率向上にもつながります。
TIPSの8を実施するとき、できれば「はい」と「いいえ」の中間の曖昧な回答も用意しておきましょう。どちらとも言い切れないと思って回答をやめてしまう人を減らすためです。
曖昧な選択肢を追加しても「はい」という回答との食い合いは起こりません。
できるだけ多くの人に回答してもらえるように工夫しましょう。また、レスポンス受領後にアウトバウンドコールを実施するなら、曖昧な回答を選択した人も対象に含めます。
電話が苦手だという人はつねに一定数存在します。
たとえフリーダイヤルを用意しても連絡手段が電話だけだと、そういった人のレスポンスを逃してしまいます。Eメール、サイト上のお申込・お問い合わせフォームなどできるだけ多くのレスポンス手段を用意しましょう。
とはいえ、電話は強力な手段です。
リアルタイムに双方向のやり取りができるという点でほかの手段に勝ります。一方的にレスポンスを受けるのではなく相手に合わせた応答によってクロスセルやアップセルも促せるので、成約率や購入単価の向上も期待できます。
電話は他の手段に比べコストがかかることも多いですが、ぜひうまく利用してください。
レスポンスデバイス以外にもこれらの情報を掲載することはできますが返信用ハガキのようなレスポンスデバイスにこそ、この情報は必要です。
レスポンスデバイスは、行動の直前に手に取るツールです。強力な情報を記載して、行動を後押ししましょう。
自分の名前が入ったものは特別感があります。また、確実に自分に向けて発せられたメッセージだと感じられます。オファーをパーソナライズすることで、より関心を引き付け、レスポンス率を向上させることができます。
≪事例≫
マーケティング系のメディア企業であるAdvertising Age社は、こんなDMを実施しました。
外封筒には1コマ漫画が描いてあり、こんなセリフが添えられています。
「先見の目があり... クリエイティビティにあふれ...
マーケティングセンスがある... そんな方を私達は求めています。
私たちに必要なのは、アラン・ローゼンスパンです!」
名前の箇所は可変で、受取人自身の名前が入る仕様です。
オファーの内容は、購読を申し込むと、このパーソナライズされた漫画の原寸大複製を進呈するというものでした。
郵送用のデバイスになぜ電話番号を書くのか、考えたことはあるでしょうか。
お客様は移り気です。
どんなレスポンス手段を使いたいか、状況によって気分が変わります。ハガキをちょっと書き損じただけで気持ちが冷めてしまうかもしれません。そんな時、お客様が使える手段を漏らさず伝えてあげましょう。
繰り返しになりますが、レスポンスデバイスには、応答のハードルを下げること、行動を後押しすることが求められます。
料金受取人払は、差出人が郵送料金を負担することなくすぐに投函できるため、レスポンス率の向上が見込めます。
利用にあたっては事前に郵便局の承認を得て、規定に沿った封筒やはがきを用意する必要があります。詳細は日本郵便の料金受取人払をご参照ください。
ホワイトペーパーとは、商品・サービスに関連する業界情報、調査報告や事例など見込み客にとって価値のある情報を記載したレポートのことです。
こういった情報を提供することで、その分野に関する専門家として信用され、よいレスポンスを得ることができます。
情報をオファーにする際、レスポンスしてくれたら「もっと詳しくお教えします」というのは悪手です。
提供する情報は分断せずに、ひとまとめにしてしまいましょう。
その際、パンフレットのような1種類のツールにまとめるのではなく、いくつかのツールを組み合わせた「キット」にするのがおすすめです。複数のリーフレットをフォルダーにまとめるなどすれば、簡単に内容を差し替えたり、一部の情報だけを更新したりできます。
また、このキットにはベネフィットが伝わる名前を付けるのもよいでしょう。
投資顧問を行うPutnam Funds社の施策で制作されたキットには「節税キット」という名前が付いていました。
特典を得るのにお金がかからないなら、大きく「無料」と記載しましょう。
無料であることは、相手の行動を促すための、最も強力な特徴です。
特典を得ることでどのくらい節約できるのか、あるいは、その特典に近いものを入手しようとしたらどのくらいのお金がかかるのかを記載するのも、行動を後押しするためのよい手段です。
たとえば、
「通常500ドルの投資レポートを、あなたにだけ無料でご提供します!」
といった感じです。
「選べる」というのも、関心を引くよい手段です。
たとえばお申込特典としてマグカップを進呈するといった場合なら、色を選べるようにしてみましょう。
ただし、選択肢が多すぎると迷うのに疲れてしまいレスポンス率が下がるので気を付けてください。
オファーの役割は、即座に行動してもらうことにあります。いつまでに行動しないとそのオファーを手に入れられないのか明記しましょう。締切までには行動するのに十分な期間を設定しなければなりませんが、目安として30日を超えないようにします。
≪事例≫
子供のための慈善事業を行うChildReachのDMパッケージでは、黄色い付箋を返信用紙に貼っています。付箋には返信の締切日と、月末までに住む家を必要とする子供の数が記載されています。
期限を区切ることは重要です。
しかし、オファーの提供相手を限定するのはあまりよい手段ではありません。
たとえば「先着100名様限定! この商品が無料になります」といったやり方をすると、たしかに急いで反応してくれる人は多くなりますが、それ以外の人は関心を失ってしまい、全体的なレスポンス率は下がります。この場合なら、期限までに応募してくれた人全員に無料特典を提供する方がよいでしょう。
行動を先延ばしせず、すぐにレスポンスしてもらうには、すぐに行動した方がよりお得になるようにすればよいのです。そうすれば、レスポンス率を維持したまま迅速なレスポンスを促進できます。
≪事例≫
掃除機の訪問販売を行うKirby社は、500ドルの割引を提供しています。
ただし、この割引が適用されるのは、訪問デモンストレーションを見たその日のうちに購入した場合のみです。
レスポンスデバイスは、DMを見た人を行動させるためのツールです。
行動にあたっての不安や面倒を軽減すること、行動しなければと思わせることが重要です。
特に、レスポンスデバイスにオファーを掲載すると、行動へのモチベーションを高めることができます。レスポンスデバイスに端的に掲載でき、一目でメリットが伝わるオファーを用意できれば、一層のレスポンス率向上が期待できるのです。
オファーにおいては、見栄えや伝わりやすさも重要な要素です。レスポンスデバイスに載せた時にどう見えるか、どう載せられるかといった視点は、オファーを検討する際にも役立ちます。
下記の記事では、オファーを含めDMのレスポンス率を高めるコツについて網羅的に解説しています。ご興味のある方は合わせてご覧ください。
なお、本記事でご紹介した各TIPSを一枚にしたチェックリストは、下記よりダウンロード頂けます。現状のDMを振り返る際にご活用ください。
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